ひとりごと
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トモが咲いた 2006年06月01日(木)

2年前の紫陽花の頃、遠くの友だちが仕事で東京に来た。
忙しい合間を縫って私たちは会って、バラ園に出かけた。
盛りは過ぎていたけれど、バラ園にはまだ彩りがいっぱいだった。

その一番奥に、赤い小さい花を滝のように枝垂れさせた薔薇があった。
赤い星をちりばめた天の川みたい!
彼女はひと目でそれを好きになった。

「この薔薇をほしいのですが」と園主の老婦人に言った。
「ごめんなさい。お売りできないのよ。」と園主は言った。
「これは名前がわからなくってね、苗も作っていないのよ。」と
申し訳なさそうに、おっしゃるのだった。

残念。
せめてもの思い出に、と友だちはその薔薇の写真を撮り、
花を見上げ、別れを惜しんでいた。

そんな私たちを見ていた園主は「そうだわ。ちょっとこの枝切ろうと思っていたの。」と
鋏を持って近づき、花のついた枝をばさばさと何本か切った。
「はい、お持ちなさい。」と、豪勢な花枝を差し出してくださった。
そして「もしかしたらつくかもね。」と、小さく言い添え、いたずらっぽそうに微笑んだ。

「え…?いいのですか?」戸惑いながらも、嬉しそうな友だち。
「いいのよ。切るところだったんだし、売り物にもならないのだしね。」と言いながら
くるくると紙に包み、2つの花束を作ってくださったのだった。
そして「名前は好きにつけちゃっていいわよ。あなたたちの名前をつけなさいな。」と
笑いながらおっしゃった。

その後私たちはささやかなお礼の気持ちをこめて、発送する薔薇苗の梱包を手伝った。
「あぁ、どうもありがとう。助かったわ〜。」と園主は笑顔で腰を伸ばした。
実際には、私たちよりずっと小柄な園主の方が、ずっと力もあって
梱包の手際もよかったのだけれど。

ほんのちょっとの労働と引き換えに、私たちはそれぞれ2本の花枝を持ち帰った。
薔薇にはお互いの名前をつけることにして。
そして園主の思いのとおりに、花のあと、枝を土に挿した。
その枝は2本ともつき、ゆっくりと根を伸ばし育っていった。

そんな薔薇が2年経って、ようやく咲いた。
ローズピンクを帯びた明るい赤の小さいカップ咲きの薔薇。
黄色い蕊がぱっちりと愛らしい。
そうだ、あのときの薔薇だ。
あの陽射しを思い出す。
園主の笑顔を思い出す。

いつかはバラ園で見たように、流れるように咲くのだろうか。
彼女の手元では、私の名がついた薔薇が咲いているのだろうか。


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