ひとりごと
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父と母が、四十何年目かの結婚記念日のお祝いに ハワイに行くことになった。 ふたりで旅行に行くのは珍しい。 とても嬉しそうで、楽しみにしていてほほえましかった。 私たち姉妹も喜んだ。 そして母は、携帯電話を新しく買い換えた。 ハワイから写真を送ってくれるつもりらしい。
新しもの好きの父と母は私よりもずっと早く、 もう6、7年ほど前から携帯電話を持っていた。 だけどメールは使っていなかった。 「覚えるのが面倒」だったらしい。 その母が、とうとうメールを使うことを決心した!
旅行の前夜、妹に特訓されたらしい。 まだゆっくりと、ぽちぽちとしか文を作れないけれど、メールを送れるようになったと言う。 旅立ちに間に合ってよかった。
夕方、ふたりが空港に着くころを見計らって「いってらっしゃい」のメールを送った。 母にメールを打つのは初めてで、つい堅苦しい敬語を使ってしまった。 さぁ、返事は来るだろうか? 5分…10分…。
夕食の支度を始め、忘れかけていた20分後、携帯電話ではなく家の電話が鳴った。 空港の父からだった。 「メール届いた?」と嬉しそうに言う。 急いで携帯電話を見たけれど、残念ながら新しい受信メールはなかった。 伝えると、「そうか。」と寂しそうに言って、すぐに切ってしまった。
そしてまた忘れかけていたころ、今度は紛れもなく携帯電話から着信の音楽が流れた。 「メールを受信しました」そして母の名前。 やった! 初メール成功〜。
「苦労してメールを書いたのに届かなくて残念です。 もしこれが届いたらメールを下さい。○○、×子」
文面と、父母の連名に笑ってしまった。 小さい携帯電話を覗き込みながら、ふたりで文を考えて一生懸命打ってくれたのだろうな。 すぐに返信をした。
「届きました!初メール、嬉しいです。 またハワイでの楽しいレポートを待っています。」
このメールへの返事は返ってこなかった。 打っているうちに、搭乗時間になってしまったらしい。
今度メールが来るときには、ハワイから、きっと写真つきで。 どんな言葉が聞けるのか、どんな風景を見せてもらえるのか、楽しみに待っている。
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