ひとりごと
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カンカンに熱せられたオーブンの中の小石にさっと水をかけた。 じゅー!と言う音とともに、もうもうと立つ白い湯気。 それを逃さないように、すばやく熱い天板を引き出してパンの生地を乗せ すぐに押し込んで、パタンと扉を閉める。 庫内の温度が200℃まで下がったら、タイマースタート。 あとは35分後の焼き上がりを待つだけ。
今年最初のパン教室は、このステップでの最後の授業だった。 メニューはフランスパンを2種。 生地の作り方も、成型の方法も、焼き方も、 そのシンプルな外観から思うよりもずっとむずかしい。 フランスパン、おいしくできますように。
オーブンに入れたら、見る見るうちに、クープが開き、 ほんのりと焼き色がついてきた。 パリパリ…と、ふくらむ音が聞こえそう。 わくわくする。 生地の一次発酵、成型後の仕上げ発酵、そしてオーブンに入れたときのふくらみ。 パン作りはこうして形や大きさが変わっていくのが楽しい。 小麦の粉が酵母と言う命の元を与えられて、おいしく育っていくのが嬉しい。 まさに生きものの成長を見ているようだ。
でもまだ未熟な腕。 なかなか思ったとおりには育ってくれない。 「なにか」の加減でふくらまなかったり、おいしくできなかったりする。 その「なにか」がまだよくわからないことがある。 思い通りに焼き上げられる日が来るのはいつのことか。
こんな私なのに、もう来月からは師範科に進むことになった。 月に1度のゆっくりペースの教室を2年半続けていた。 もう何十回もパンを焼いているはずなのだけれど、 本当にちゃんと身についているのかしら? 私などが師範科に進んでもいいのかしら? 不安なような、申し訳ないような、楽しみなような。
次からは、さまざまなフルーツや穀物から酵母を起こしてパンを作る。 試食させてもらった発芽玄米の酵母から作ったパンは、 舌に触れた瞬間から自然な甘みがうっとりと広がるようだった。 ふわふわとした口当たりの中に、しっかりとした穀物の香りがあった。 こくがあるのに、爽やかな後味だった。 こんなパンが作れるようになるなんて! …作れるようになるかな? やっぱりとても楽しみ。
そろそろフランスパンの焼きあがる時間。 オーブンの中を覗き込んだ。 こんがりといい色に焼けてきていた。 クープの広がりはちょっと足りないような気がする。 成型のときに、うまく芯を作れなかったらしい。 これはやっぱり、練習、練習。
タイマーが鳴り、オーブンからパンを取り出した。 広がる香りは最高! 色もなかなか。 ふくらみ不足はこれからの修行の余地があるということで。 あわてて天板に乗せたせいで、端っこが引っかかって、尻尾ができたのはご愛嬌。 これはなかなかのできではないかな?と自画自賛する。 熱々をすぐに割って、バターをのせて食べたくなる。 でもそれは今度、家で作ったときのお楽しみにね。 ここではあら熱をとったパンを、そのまま袋に入れて持ち帰った。 手提げ袋からただよってくるふくよかな香りと、ほのあたたかさが嬉しかった。
教室では、先生のつきっきりの指導があったので、なんとかできたけれど、 家でひとりで、火力も大きさも違うオーブンで、うまくできるだろうか? きっといくつも失敗作ができるのだろう。 それでもいつか、思い通りにおいしいパンを焼けるようになるときを夢見て! さあ、どんどんパンを焼きましょう。 修行はまだこれからだ。
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