ひとりごと
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図書館から帰ってきて少し寒い部屋の電気をつけた。 やかんにお湯を沸かしている間に、CDを探した。 なぜかさっきから「やさしい雨の祇園町」「あれは初めての恋」…と 古い歌の言葉とメロディーが頭をめぐっていた。 たしか、古いフォークを集めたCDの中に入っていたはず。
お湯が沸いて、紅茶を淹れた。 借りてきたばかりの本をめくりながら「神田川」で始まったCDを聴いた。 2曲目には「妹」それから「赤ちょうちん」が続いた。 外は曇り空。 ひとりの部屋にぼんやりオレンジ色の灯り。 図書館の重い古い本。 なんだか曲のムードにぴったり…。
やがて、その曲が流れてきた。 しっとりと爪弾かれるギターの細い音色。 本を閉じて、ゆっくりと味わうように聴いた。 そしてすぐに笑ってしまった。 「やさしい雨の祇園町」のあとに続いたのは「加茂の流れにうつるあなたの姿」。 歌の題名は「加茂の流れに」だった。 なんでこの歌が頭から離れなかったのかわかった。 帰り道、いつもの川に4羽のコガモがやってきているのを見たから。 ただ「カモ」と「川」のキイワードから連想しただけだったんだ。 なんて単純! 大体「鴨」と「加茂」では字が違うじゃない!と自分に突っ込みを入れた。 あぁ、おかしい。
でも、カモのことは私たちにとっては大切なことなのだ。 結婚して、この川のそばに住むようになって、毎日カモを眺めていた。 カモの訪れや旅立ちで季節を感じ、季節の移り変わりを感じてはカモたちを待った。 9月の下旬、冬鳥たちの先陣を切ってやってくるコガモたちは秋を告げる使者。 「コガモが来たね」 「もうそんな季節なんだね」 の会話を毎年繰り返していた。 オスもメスも同じような地味な装いでやってきて、 やがて寒くなるにつれて、オスは鮮やかな模様に衣替えをする。 「コガモが色づいたね」 「もう冬がやってくるんだね」 そんなことを話すのだ。
2枚組のフォーク大全集が終わるころ、夫も帰ってきた。 「コガモが来ていたね!」 とリビングのドアを開けるなり彼は言った。 また笑ってしまった。
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