ひとりごと
DiaryINDEXpastwill


つかまえた 2004年07月26日(月)

やっとつかまえた。
夜遅くに街を通り過ぎていく「いつもなんどでも」のオルゴール。
確かめに行こうとすると、いつも消えたあとなのだ。
夫は「どうする?カオナシがいたら!」などと言う。
う〜ん、よけいに見てみたい。
ほんとに、不思議なものがいてもおかしくないような
幻想的な雰囲気だけが残っていた。

今夜も、夫も私もそれぞれに本を読んでくつろいでいるときだった。
BGMのビル・エヴァンスのピアノの向こうに
どこからか、かすかに聞き覚えのあるメロディーが聞こえてきた。
あの「いつもなんどでも」だった。
少しずつ近づいてくる。

今日こそカオナシに会いに行こう!
もしかしたら、ハクかもしれない。
私は玄関を飛び出した。
道への階段を駆け下りると、暗い道をオレンジ色の灯りが
ゆっくりと通り過ぎようとするところだった。
それは小さな車だった。

うしろのハッチが開いて、中にパンが並んでいた。
懐かしいような色の電球に照らされて、狐色に光っていた。
カオナシでもハクでもなくて、パン屋さんの車だった。
流れるオルゴールの音は、パン屋さんの目印だったのだ。

謎はあっさり解決。
そのまま家に帰ってもいいのだけれど、ちょっとパンも気になった。
「天然酵母のパン」と書いてある。
それにやっぱり不思議な感じがただよってくる。
とろとろと動く車の運転席を覗き込んだ。
「パン屋さんなのですね。」
と、声をかけると、車が止まった。
「はい、そうです。」
「見せていただいてもいいですか?今、お財布をとってきます。」
言い残して、家に戻った。

「カオナシじゃなくてパンだった。」
と、本を読み続けている夫に声をかけ、お財布を取ってまた外に出た。
パン屋さんの車は少しバックして、うちの前で止まってくれていた。
運転席から、エプロンをかけた若い男性も降りてきていた。
ハッチの棚には、パンの名札が並んでいて、でもパンはまばらだった。

「こんな遅くにパン屋さんなんて、珍しいですね。」
と、言うと
「あちこち回っているとこんな時間になってしまうのです。
パンもずいぶん売り切れていて。」
と、すまなそうに男性が答えた。
名札だけのパンが気になったけれど、それでもそこに並んでいるパンも
じゅうぶんにおいしそうだった。
くるみフランスパンとメロンパン、
それから長いグリッシーネが4本入っている袋を選んだ。
ちょっとおまけをしてくれた。

予約用のメモと、手書きの文字のおたよりもくれた。
いろんなメニューがあるらしい。
パンはとてもおいしそうだ。
明日の朝食が楽しみになった。
また今度、この車をキャッチしよう。
月曜の夜に耳を澄まそう。



空がきれいな日

眠れなくて夜明けを見た。
静かで美しい朝焼けを見た。
いつかの夢のようだった。
カナカナカナ…。
蜩の声が響いていた。

短い眠りのあと、朝の食事の支度をしていたら
雷の音が聞こえてきた。
と思ったら激しい雨。
明るい陽射しはそのままに、キラキラと降る雨。
外に飛び出したら、道の向こうに虹が見えた。
みごとなダブルレインボーだった。

夕方、お向かいのマンションのピンクの壁が
淡いオレンジ色に輝いて見えた。
涼しくなった外に出ると、空いっぱいの夕焼けだった。
菫色、薔薇色、黄金色、インコの羽のような水色の雲。
佇んで見上げるうちに、菫も薔薇もインコも
深い藍色に染まっていった。
夜がやって来た。
星がつやつやと光りだした。

空がきれいな一日。
この同じ空の下で生きるものたちが
静かに平和に幸せに暮らせますように。
しみじみと思うこんな日。


Toto&Bebe |HomePage