ひとりごと
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今日は父の誕生日。 70歳、古希のお祝いだった。 杜甫の詩「人生七十古来稀なり」から来ていると言うけど 今は70歳を迎える人は珍しくはない。 それでもやっぱり節目。 離れて暮らしている娘たちも集まってみんなでお祝いをした。
小さいころ父が怖かった。 友達が「明日は日曜だからパパがいて嬉しいな」 と言うのを信じられない思いで聞いたりした。 私たち姉妹は父がいる日曜には 叱られないように息を潜め 猫をかぶってやり過ごしていた。
大きくなっても父は怖かった。 進学、就職、結婚。 何かあるごとに衝突し、怒鳴られ、 平手打ちを受けることもあった。 わからずやの父を恨んで何回泣いたことか。
でも、今日目の前にいた父は優しかった。 母や私たち四姉妹、そして孫たちに囲まれて にこにこと幸せそうなおじいちゃんだった。 父のことを「おじいさん」と思ったことはないけど 幼い孫のしぐさに目を細めているのは まぎれもなくおじいちゃんの顔だった。 胸が熱いような痛いような 嬉しいような寂しいような なんとも言えない思いでいっぱいになった。
花をもらい、ケーキのろうそくを吹き消しプレゼントを開けて、 そして父は気持ちよさそうに歌まで歌った。 嬉しそうな父を見て私もふんわり幸せになった。 こんな気持ちになるなんてね。 こんなときが来るなんてね。 父も私も年をとったんだなぁ。
今日は賑やかで楽しかった。 それでいいよね。 おめでたい日だもの。 ともすれば思いが流れてしまいそうな 先のことなんて考えないようにしよう。 家族と過ごす一瞬を大切に過ごそう。
帰り際、もらったばかりの花の中から 父は黄色い薔薇を抜いて私にくれた。 「僕が好きな花だから」だって。
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