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----------2005年04月05日(火) 母親にはなれない
「霊は彼女に同意も承認もしていなかったにも拘らず。また彼女の伴侶、すなわち男性なる、処女なる霊も同意していなかったにも拘らず。彼女は賛同者を見いださないままに、（すなわち）霊の同意がないまま、彼女自身の賛同者が知らないうちに自分で承認し、彼女のうちにある情欲のゆえに流出した。」
（「ナグ・ハマディ文書�亀澪竸析叩彌蠎�「ヨハネのアポクリュフォン」／岩波書店）
この世は「彼女」という代名詞で語られるソフィアの過失によって「流産」の形で生まれでた、という創世神話。
せっかくの三連休を何もせずに寝て過ごすのはもったいないから、と散歩に出かけた。けれど桜のつぼみはまだ固く、目についたのは小さな子供を連れた母親の姿ばかりだった。
この間リッツで交わした会話を思い出す。
「あんたも子供作れば？」
「センセイの精子だったら欲しい」
「それってもしかして精子バンクに登録するとしたら日本一高い？」
「高いかも」
「いいじゃん、すごい子供できそう。もちろん行為つき？」
「いやこのさい行為なしでいい。センセイ精子ちょうだい、って言いにいく」
「あんた、もうちょっとジンセイに夢もったら・・・？」
こんなんで母親になどなれるわけがなかろう。伴侶に賛同されない「子供」はいつまでたっても不完全なままなのだ、母親の子宮が断ち割られることが決まっていた６月６日、要するに私の誕生日、「伴侶」はゴルフに出かけていたと聞く。
母と、祖母の意志でこの世に生まれでた私はいつまでたっても生きているという実感がない。高島屋のディオールカウンターには確かに私の名前は登録してあるけれど、明日になればあの灰色のビルの７Ｆのフロアのどこかに私の机が用意されているだろうけれど、何かが許しがたく緩慢で、退屈だからコーヒーカップを２つ割った。
やはり母親になどなってはいけない。
