心の詩集

2004年08月25日(水) #4 風船の唄

この道を曲がった細い道の
角にある店で
赤と青の風船を2つ買ったよ

この風船に思いを込めて膨らませば
そこに連れてってくれるらしい

あまり車の通らない道の
車道側を歩く
君は顔を赤くして風船を膨らませていた

「もう少しで朝陽が昇るね」と
君は笑って言った
「もう少しでお別れだね」
僕は心中で呟く

左手に温もりを感じる
確かに君の姿が見える
別れも近いのに
何事もないように君は笑っていた

車があまり通らない道
向こう側に何かが見えた
君を迎えに来た
別れの時が来た

青い風船を膨らまして
僕は 小さく囁いた
君に聞こえないように
小さく言った

車のドアを開けて君がくぐった
何も言わずに
窓を開けて君は言った
「また会いにくるね」
笑って言ってた

僕は顔を下に向けながら
小さく手を振った
涙堪えきれず笑えるわけもなく
小さく手を振った

君の左手が大事に持っていた赤い風船
青空に飛んでいくから
僕も数分前に膨らましたばっかりを
手を離してみた

車は発車して結局僕は何も言えなかった
ただ君に見えなくなるまで
手を振り続けて

細い道を曲がった先のこの道を一人
僕の手には何もなくなった
もう温もりさえない

僕は君は今も笑ってると思い込んでいた
車の中で君が泣いてることを
今もまだ知らない



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つっかー

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