素晴らしきかな、老ピアニストの音楽 - 2003年11月01日(土) 昨日は私のちょー尊敬している園田高弘先生の 75歳記念リサイタルがあった。 私は園田先生に2度、お仕事でご一緒したことがあって 色々なことを話したことがある。 というより、学生時代から先生のバッハのCDを聴いて以来 「日本にこんな中身のいっぱいつまった立派なピアニストが存在したのか!」 と驚き、折にふれて先生のコンサートはできる限り出かけるようにしていた。 先生の博識ぶり、長年の経験からくるちょっと余人からは出てこないだろう洞察力、 そしてなによりも若者でもこれほどは…と思えるほどの情熱。 すべてに圧倒されたのを思い出す。 昨日のリサイタルは今まで私が聴いた先生のどのコンサートよりも素晴らしく、 というかまるで別次元のようだった。 素敵で楽しくすらあった。 75歳ですよ!! 外人アーティストなら75でもまだまだ、だと思えるだろうけど (やっぱり西洋人は体が違うから…) 日本人で75で現役、しかも完全な第一線で活躍している人など この国では初めてのことだろう。 しかもブラームスのピアノ協奏曲の第2番をいまだにレパートリーの最前線においている75歳なんているかよ! (若くったって弾けない人の方が圧倒的に多いのに。) で、昨日のリサイタル。 厳粛・壮麗きわまりないバッハ。 先生の十八番、ベートーヴェンの「熱情」の確固たる安定感。 先生はここへきて音色がさらに美しく、幅がでてきた気がする。 そして後半のドビュッシー。前半とは別の人が弾いてるみたいな音色ですっかりうっとりしてしまった。 先生がかつて初演した武満さんの「遮られた休息」と湯浅譲二さんの「内触覚的宇宙」の 孤独な美しさ。 最後のプロコフィエフの「戦争ソナタ」は圧倒的でその攻撃的でモダンな音楽が 難しくなればなるほど先生の音と技がどんどん冴えに冴えていくという感じで 信じられないほど凄かった。 私も鳥肌を立てていたが、最後の音が終わった瞬間、 「ブラボー」ではなくて「おおおっ!!!」とお客からどよめきがおこったくらいだ。 なんだか贔屓の引き倒しみたいな文章になってしまったが あのいつも前へ前へと向かう、永遠の青年みたいな情熱! 私は本当に心底感激したのだ。 私もあんな歳のとりかたがしたい。 先生はアンコールにプーランクの「無窮動」を弾いたのだが、 あの厳格な顔をした先生からこんな自由な境地を聴けるなんて、 なんとも嬉しかった。 園田先生と少しでも関われた人生を、 私は誇りに思っている。 ... 第9、第9 - 2003年10月30日(木) またもう1ヶ月もすれば、 私の大好きな「第9」のシーズンだ。 昨晩、FMで生放送をしていた 日系3世の名指揮者、ケント・ナガノ指揮ベルリン・ドイツ交響楽団の ベートーヴェン「第9」を聴いた。 このコンサート行きたかったんだけど、 この頃はなかなかに忙しくって、 悔しかったけどパスした。 しかし! この「第9」すごい迫力があって、とてつもなく素晴らしかった。 あーー行けばよかった… こないだのハーディングもそうだが 今の指揮者がベートーヴェンを演奏する際、 昔はともかく今はいっぱい考えなくてはいけないことがある。 楽譜の研究が進み、昔のように慣習的にやっていては曲の革命的斬新さがよくでてこない。 が、昔のやり方にも伝統の味、良さがある。 楽器もしかり。 ベートーヴェンが生きていた当時の楽器は、今の楽器のように改良に改良を重ねて 大きく!美しく!響く楽器ではなく、 また奏法も、フレーズのアクセント感、リズム感も違っていたことが 研究でどんどん明らかになっているから、それも考慮しなければならない。 こういったことを指揮者がどのようなバランスで取捨選択して、 自分の中で消化して音楽にするか? いい加減、適当にやっている演奏家ならいざしらず 大家で真摯に音楽に取り組んでいる一流の人は大変だ。 こないだのハーディングはそれに鮮やかな解答のひとつをだしていたが、 昨日のケントもまた違った答えをだしていた、と思う。 ベルリンのオーケストラはゴリゴリ〜とすごく力感あふれる音を出していたが、 ケントはその音をベースに様々な創意工夫をして 「ハッ!!」とするような新鮮で透明な演奏をしていた。 しかしこれは放送で聴いただけ。 あーーーーー! 今日もあるんだよ、2日目の演奏が。 行きた~~〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜い ...
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