天使に恋をしたら・・・ ...angel

 

 

uncertainty - 2003年07月29日(火)

昨日もビーチに行った。休暇の最後の日。
代休のジェニーは新しい病院に身体検査を受けに行って、それが終わってからわたしがジェニーんちに迎えに行った。

ときどき眩しい陽が照りつけたけど、ビーチはほとんど曇り空だった。だから水に一度も入らないで、ビーチにふたりで寝そべる。月曜日なのに夏休みのティーンズたちで人は多かった。45番のサンスクリーンを塗ったって、曇り空だったって、4時間もビーチにいれば焼ける。「今度会ったとき、焼けたとこ見せてあげるね」って、土曜日にビーチにひとりで行ったときに、ビーチからデイビッドに電話した。焼けた焼けた。3日続けてビーチに行けば、いやでも焼ける。裏と表にちょっと差があるけど。

3日続けてビーチに行って、やっと満足な休暇になった。
ジェニーんちで晩ごはんをごちそうになって、帰る途中の高速で携帯が鳴った。
「Hello?」って言ったら「もしもし?」ってあの人が答えた。びっくりしてジャンクション間違えそうになった。携帯にかけてくれたの、初めてだった。高速運転中だって言ったら、危ないからってあの人は少しだけおしゃべりして切った。でも嬉しかった。すごく嬉しかった。


今日から仕事に行くはずだったのに、夜中と朝にまた胃痛に襲われる。お薬を飲んだけど、2回目はなかなか効かなくて、病院に電話してお休みした。横になってたらデイビッドが電話をくれた。うちにいたから驚いてた。心配してくれた。ジェニーも電話をくれた。医者に行きなって言われた。

胃痛がおさまってからも目眩と頭痛が治らない。夕方、ジェニーに言われたとおりにファミリードクターに行った。コロノスコピーをオーダーされた。明日 Dr. ライリーのところに行ってアポイント取らなきゃいけない。怖い。コロノスコピーなんて。


今日は夜にサルサのプライベート・レッスンを受けることになってた。夏のあいだプライベート・レッスンがディスカウントになってるから、自分への夏のトリートに先週思い切って予約した。まだ少し目眩がしたけど、払っちゃったお金を無駄にしたくなくて、頑張って出掛けた。

スタジオのすぐ手前でロシア系さんにばったり会う。近くのアルジェンティン・バーでやってるタンゴのクラスに行くとこだったらしい。わたしの方が30分遅く終わるのに、ロシア系さんはわたしのスタジオの下まで迎えに来るって言った。

サルサのプライベート・レッスンはとても役に立った。ターンするときにときどきフラフラする原因がわかった。初めての人と踊るときにときどき相手の意図通りにフォロー出来なくなる理由もわかった。姿勢や相手の人の手の握り方さえ上手く踊るための重要なキーで、そういうのもきっちり教えてもらえた。レッスンが終わったら目眩もどっかに消えてた。

下で待ってたロシア系さんが、時間があるならどっかに行こうって誘ってくれたけど、今日は体調が悪かったばっかりだからって言ったら、そのままうちまで車で送ってくれた。

ロシア系さんはやっぱりたいくつな人で、ジョークが全然通じないし気の利いたジョークなんかひとつも言わない。そんなことは大して困らないけど、絶対わたしのこと誤解してるのが困る。今日あんなところでバッタリ会ったことを、巡り合わせだみたいなこと言って喜んでる。ほかのダンスのクラスには地下鉄で通ってタンゴ・クラブに行く木曜日だけ仕事の帰りに車で行くのは、タンゴのあとに会いに行く人がいるからだ、って今日も言ったのに、うちの前に着いてからまたわたしを抱き寄せようとした。「No!」ってまた慌てて車を降りて、バイバイって手を振った。

曖昧な言い方じゃなくてボーイフレンドに会いに行くって言えたら、どんなに簡単で楽だろうって思う。


うちに帰ってから携帯にデイビッドからの missed call が入ってるのに気がついた。
サルサのプライベート・レッスン受けてる時間だった。かけ直したけど繋がらなかった。メッセージ残したけど、かかってこなかった。だからメールを送ったら、すぐに返事が来た。「まだ起きてるよ」って。それから「きみがサルサのレッスンに行けて嬉しいよ」って。コロノスコピーのことも心配してくれた。でも、起きてるならどうして電話かけてくれなかったんだろ。

このまま不安にならないで済みますように。せめて来週の木曜日までこの気持ちの確かさが続きますように。先週の木曜日に会ったときに少しだけの神さまの声が聞こえて、わたしはそう祈ってたのに、もう全てがアンシュアになってる。

デイビッドはあなたに相応しくないよ。デイビッドはあなたを幸せにしてくれないよ。あなたのその人はデイビッドじゃないよ。誰もがそう思って笑ってるような気がしてしまう。


あの人がここにいて、そばにいて、あのときみたいにおどけて笑ってくるくるヒラヒラ舞ってくれたなら、ずっとそうしてくれたなら。忘れてた叶わぬ願いが、遠い遠い海の向こうから天使の代わりに舞い戻って来た。


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友だち以上 - 2003年07月27日(日)

突然めまいと吐き気に襲われて、普通に座ってることさえ出来なくなる。体を二つ折りにして椅子の上でかがんだ。汗が体中からザーッと噴き出す。一生懸命深呼吸しながらおさまるのを待ったけどダメで、ゴスペルソングがだんだん遠くに聞こえて行った。気がついて隣りで背中をさすってくれてたジョセフが「大丈夫?」って聞いてくれて、「横になりたい」って必死でなんとか答えた。

後ろのミーティングルームにジョセフが連れてってくれて、椅子を3つ並べてくれる。案内係の女の人が冷たいお水を持って来てくれて、顔見知りのナースの女の人と、別に男の人がひとり来た。男の人が脈を取ってくれる。まるでフラッシュの症状みたいで、違うのは血圧がものすごく下がってるのが自分でわかったこと。ハイポーグライセミックだと思った。糖分が欲しいと思ってたら、男の人がどこからかカップにアイスミルクを持ってきて、スプーンで口に入れてくれた。やっぱりハイポーグライセミックだった。急に楽になってきた。男の人はずっとスプーンでアイスミルクを食べさせてくれてた。口の中で溶けたアイスミルクがすうっと血液に溶け込んで行くのが自分でわかるようだった。

ついててくれたジョセフが男の人に「ナースですか」って聞いたら、「昔、医学生でした」ってその人は答えた。テキサスから休暇で家族を訪ねて来てるらしい。なんでドクターになるのをやめたんだろって思ってた。アイスミルクを自分の手で食べさせてくれるドクターなんか、きっとうちの病院にはいない。それに、ものすごく落ち着いてて、余計なことは何も言わない。「脈は正常ですか?」ってわたしが聞いたら「少し遅いけど」ってそれだけ言った。

ドクターだってあとからわかった。すごい気の利いたジョーク。ヒューストンの大学病院はものすごくいい病院で、NY のインターンに受からなかったらテキサスに行こうって思ってた。きっとそこのドクターだって勝手に決めた。

持って来てもらったお砂糖がたくさん入った紅茶を飲んだら気分がよくなった。案内係の女の人とナースと、それからその「昔医学生だった」ドクターにお礼を言った。まだそばにいてくれたジョセフに「あたし、これからビーチに行く約束があるの」って言ったら、何言ってるんだって叱られた。「でも行きたい」って子どもみたいに駄々こねたら、うちに送って行くから、何か食べてしばらく横になって大丈夫だったら行けばいいって言われた。もう大丈夫だからビーチに行くってしつこく言って、何か食べなきゃいけないなら今隣りのダイナーでチキンヌードル・スープが食べたい。そう言ったらつき合ってくれた。

B5 のナースのニーナと、彼女のうちの近くのビーチに行く約束だった。ほんとは昨日行くはずだったけどニーナは生理になっちゃって、「明日なら平気だから明日にしよう」って言ってくれてた。

ジョセフが、ロッカウェイのビーチにみんなを誘おう、きみはその友だちとくればいい、うちで BBQ もしよう、もしまたきみが倒れたりしてもみんながいれば安心だから、ってそう言った。説得されてニーナに電話したら、生理がまだ重たいからちょうどよかった、ひとりで行っておいで、ってニーナは言った。

ジョセフのアパートは、ロッカウェイのビーチの目の前にある。ほんとにすぐ前にビーチが広がってる。わたしはもうすっかり元気になってて、ジョセフの犬のロクシーとお散歩してから泳ぎに行った。陽差しは強すぎないで、水は冷たすぎないで、波は高すぎないで、ほかのみんなが遅れて来るのを待ちながら、ジョセフとふたりで泳いでビーチに寝ころんでいろんな話をした。ジョセフはジーザスを信じるようになるまで、デイビッドと同じジーザスを信じない信仰を持ってた。だから、そのことをたくさん聞いた。わたしのこともたくさん話した。ジョセフは一生懸命聞いてくれて、答えてくれた。一緒にお祈りもしてくれた。

BBQ もとても楽しかった。終わり頃に近所のちいさな女の子たちが「ホットドッグ欲しい」とか「ハンバーガーちょうだい」とか「マシュマロ焼いて」とか言いに来て、わたしはお店やさんになりすましてかわいい女の子たちの注文を聞いては、ホットドッグやハンバーガーやマシュマロを焼いてた。「きみのホストぶりは完ぺきだね」ってジョセフが誉めてくれた。

ジョセフは、8月にひとりでキャンプに行く予定だけど、きみに休暇が取れるなら一緒に行かないかって言った。8月の3週目にわたしはまた休暇を取る。でも行けるわけない。行きたいわけない。


夜にはロシア系さんとサウス・シー・ポートでやってるピアのタンゴパーティに行く約束だった。約束の時間より2時間もずらしてもらって、ロシア系さんがうちまで迎えに来てくれた。着いたのは11時過ぎだった。途中で大雨が降り出したけど、雨さえ気持ちよくてびしょびしょになりながら踊った。1時までの予定が大雨のせいで12時過ぎには終わった。1時間しか踊れなかったけど、屋外で、いつもと違うところでいつもと違う人たちの中でタンゴを踊るのはものすごく素敵だった。雨も素敵だった。とても素敵に踊れたような気がする。

うちまで送ってくれたロシア系さんは、うちの前でわたしの腕を取った。上手くかわしてありがとうと気をつけてとおやすみなさいを言って、慌てて車から降りた。


本当に友だちでいたい人は、わたしに友だち以上を求めてくる。
友だち以上をわたしが求めたい人は、いつもわたしと友だちでいたがる・・・。



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何気なく - 2003年07月24日(木)

昨日、デイビッドからのメッセージと一緒にロシア系さんからメッセージが入ってた。
サルサのクラスのあと、みんなでキューバン・ソウルに行った帰りに気がついた。明日はお休みだから会えないかなって。

今日になっても返事はしなかったけど、お昼すぎ、今日も予定がひとつキャンセルになったからたいくつで電話してみた。わたしの住んでるところに来るって言うから、そっちの方ににわたしが行くって言った。久しぶりに遠出の運転がしたかった。ロシア系さんはアップステイトに住んでる。

どこかの大きなモールの駐車場で待ち合わせして、そっからロシア系さんは遊園地に連れてってくれた。綺麗なとこだった。海のすぐそばで、ビーチがあって、遠くに霞むのはロングアイランドだよってロシア系さんが教えてくれた。

遊園地なんて何年ぶりだろ。パワーサージっていう空中をぶるんぶるん振り回されるやつに乗ったら、ハートアタックするかと思うくらい怖かった。ぎゃーぎゃー叫んだ。あと1分続いたらホントに死ぬと思った。ローラーコースターはロシア系さんが写真サービスを注文して、出来上がった写真のわたしは「この世で一番ブサイクな顔」くらいブサイクだった。メリーゴーラウンドがすごい勢いで走るダービーなんとかってのに乗りたかったけど、大人は乗れないって言われた。観覧車が気持ちよかった。海が綺麗で、とても綺麗で、後ろを振り返りっぱなしで海ばかり見てた。

ものすごく楽しかったけど、ロシア系さんはわりとたいくつな人だった。

モールの駐車場まで戻る途中でジェニーから電話がかかった。このあいだ受けた病院、採用されたって。嬉しかった。でも淋しくなる。

自分の車に乗り換えて、そのままロシア系さんのあとについていつものタンゴに行った。デイビッドんちのすぐそばの高速を通った。「今日は初めて河沿いをうんと北の方に来てみた」って、いつか自転車に乗って電話をくれたのはこの辺りかなとか思ってた。


10時すぎにデイビッドと会った。ごはんを食べてから、「グリーンティ・アイスクリーム食べようよ」って、いきなりデイビッドが日本食のお店に入って、閉まりかけの誰もいないレストランで抹茶アイスクリームだけ注文してふたりで食べた。

それからデイビッドのアパートに行く。いつものようにデイビッドが仕事のメールをチェックしてる間、わたしはナターシャとリビングルームで遊ぶ。サルサの FM ステーションを勝手にかけて、くるくるひとりで踊ったらナターシャがわたしの周りをジャンプする。ぐるぐる走り回ったら、あとをついてぐるぐる走る。ときどき突然止まって天井に向かってウォウォウォウォウォーって吼えるのが可笑しくて、つられてゲラゲラ笑った。

カウチに座って窓を眺めたとき、神さまの声がまた少しだけ聞こえた。答えじゃない。でも、聞こえた。確かに聞こえて、それが胸の奥を優しく撫でてった。


「Did you miss me?」。なんでもないふりしてそう聞いたら「Of course」ってデイビッドが言った。「あたしのこと好き?」って聞いたときにハンサム・ドクターが答えたのとおんなじ言い方だった。あのときはその言い方に込められた気持ちがわからなかった。あとになってからわかった。わたしはいつもそうだから、デイビッドの言葉は今ちゃんとしっかりこころで聞こうと思った。

「そんなこと考えなくていいんだよ。僕は今ちょっといつもより忙しいだけだから」。
デイビッドはそれからそう言った。ちゃんと聞かなくちゃと思って、聞き直した。「きみがそんなふうに考える必要ないって」。


今日は少し離れたところに車を停めてて、デイビッドが自分の車でそこまで送ってくれた。バイのキスをくれたあと、わたしはもう一度抱きついてほっぺたにキスした。それから後ろのナターシャの頭と顔を撫でてバイバイをした。


帰り道、ひとつずつ思い出してた。
今までくれたデイビッドの言葉。何気なく言うから何気なく聞き流してた言葉たち。
それから、いつも何気なく繋いでてくれる手。繋いだわたしの手の甲に何気なくくれるキス。
通い慣れた道を運転しながら、ひとつずつひとつずつ思い出してた。

神さまの声はきっとそれを教えてくれた。



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大好きなアパート - 2003年07月23日(水)

お昼すぎ、雷が鳴って大雨が降る。
びっくりして「サンダーストームだよ。外にいない? 大丈夫?」ってメールしたらすぐに返事が来た。「デスクに座って仕事してる。こっちはまだ振ってないよ」。しばらくして「降り出した!」ってまた来た。「たいくつだよ〜」って返事したら「映画でも観に行っておいで」だって。

たいくつ。つまんない。雨が小降りになってからクーラーの部品を買いに行ったけど、どこにもない。夕方になってまた大雨になって、夜にダンス仲間とコーパに踊りに行くはずだったけどキャンセルになった。一週間お休みだけど、一週間こんなお天気らしい。たいくつ。たいくつでカダーに電話した。

マジェッドの声が隣りで聞こえた。だから「遊びに行ってもいい?」って聞いたら、「そんなにたいくつならおいでよ」ってカダーは言った。

雨の中、高速を飛ばす。
着いたらマジェッドが玄関まで迎えに出てくれてた。「久しぶり」ってハグして中に入る。バスルームから上半身裸のカダーが出て来て、「Hi」ってハグしたのに抱き締めてくれない。「なんでハグくれないの?」って言ったらぎゅうって抱いてから抱き上げてくれた。横でマジェッドが笑ってた。

「これ、デイビッドの一番お気に入りなんだ。この間デイビッドが来てくれたときに買った分の残りなの」って持ってったビールを4本渡したら、「ああそう、僕には残り物ね」って、チキンをのっけたピラフとサラダの晩ごはんをテーブルに用意してくれた。ふたりはもう食べちゃったあとで、「残り物なんだ、これ」って言ったら、「きみのために余分に作っておいたんだよ」ってカダーはいつものわざと怒った口調で言った。

嬉しかった。おいしかった。カダーの手作りのサラダのドレッシングがとてもおいしかった。いっぱい誉めてたくさん食べた。「ブタみたいに食べるな。朝から何も食べてないの?」って言われた。

おしゃべりして笑ってふざけて笑ってダンスして笑って映画みて笑って、たいくつだった一日全部埋め合わせられたくらい楽しかった。マジェッドになんか去年の夏から会ってないことになってるから、それが見つかんないようにマジェッドと会話するのが難しかったけど、それもおもしろかった。


帰るつもりだったのに、カダーのベッドで眠った。
カダーは夜中に何度もわたしの名前を呼んで、「寒い?」って聞いてはシーツをかけてくれたり、「足が痛い」って言ってはわたしを起こしたりしてた。

今日はカダーはお昼から仕事で、ふたりでゆっくり起き出して、朝ごはんを作る。
たまごはゆでたまごがいいってカダーは言う。わたしはゆでたまごなんかつまんない、目玉焼きにしよう、って言ったけど、カダーはゆでたまごのがヘルシーじゃんって言う。「あなたにゆでたまご作ってあげて、あたしは自分に目玉焼き作る」って言ったら、「じゃあ僕も目玉焼きにして」って言う。

わたしが作るはずだったのに、カダーが隣りに立ってたまごを割ってくれたり塩を渡してくれたりフライパンをゆすってくれたりごちゃごちゃ文句言ってくれたりする。デリのピクルスをスライスしてくれて、ピタブレッドをトーストして、ヨーグルトチーズをつけて食べる。殆どカダーがやってくれた。いつも必ず新しいミドルイースタンの食べ物を教えてくれる。ヨーグルトチーズがとってもおいしかった。

わたしの大好きなアパート。大好きな緑の森のキッチン。


携帯が鳴った。バッグの中を手探りしてるうちに切れた。ID が restricted になってた。お休みなのに、病院から誰もかけて来るはずがない。デイビッドだ。デイビッドのうちのオフィスの番号は、出ないようにしてあるから。

かけ直さなかった。
ジェニーんちにいるなんてうそつくのはやだったし、カダーんちにいるってホントのこと言っても、なんにもしないで一緒に寝たなんて信じてくれるはずがない。


わたしが先に車を出して、カダーが後ろをついてくる。ときどき手を振ったら、ステアリングにのっけたままの手を広げてくれるのが、ルームミラーに映る。

出る前にハグしてくれたカダーのトワレの匂いが、自分の体に移ってる。

何やってんだろってちょっと思った。
でも、こんなのでもいいやっても思った。わたしの一番欲しい答えが見つかるまでは。


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Who am I in your life? - 2003年07月21日(月)

どっかに出掛けなくちゃ。そう思って、前のアパートの近くのビーチのある公園に行く。
カダーが好きな公園。このあいだもひとりで行って来たって言ってた。あのカダーがひとりでぼうっとしたいときに行きたくなるっていう場所。一度だけ、カダーのルームメイトがわたしを連れてってくれた。

もう日が沈みかけてて、風が強かった。潮の匂いの風に吹かれてベンチに座ってたばこを吸う。風で火がなかなかつかなかった。小さな子どもたちが浅瀬で水遊びをしてる。遠くに、あの街のヨットハーバーみたいに、ヨットが何隻も何隻もゆらゆら浮かんで揺れている。

寒くなってきたから、車に戻って海に突き出した埠頭の駐車場に車を移して、車の中で日が沈み切るまで海とヨットと入り江の向こうのどこだかわかんない街を眺めてた。


お手洗いに行きたくなった。
公園のお手洗いは鍵がかかって入れなかった。
カダーに電話した。「どこにいるの?」。そう聞いたら、一緒に仕事をしてる友だちの名前を言って、そこんちにいるって言った。「なんで?」「今あなたんちの近くにいるの。お手洗い借してもらおうと思って電話したの」「レストランかどっかで借りなよ」「やだよ、お手洗い借りにレストラン行くの。マジェッドはうちにいるかなあ?」「さあ。電話してみな」「うん。いたらお手洗い借りに行くよ。いなかったらどっか探す」「僕に会いたい?」「お手洗い行きたい」「あとで電話するから、早くトイレ済ませてきな」。

マジェッドはいなくて、しょうがないからドーナッツ・ショップでお手洗い借りた。それからドーナッツひとつとベーグルひとつとマフィンふたつ買う。買うつもりはなかったけど、お手洗いだけ借りて出てくには人が少なすぎたから。うちに帰る高速の途中で、電話が鳴った。

「会う?」って言うから、「うちじゃなくて外がいい」って言った。「なんでだよ」って言う。「だってセックスだけしたがるんだもん」「だけじゃないよ」「だけじゃん。そういうのやだって言ったでしょ?」「じゃあ飲みに行く?」「・・・。いいよ」。


カダーがうちにピックアップしに来てくれて、近くのラウンジに行った。
先週の水曜日だっけ。ディディーが Kasaav がたくさん入ったクリオール語の CD をコピーして、うちの前まで持って来てくれた。おなか空いたって言うディディーと一緒に行ったそのラウンジは、グリークの音楽がとても素敵だったのに、今日はグリークがかかってなかった。「水曜日だけがグリーク・デーなんじゃないの?」ってカダーは言った。

マンゴのモヒトーを全部飲み切らないうちに酔った。
氷が溶けて、いくら飲んでも大きなグラスに入ったモヒトーの量は減らないで、「手伝ってよ」ってカダーに言う。「こんな水でまさか酔ったって言うんじゃないだろ?」ってカダーは笑う。

帰り道、あの場所を通ってもらう。あの頃カダーに見せたかった。1年経ってやっと見せてあげられた。「綺麗でしょ?」「綺麗だね」。あの頃聞きたかった言葉。

飲んでるときにクーラーの話をしたら、つけてくれるってカダーは言った。このあいだマジェッドの部屋につけてあげて、簡単につけられたからって。新しいクーラー用のケーブルを先週大家さんが引いてくれた。あとはクーラーを窓につけるだけ。でも窓とクーラーのギャップを塞ぐエクステンションが要る。


車を停めて、カダーがクーラー見てあげるって言う。口実ってわかってた。
カダーはわたしのからだを抱きかかえて、わたしはカダーのからだにしがみついて、車を停めた場所からうちまで歩く。もう少しで着くところで携帯が鳴った。デイビッドってわかってて、カダーはわざとわたしのからだを抱き寄せた。

「一番やっかいな仕事がやっと片付いたから、寝る前にきみに電話しようと思って」「よかった。片付いて」「うん。明日から普通にいつものペースで仕事が出来るよ」「会える?」「うん、木曜日」。それまで会えないんだ。「木曜日?」「そう。木曜日には会わなきゃ。お互い大嫌い同士だから」。そう言ったと思う。「意味わかんない」「僕はわかるよ」。

話しながら玄関の鍵を開けたらデイジーが吼えて、大家さんの奥さんのシャーミンが階段の上から覗いた。と思う。デイビッドはほかにもなんだかよくわかんないこと言ってて、でも酔ってたのとカダーがいたのとデイジーが吼えてたのとシャーミンの気配が気になったのとアパートの鍵を開けるのに忙しかったのとで、ちゃんとおしゃべり出来なかった。「おやすみ」って切って、少しほっとした。


わたしは淋しかった。淋しいのを隠してたけど、淋しいまんまだった。
「Who am I...?」って聞いたらカダーはわたしの名前を言った。笑った。
「Who am I in your life?」。もう一度そう聞き直したら、「そんな難しい質問に答えられない」ってカダーは言った。昔、一番最初のガールフレンドが同じことを聞いて、カダーの答えに機嫌を悪くしたって。「ガールフレンドだったんでしょ? そう答えたんでしょ?」「彼女はそれ以上の答えが欲しかったんだ」。

女の子はいつも「今」に満足できない。女は先のことを知りたいから。考えたいから。男は今日言った約束を明日には忘れるけど。ずっと前にジェニーが言ってたみたいに。


Who am I in your life?
カダーの答えを聞きたかったわけじゃない。
デイビッドに聞きたかった言葉。
でも、答えを探しちゃいけないから聞かない。多分、聞かない。多分。

「デイビッドはきみの right person じゃないと思うよ」ってカダーは言った。
「生きてるってシンドイね」って言ったら、「しんどくないよ。きみがしんどくしてるだけだ」ってカダーは言った。


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時は止まらない - 2003年07月20日(日)

なんとなく、アルバムを見てた。

あの娘のいるあの街のビーチの写真を見て、この間デイビッドが「なんでこんなに綺麗で素敵なとこを離れたの?」って聞いた。あの街はほんとに素敵だった。春も夏も秋も冬も、飽きることなく美しくて、あの街で過ごした10年はわたしにとって宝もの。今でもいつでもわたしのこころの中で、決して褪せたりしない。

アルバムをひとつずつ引っぱり出しては、写真を見てた。
写真のわたしはどれもみんな笑ってる。嬉しそうに笑ってる。
3枚だけ笑ってないのがあって、ちょっと塞いでたわたしに夫が写真を撮ってあげようって言って、あの娘を抱いて撮ってくれた写真。そんなことも覚えてる。

夫も幸せそうに笑ってる。
あの娘と夫とわたし。いなくなった猫。やってきたチビたち。
美しいあの街。どこまでもどこまでも美しかったあの街。
なんで時はあそこで止まらなかったんだろう。


一冊のアルバムの裏表紙のポケットに、紙切れを見つけた。
思い出せない。どこでもらったのか、いつ、誰がくれたのか。


Be patient toward all that is unsolved in your heart
And try to love the quetions themselves.
Do not seek the answers that cannnot be given you
Because you would not be able to live them
And the point is to live everything.
Live the questions now.
Perhaps you will gradually without noticing it
Live along some distant day into the answers.

-Rainer Maria Rilke


何度も何度も読んだ。

答えを見つけようとしてはだめ。
まだ答えを与えられないのなら、存在しない答えを生きることなんか出来ないのだから。
こころの中にある疑問ももやもやも、今はまるごと受け入れなさい。
わからないことをわからないこととして認めて、解けない問題そのものを好きになって、今こころの中に存在するその疑問を生きなさい。
いつか知らないあいだに答えが見つかってる、そんな日がやって来るから。


そう。考えても考えても、わからない。
神さまはまだわたしに答えをくれない。
だから今は受け入れるしかない。受け入れよう。今このままのわからない自分の毎日を。わからないデイビッドのこともわからないカダーのことも。
いつか知らないあいだに解ける日がくるのを信じて待とう。
今のこの毎日を好きになる。解けない疑問も不確かな愛もすべてひっくるめて。
ただ、淋しさに襲われることさえなければそれでいいことにする。
だからどうか、淋しさだけはもうわたしを襲わないでいて。


デイビッドが電話をくれた。
「さっき帰って来たよ。今自転車で明日の朝のベーグル買いに来たとこ」。
そう言って、お店の人に「プレーン、ふたつ」って大きな声で叫んでるのが聞こえた。

ロードアイランドは最高だったって。
お天気はよくてたくさん泳いで、ナターシャもポリスの目を盗んで2時間くらい泳いだよって。明日からまた忙しい日が始まるって。「明日からここは一週間雨なんだよ」「そうなの? きみ一週間お休みなのに」。わたしは何の予定もなく、一週間お休みを取った。祝日出勤の振り替えがたくさん溜まったから。ビーチに連れてってくれるって言ってたけど、叶いそうにない。


ほんとうに、なぜ時はあのまま止まってくれなかったんだろうね。

そんなバカな疑問なら、簡単に認められて受け入れられて、答えも簡単に見つかる。時は止まらない。簡単なことなのに。


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戻りそう - 2003年07月19日(土)

昨日はわたしはお休みで、ジェニーは面接受けるのにコールインして、ジェニーの面接が終わってから一緒にビーチに行くことになってた。でも雨。ジェニーはうちに来て、わたしはお昼ごはんを作ってあげて、それからひたすらおしゃべりする。

4分の1アジア系が入ってるジェニーは、ボーイフレンドはアジア人がいいって言う。
ジェニーは Dr. アスティアニとブレイクアップした。「あの人はセックスが欲しかったんだ」って言った。

ナニジンだからって考えるのは嫌いだけど、心と心の繋がりを大切にするのは確かにアジア人かもしれない。いい意味でも悪い意味でもより愛に繊細で気持ちが細やかで。そんな気がする。

面接に行った病院はとてもいい病院だったってジェニーは言った。もし採用されたら迷わず今のとこ辞めてそこに行くって。ジェニーのことだから、採用されると思う。ジェニーのために嬉しい。でも淋しいな。ジェニーがいなくなっちゃったら。


今日は仕事。思いっきりお天気がよくてくやしい。
終わってから月に2回あるスタジオのダンスパーティに行った。
なんとなくつまんなかった。なんだか足がもつれて、くるくるくるくるくるくるくるもいつもみたいに上手く行かなかった。みんなすごく上手に踊る。人が踊るのばっか見ては、ため息ついてた。先生がルンバを踊ってくれて、それだけが楽しかった。

帰りは今日もディディーが車で送ってくれた。方向がおなじ、カーラって女の子と一緒に。ディディーはうちのそばの河沿いの夜景を気に入って、カーラにも見せてあげようって前と同じ道を走る。「絵はがきみたい」ってカーラは言った。


カダーはあれからも電話をしてくる。
でもやっぱりセックスしたいだけ。「きみを抱きたい」ってそれしか言わない。
会いたいけど、会えない。

あの人はこの3日忙しくて声も聞けない。

デイビッドは明日のいつ帰ってくるんだろ。
会いたい。ナターシャにも会いたい。


人恋しくて淋しくて、
また昔のわたしに戻りそう。


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会えなかった木曜日 - 2003年07月17日(木)

ずっとそればっかり考えてた。

「きみは僕の生涯の友だちになれる? もしも僕が誰かと結婚したとしても、きみはずっと僕の友だちでいたいと思える?」

意味がちゃんとわかんなくて、そればっかり考えてた。
ジェニーに聞いてもロジャーに聞いてもわかんなかった。ふたりともイロイロ言ってたけど。
月曜日のベリーダンシングはお休みで、火曜日のバイブルスタディもお休みで、
そればっかり考えては淋しくなった。

昨日はサルサ。今月からブレイク・オン2になって、ステップインが1よりずっと好き。ディディはブレイク・オン2が出来なくて、ルール違反してわたしのリードでステップインする。ちょっとショゲてた。クラスが終わってから、ディディがうちまで車で送ってくれた。車の中で携帯をチェックしたら、デイビッドからメッセージが入ってた。
「今晩ごはんにスシを食べたとこ。ここはホームメイドのグリーンティ・アイスクリームはなくて、だからホームメイドのコーヒーとグリーンティを一口ずつ飲んで、ナターシャは氷をのっけたごはんを食べた。氷がごはんの上で溶けてたよ」。
くすって笑ったら、ディディが「なに? おもしろいメッセージ?」って言った。

ちょっと遠回りして公園と河の間の道を逆から走ってもらった。
マンハッタンの街灯りと大好きな橋の灯りとキラキラ光る水面。ディディは「綺麗だねえ。NY で一番綺麗な夜景だよ、これ」って何度も言ってた。そんなことないと思う。でもそうかもしれない。嬉しくなった。


デイビッドに電話する。「もう帰ったの? 早かったね」って言われた。
たくさんおしゃべりしたけど、今日の約束はなし。今日から3日間、デイビッドは弟と一緒に両親と叔母さんと叔父さんを連れて、ロードアイランドのサマーハウスに出掛ける。初めて木曜日の約束なし。うんとちっちゃい時から大事にしてもらってる大好きな叔父さんと叔母さんだから、ごめんよ、って先週言ってた。ナターシャも一緒に行く。

「気をつけて行ってね。楽しんで来てね。ナターシャにあたしからキスあげて」。
切るときにそう言ったら、
「きみの猫たちによろしく」って。
それから、
「きみの『あの娘』にもよろしく」って言ってくれた。

そんなこと言ってくれた人、今までいない。涙が出そうになった。


いつも通り、タンゴに行く。
太ったおおきなおじさんはもう全然来ないし、先週来なかったロシア系さん今日は来るかなって窓の外ばかり見てた。会えない木曜日のタンゴなんかつまんない。先生は今日素敵なサマードレスを着てた。つまんなそうにしてるわたしを何度も誘ってくれた。先生と踊ると緊張して上手く踊れなくて、嬉しいけどつまんない。

ロシア系さんがやっと来る。夢中になって踊った。

「ごめんね、木曜日は毎週タンゴのあとで会う人がいるの」って断ったのに、それからもロシア系さんは終わってからいつもわたしをお茶に誘う。今日はみんなで食事に行くことになってたらしくて、みんなの誘いにオーケーしたわたしにロシア系さんは驚いた顔した。「今日はフリーなんだ」って笑ったら、「やった!」って大きな背丈をもっと伸ばして喜んだ。キューバン・レストランまでの道、わたしと並んで歩いておしゃべりする。

わたしはごはんを食べずにグァバとクリームチーズのデザートとエスプレッソだけ注文した。わたしの隣りに座ってたロシア系さんは、自分のチキンをわたしに少し分けてくれた。おんなじ通りに車を停めてるから、帰りもそこまで一緒に歩く。

とても誠実そうで穏やかな人。コミットメントを大切にしそうな人。こんな人を好きになればいいのに、そう思う人は好きにならない。


「明日、あたしタンゴ行ってくるね。でもそのまま帰るのつまんないな」って昨日言ったら、「誰かに誘われたら行ってきなよ」ってデイビッドは言った。誰かと出掛けると誰と出掛けたのかいつも気にして聞くくせに、わかんない。

最初に好きになったのは向こう。
どっちが先に好きになったかなんて、関係ない。
だけど、あとから好きになったわたしの方が、いつも追い越して好きになる。



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信じたい - 2003年07月13日(日)

8時半。少し遅れるってデイビッドが電話をくれる。
わたしのアパートのドアをノックするのが聞こえて、開けたら大家さんの奥さんのシャーミンが「男の人があなたを尋ねて来たわよ」って嬉しそうに2回繰り返した。玄関のドアに迎えに出たら、頭にブルーのバンダナを巻いた白いTシャツとブルージーンズのデイビッドがいた。いつもより素敵に見えた。

「猫たちは?」って聞くデイビッドに、ベッドルームに入れてたチビたちを紹介する。チビたちはいきなりデイビッドにじゃれつく。お兄ちゃんチビは男の人が大好きだからわかるけど、シャイな妹チビまでデイビッドにくっつきまくった。こんな人なつっこい猫たち初めてだよ、ってデイビッドは言った。「ほんとに世界一いい子の猫たちだ」「でしょ? あたしが言ったとおりでしょ?」。前に、うちのチビたちは世界一いい子の猫たちなんだよ、だってあたしの猫たちだから、ってわたしは自慢してた。

ベッドルームでちびたちと遊ぶデイビッドをダイニングテーブルに呼ぶ。
デイビッドは食べることが大好きで、お料理の仕方とか食材の質とかそういうことにウルサイからちょっと緊張した。お魚がメインの日本食を用意してた。

青りんごとオレンジとメスクランのサラダには、レモンと生姜とオリーブオイルのドレッシングを作って松の実を散らす。焼き茄子には赤ピーマンと青ピーマンをグリルしたのを添えて、お味噌で作ったソースをのせる。フラウンダーは3種類のきのこと一緒に白ワインと醤油と昆布だしでホイル焼きしてシラントローを飾りと香りにのっけて、仕上げに山椒を胡椒挽きで挽いて乾燥ゆずを併せてかける。玄米ごはんは白ごまを炒ったのと味付け海苔を細く切ったのをのっける。それから、冷たくしたジャスミン・ティー。デザートはホームメイドの抹茶アイスクリーム。デイビッドが好きって言ってたから。

デイビッドは興味深げにひとつひとつレシピを聞いてくれた。どれも驚いてどれも美味しいってすごく誉めてくれた。合格。嬉しかった。


ごはんを食べてるあいだ、デイビッドはいろんなことわたしに聞いた。過去の恋人とふたりの夫のこと、わたしの男友だちのこと、わたしがデイビッドとのことをどういうふうに考えてるか、将来もう一度結婚したいか、そういうこと。ふたりともおしゃべりだから、話は途中でどんどん違う方向に行って戻って来なかったりした。でも、いつもわたしの頭の中にあるいろんなことを少しは伝えられたと思う。

わたしは結婚を求めてないけど、「結婚はもういい」とも今は思ってない。結婚はゴールでもエイムでもなくて、もしもそういうときが自然に訪れたなら受け入れる。わたしがいつも欲しいのは、先の約束じゃなくて今の安心。一緒に過ごす楽しい時間だけじゃなくて、それ以上の何か。「シリアスな関係」ってのをデイビッドにも聞いた。デイビッドもやっぱり、それは結婚を意識することって言った。「お互いにとても好きでいつも気にかけて大切に思い合って、そういう気持ちをその人だけに持ってるっていうのは、シリアスじゃないの?」「シリアスな関係って人が言うときは、それは結婚を考えてつき合ってるってことを意味するんだよ」。それが一般の定義なんだ。それならわたしとデイビッドは「シリアスな関係」じゃない。Dr. スターラーが答えてくれたことを話した。デイビッドのことを聞いたってのが明かだったけど。「賢い人だね。きみはその人の答えに納得した?」。納得したって言えばよかったのに、わかんないって答えてしまった。

わたしはこのあいだから、2回メールで「I love you」を書いた。半分ふざけて、半分大好きの意味を込めて。デイビッドは怖くなったって言った。「なんで? あたしがチビたちに言うのとおんなじだよ」「猫に言うのとは違うよ」「でも大好きな友だちに言うのともおんなじだよ。ナターシャに言うのともおんなじだけど」「ならいいけど、I love you はとても強い言葉なんだよ。結婚したいのかなって怖くなった。僕はきみのことがとても好きだよ、ほんとに大好きだよ。だけど『愛してる』って言えるほど、まだお互い知り合ってない」。

シリアスな関係 = I love you = 結婚。
そういう図式になってるんだ。知らなかった。「I love you」って書いたのは、ほんとに大好きな友だちに抱きついて言うのとおんなじ意味だった。うんと昔、まだ日本にいたころ、アメリカ人の友だちが「日本人は愛してるを簡単に言い過ぎる」って言ってたのを思い出す。ペットにも友だちにも家族にもよその赤ちゃんにもよその子どもにも、「I love you」をたくさん言うのは英語のカルチャーのはずなのに、好きな人には「I love you」をそんなに簡単に言っちゃいけないんだ。「シリアスな関係」じゃなければ。

「きみは僕の生涯の友だちになれる? もしも僕が誰かと結婚したとしても、ずっと友だちでいたいと思える?」。突然そんなこと聞かれた。答えられなかった。黙ってた。また友だちを祈らなきゃいけなくなるの? 初めて言葉で「とても好き」って言ってくれたのが嬉しかったのに。シリアスな関係じゃないから?


チビたちがデイビッドにこんなになつくのを、毎週木曜日にわたしの服にも髪にも肌にもわたしがつけて帰るデイビッドの匂いをチビたちが知ってるからだってデイビッドは言った。わたしにするみたいに両手でデイビッドの腕をカリカリ引っ掻くまねをしてはふにゃっとその腕に顔をすり寄せる妹チビを抱き上げて、わたしは言った。「もうひとつ理由があるんだよね、チビ。この子があなたを好きなのは、あなたがあたしを好きだからよ」。「そうだね。そのとおりだよ」ってデイビッドは微笑んだ。

「You have to trust him」。気持ちのコミットメントを、Dr. スターラーはそう言った。信じたいよ。


11時半にデイビッドは帰った。とてもとてもとても優しいキスを3回くれた。今までで一番素敵な、愛情いっぱいのキスだった。

信じたい。




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気持ち - 2003年07月12日(土)

ビーチに行った。ジェニーとアニーのオフィスのアニーじゃないほうのアニーとアニーのぼうやのエブラハムと、4人だけのはずだったのが、エスターが旦那さんと一緒に来て、ジェニーの学校のクラスメイトのソノールも来た。

お天気はよかったけど、水が冷たくて波が高かった。結婚したばかりのエスターたちはベタベタくっつきまくって、アニーとちっちゃいエブラハムは波打ち際を走り回って、ジェニーとソノールとわたしはめちゃくちゃ強い波に5回くらいノックアウトされてから、そのあとひたすら食べておしゃべりする。

カダーと仲直りしようと思ってビーチから電話したけど、カダーは来なかった。「カダーがいないから、今年はアンタのセクシーショットなしだね」ってジェニーが言う。


ゆうべ、2時頃にカダーが電話してきた。うちの近くのバーにいた。飲み過ぎて運転出来ないから泊めて欲しいって言った。はじめはお芝居かと思ったけど、ほんとに酔っぱらってて苦しそうでとても申し訳なさそうにそう言うから、「絶対なんにもしないでよ」って泊めてあげることにした。カウチに座らせて冷たいお水を持ってったけど、カダーはお水をいらないって言って、わたしに抱き締めてて欲しいって言った。

カダーはわたしのことを何度も何度も好きだって言った。どんなに僕がきみを好きかきみはわかってないとも言った。「カダー、酔いすぎ。あなたがそんなこと言うなんて」って笑ったら、「なんで笑うの? ばかにしてるんだろ」って絡む。ベッドに連れてって横にならせた。酔っぱらってたってジョークばっか言って、ゲラゲラ笑ったら「きみが笑う笑い方、好きだ」って抱きつく。キスしてって言う。抱きたいって言う。

わたしはだめだって言った。デイビッドのことが好きで、それを大事にしたい。デイビッドとデートしてるのに、わたしはふたりの人とセックスなんか出来ない。そう言った。

カダーはデイビッドのことをもう言わないでくれって言って、わたしともう一度一緒にいたいって言って、わたしがカダーを傷つけて苦しめてるって言った。

カダーが好き。だけどわかってる。友だちでいるのがいい。最初にわたしを傷つけて苦しめたのはカダー。もうあんなふうに傷つきたくない。だから友だちでいられることを祈った。そしてわたしはカダーを失わなかった。ずっと友だちでいられる。傷ついて欲しくない。でも明日になったら今日言ったことなんかカダーは忘れてる。

ずっと同じ会話を繰り返してた。
もう4時になってて、「もう寝ようよ。明日ビーチに行くんだからあたし寝たい」って言ったら、カダーは寝られないって言った。ここにいられない、帰りたいって言った。酔ってるのが心配で止めたけど、カダーは聞かなかった。でも事故なんか起こす人じゃない。カダーはいつだって守られてる。

背伸びして抱きついた。気をつけてねって。ぎゅうっと抱き締めた。背伸びが苦しかった。あんなに大好きな背伸びのハグのはずなのに。


火曜日も水曜日も、カダーは電話をくれた。でも、ここに来たいって言うから、ノーって言った。昨日もうちに電話したってカダーは言った。わたしはデイビッドのところにいた。

デイビッドは昨日、ex-ガールフレンドの話をした。月に一回か二回、今でもどっちかのうちで一緒に食事する友だちだって。ふたりとも料理が好きだからって。だけど指触れることもないって。ex-ex-ex-ex-ex ガールフレンドの話もした。その人は今は結婚してて、デイビッドはその人のだんなさんと親友って呼べるほど仲がいいって。前にもその話は聞いてた。そういうの、よくわかんない。デイビッドがわたしを好きでいてくれてるのはわかる。こんなふうに会ってくれるのはわたしだけだってのもわかる。だけど。


このあいだ Dr. スターラーに聞いた。おもしろくて大好きなおじいちゃんドクター。
「お互いに好きで大事で、週に一度は会って食事したり映画観たりセックスする関係」って、シリアスな関係のことをそう答えた。「そういう関係なのにシリアスな関係じゃないって言われたら?」「結婚は考えてないってこと」「じゃあ、お互いに好きで大事で、週に一度は会って食事したり映画観たりセックスするけど、ほかに、セックスしないけど定期的に会う相手がいたら?」「それはセクシャル・コミットメントだな」「気持ちのコミットメントはどうなるの?」「気持ちは形にないものだからね、信じなきゃいけないんだよ」。


明日はデイビッドがうちに来る。


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天使のピン - 2003年07月08日(火)

今日も忙しかった。でも患者さんたくさん安心させてあげられた。たくさん笑顔をもらった。こんな日は忙しくても疲れない。シンドくても気持ちがいい。

お昼休みにジェニーとアジア食品のスーパーマーケットに行く。チャイニーズの梨を買いたかったのになくて、代わりに日本の茶色い梨を見つけて買った。ジェニーはコリアンの梨だって言ったけど、あれは絶対日本の梨だ。

それからドラッグストアに寄って、前に見つけて買いたかったピンを買う。
星条旗のドレスを着た、ちっちゃな天使のピン。

首からかけてる病院の ID ケースにつける。あの街の友だちがあの街を離れるときにくれたとてもきれいなガーディアン・エンジェルのピンをずっとつけてたのに、ずいぶん前に失くしちゃってた。

星条旗のドレスがかわいい。わたしを守ってくれるこの国限定ガーディアン・エンジェル。この国にいることに安心出来るように。

新規の患者さんが多くて少しだけオーバータイムしたけど、星条旗のドレスの天使のせいか、午後からも仕事が楽しかった。うちの近くのミドルイースタンのお店が並ぶ通りに寄って帰る。

このあいだカダーと一緒の CD を買ったお店でベリーダンスのビデオを探したけど見つからなくて、「今これしかないよ」ってお店の人が見せてくれた DVD を買った。パイレートのビデオなら安いと思ったのに、オリジナルのちゃんとした DVD で、少し高かった。


今日も暑い。クーラーどうしようかなって考えたけど、やっぱり節約してつけないことにする。それで天井のヘリコプターのプロペラみたいな大きなファンを思い出した。いつもここにあるのに「思い出した」ってヘンだけど。

涼しい涼しい。プロペラがくるくる回って涼しい。
引っ越しを手伝ってくれた最初の日、何にもないこのベッドルームの天井を見上げて「いいね、このファン」ってカダーが言ってくれた。つけてみようか、ってスイッチ入れて、何にもないお部屋の隅っこに座ってくるくる回るのふたりでずっと見てた。


デイビッドにメールした。「どうしてる?」って、それだけ。あれから話してない。「元気だよ。今ちょうどきみのこと考えてた」って返事が来る。嬉しかった。仕事が相変わらず大変みたい。邪魔しちゃいけないと思ってもう送らなかったら、しばらくして電話をくれた。

ほんとに、声がくたびれてた。でも明日会おうって言ってくれた。仕事のスケジュールが明日にならなきゃわからないから、明日になってから電話でまた話そうって。会えるのかどうかもわかんないのか聞いたら、「会うよ。少ししか会えないかもしれないけど」って。タンゴは、もうすぐデイビッドに会えるって思いながら踊るダンス。会えるのか会えないのかわかんないまま踊ると、会えないってわかってて踊るよりまだ上手く踊れない。そういうことが一度だけあった。

「会えるってわかってれば、それだけで充分だよ」って言ったら、「会うに決まってるだろ」って言ってくれた。

「週に一度会うだけなの? 週末は会わないの? あたしだったら淋しいな」。フランチェスカはそう言うけど、わたしはいい。デイビッドは音楽もテニスもソフトボールももうひとつの仕事も一生懸命で、忙しい。わたしも、大したことしてないけど毎日が忙しくなった。お互いに毎日が好きなことで忙しくて、でも木曜日には絶対に会う。絶対に会うことが決まってる。デイビッドは木曜日の夜を大切にしてくれる。


電話を切ってから、明日は水曜日だってことに気がついた。今日はもう寝るって言ってたからメールを送る。「明日じゃないよ。あさってだよ」って。

もう寝てると思ってたのに、すぐに返事が来た。「そうだった。先週も僕はおなじ間違いをしたね」。先週もデイビッドは、火曜日に「明日」の会う時間を決めようとした。

「おやすみ、子猫ちゃん」って書いてあった。

星条旗のドレス着た天使のピン、明日もうひとつ買いに行こ。



デュランデュランの日本公演、初日を選んで行ってきたあの人が電話をくれた。ものすごくよかったって、そんなの決まってるのに何度も言ってた。

ワールドツアー、NY には来ないんだよ。デュランデュランはベガスが好きなんだって。あの人が前に言ってた。「NY に来てたら見に来た?」って聞いたら「絶対行ってるよ」って言うから、「あたしには会いに来てくれないのにデュランになら会いに来るんだ」って、あのとき本気で拗ねちゃった。


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You will hear me - 2003年07月07日(月)

病院からディーナに電話したら、今日じゃなくて水曜日がいいって言われた。
水曜日はサルサのクラスがあるからだめ。木曜日もだめ。金曜日は今週は教会のグループ勉強会があるからだめ。土曜日も日曜日もだめ。

「何か聞きたいことがあった?」って言うから「ううん。長いこと会ってないから会いたくなっただけ」って答えた。

ちょっとがっかりして、ちょっとほっとした。

ディーナはもうすぐ赤ちゃんが産まれる。予定日は3週間後って言ってた。かわいいだろうな、ディーナの赤ちゃん。幸せ。幸せ。幸せだったあの頃がチラチラら頭をかすめて、自分の声が優しくなるのがわかる。体、気をつけてね。暑いからね。


昨日はクーラーかけっぱなしだった。だから今日は節約。
先生がバケーションで自分の国に帰るから、今月いっぱいベリーダンシングはお休み。CD かけて練習しようと思ったけど、全然上手く出来ない。暑くて汗ダーダーかくばっかで、音楽についていけない。明日ベリーダンスのビデオを買って来ようかな。アンナも休暇で一ヶ月ワイオミングに帰っちゃって、アンナのプライベート・バイブルスタディもお休みだから。って、ひとりでバイブル読まなきゃだめじゃんね。ビデオ買ってダンスの練習本気でやってる場合じゃない。でも、やる。


七夕の日にきみに特別の電話をするよって言ってたあの人は、昨日短い電話をくれただけで、何にも特別じゃなかった。メールするねって言ってくれたのに、それもまだ来ない。

昔、結婚したら七夕の日に女の子を産んで七々子って名前をつけようって思ってた。わたしの誕生日に次の女の子を産んで、三七子って名前にしようって思ってた。それで、もしも外国で暮らしたら「ナーナ」と「ミーナ」ってみんなに呼んでもらおうって。でも、ミーナは可愛いけどナーナは「婆や」って意味だからダメだなあ、困ったなあ、って悩んでた。

「あたしなんか年に一度だって会えない」なんて、もう言わないし思わない。
七夕さまのお願いは、あの人がいつも幸せでいてくれますように。ただひとつ、それだけ。


カダーが電話してくる。夜中の12時半に。「これから行くよ」だって。
今日は断固としてノーを言い続けた。デイビッドが好きなら僕とこんなふうに会ったらいけないじゃんって、そう言ったの誰よ?


神さまの声が少しだけ聞こえたような気がする。
- I will talk to you. I will speak to you. Listen to me with your heart. You will hear me in your heart.


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パワフルに - 2003年07月06日(日)

昨日、髪を切りに行った。
前に行ったターキッシュの、カダーに似た美容師さんがいるところ。
カダーに似た美容師さんが昨日はカットしてくれて、「前にも来てくれたよね? 僕がブロードライした?」って、覚えてくれてた。2インチ切ってって言ったのに、落ちて行く髪は2センチほどで、「2センチじゃなくて2インチだよ。それに、レイヤーもちゃんと入れてね」って心配になって言ったら「わかってるよ。心配しないで僕に任せてな」って自信たっぷりに言う。そんなとこまでカダーに似てる。

そこから地下鉄に乗って、今日はスタジオでやってるサルサ・パーティに行く。
2ヶ月前に初めてスタジオのパーティに行ったときは「くるくるくるくるターン」もまだ出来なかったし、チャチャも初めてで上手く踊れなかったけど、昨日はチャチャがかかってもくるくるくるくるスピンしながら踊れた。

July 4th のウィークエンドのせいか人が少なくて、休む暇もなく相手をさせられる。メレンゲがかかったから「やだ。メレンゲつまんない」って言ったら、「つまんなくないよ」ってパートナーの人がすごい素敵なステップ教えてくれた。それからメレンゲも楽しくなって、4時間ほとんどぶっ通しで踊る。ボーイフレンドと来てたスパニッシュの美人な女の子が、とても綺麗に踊ってた。スピンの切れがよくてきっちり止まって、ターンが綺麗。わたしは5回に1回くらいしか、あんなふうにきちんと出来ない。10回に1回かもしれない。

スタジオの外の階段のところからカダーに電話する。
水曜日に電話をくれて、「デイビッドは次の日に電話もくれたしメールもくれたの」って報告したら「だから僕にはもう電話をくれないの?」ってカダーは言った。昨日のお昼にはたいくつで電話してみた。マジェッドのお兄さんのいるアップステイトにふたりで行くかもしれない、行かなかったらシティに行くからダンスが終わったら電話して、って言ってたから。

アップステイトにいた。髪切ったんだよ、って、カダーにちょっと似た人が切ってくれたこと言ったら、「コーフンしただろ」だって。ゲラゲラ笑った。

デイビッドが先々週、「きみが僕をきみのアパートに一度も招いてくれないのがわからないよ」って言った。特別な理由なんかなかった。ただ機会がなかっただけ。だから「日曜日の夜にディナーをごちそうするから、うちに来て」ってメールを送ったけど、「July 4th の週末の最後の夜は最悪の渋滞になるから、今度にしようよ」って返事が来た。がっかりした。


誰でもみんな、自分をとてもちっぽけで弱虫で無能に思えて、ときどきそんな思いに打ちのめされる。だけどそういう思いを持つのはごく普通のことで、だからといって自分が非力だと思う理由はない。パスター・ピートは今日の教会のお話でそう言った。
You are very very powerful.

神さまと一緒にいるから、神さまのもとで、人はひとりひとり、とてもパワフル。


わたしは泣いてばかりいた。あの人のこともカダーのことも。いつも心細かった。この国にひとりっきりなことも自分の将来も。神さまと出会って、強くなれた。あの人のこともカダーのことも。ひとりで生きてることもひとりで生きてくことも。淋しかった毎日が楽しくなった。とてもとてもとても。それがパワフルってことなのかどうかは、わからない。だけど確かに痛みが消えて、「力いっぱい」生きられそうな気分だった。

なのに。

デイビッドに出会えたことが嬉しかったのに、木曜日の夜がただ楽しかったのに、今はこんなに不安になって、

また少し怖くなる。
ここでひとりで生きてくことまで。
ほかにどこにも行くとこなんかない。だから生きてかなくちゃしょうがないのに、ひとり置いてきぼりにされそうな、そんな気がする。わたしは今、自分をとてもちっぽけで弱虫で無能に思う。

わたしはこれからどうなるの?
神さまの力で、神さまの愛で、こんなわたしでさえほんとに very very powerful なのなら、答えが欲しい。今わからないすべてのことに。神さまの声がわたしに何を伝えようと、それをしっかり受け止めて怖がらずに前を向いて歩きたい。パワフルに。そうしたいから。


暑さでぐったり疲れて、うたた寝したらカダーの夢を見た。
「伸ばしたらこんなになったんだ」って、長い白髪のカダーがリクライニング・チェアにおじいさんみたいに座って、バイオリンを細い三角にしたみたいな楽器を真面目な顔して弾いてた。そっか、カダーはバイオリンが弾けるんだもんね、って、それはカダーじゃなくてデイビッドなのに、そう納得しながら不思議な楽器が奏でるゆるやかな旋律をわたしは黙って聴いていた。

起きて、公園に行った。
シェパードの子犬がボール遊びを飽きずに繰り返すのを、わたしも飽きずにずっと見てた。

帰ってから、気がついたらディーナに電話してた。明日会いにおいでって言われてしまった。
自分で神さまの声を聞きたいはずなのに。会いに行きたくない。行きたい。行きたくない。行きたい。行きたくない。


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なんでこんなに難しいんだろう - 2003年07月05日(土)

木曜日はタンゴ・クラブに行かないで、リンカーンセンターのメレンゲ・パーティに行った。うちのスタジオの主催で、先生においでって言われてたから。少しだけ踊ったけど、なぜか誘ってくれるのはオジイサンみたいな人ばっかりでつまんない。こんなだったらタンゴに行けばよかったかなって思った。何人かスタジオのサルサのクラスメートを見つけて、メレンゲはつまんないからサルサを踊ってた。

それから、お決まり通りにデイビッドに会いに行く。
ナターシャと夜の公園をお散歩して、真夜中の街をふたりで歩いて、ピザを半分コして、スーパーマーケットで買い物する。明日の朝ごはんのイングリッシュマフィンとたまごとミルクとウォーターメロンとストロベリー。わたしの好きなミューズリーのシリアルも買ってもらった。「僕と買い物するの楽しい?」ってデイビッドが聞く。楽しい。とっても。楽しくて大好き。

金曜日は July 4th のお休みだから、わたしはフロアのクラークにお願いして患者さん用の歯ブラシをもらって持ってってた。リンカーン・センターの外のパーティで踊って汗かいてたから、寝る前にシャワーを借りた。

デイビッドはおやすみのキスをしてくれてから、わたしを抱き締めて眠った。
何もしなかった。My girl only for sex じゃない証明かなって思ったり、シャワーを浴びたいって言ったのが「ノー」の合図と思ったのかなとも思ったしたけど、ちょっとだけ淋しかった。

朝ごはんはデイビッドが作ってくれた。お手伝いしようとしたら、「僕が作ってあげたいから」って手伝わせてくれなかった。わたしは July 4th のパーティを教会の仲間たちとロッカウェイのビーチですることになってて、デイビッドは何も予定がなかった。誘ったけどデイビッドは行けないって言った。デイビッドは神さまを信じてるけどジーザスを信じてないから。わたしの教会のウェブサイトが見たいって言うから見せてあげた。とてもいい教会だって言ってくれた。「行っておいでよ、きみひとりで。楽しそうじゃん」。そう言った。


多くの人にとって信仰はカルチャーで、それはわたしが日本人であることとおなじくらいに、生まれたときからその人の生活にも生き方にも考え方にも根ざしている。どこに住んでいようと、どこに移り住もうと、例え否定したくても、紛れもなく。そして信仰はとても個人的でもある。どれくらい信じてるかとか、どのように信じてるかとか、いつから信じてるかとか、どんなふうにその人個人に影響してるかとか。

わたしはジーザスを信じようとしている。そんなわたしをデイビッドは決して拒絶しない。むしろわたしのために喜んでくれてる。だけど、おなじ faith を持てないということがどういうことなのか、わたしは少しずつ分かりかけてきてしまってる。


わたしはデイビッドにくっつきまわって、デイビッドは「まだハグが足りないの?」って笑った。朝も起きかけのベッドの中でたくさんハグをくれたから。

デイビッドはやらなきゃいけない仕事を週末のあいだに済ませるって言って、わたしはうちに帰ってショーツと T-シャツの下に水着を着て、ビーチに出掛けた。帰る前にデイビッドはほっぺたとくちびるに優しいキスをくれた。ぎゅうって抱きついたら抱き締め返してくれながら、「きみはほんとに愛でいっぱいだね」ってデイビッドは言った。「もう一回キスして」っておねだりした。それからバイバイって手を振る。

愛でいっぱい。わたしはいつも愛でいっぱい。受け止めて欲しい。あなたの愛も受け止めるから。それだけなのに、そしてそれがすべてのはずなのに、わたしにはまだわからない。デイビッドの愛がわからない。なんでこんなに難しいんだろう。愛は、それを難しいと思ってる人だけにいつも難しい。


ビーチはものすごい人で、車を停めるところを見つけられなかった。ジョセフに電話したけど「バスか電車で来なきゃ、この辺は駐車場はもういっぱいでスポットも見つけられないよ」って言われた。それでもスポット探して探して、でも見つかんなくて、見つかんないから諦めた。諦めてジェニーんちに行った。ジェニーんちも July 4th のパーティに誘ってくれてたから。

合計3時間の運転とスポットが見つからないフラストレーションにくたびれ切ってしまってた。BBQ もほかのお料理もおいしくて、でもいつもみたいにたくさん食べられずにいたからジェニーのママが心配する。ホワイトワインをグラス一杯とワインクーラーを一本飲んだら、睡魔に襲われて眠ってしまった。もう11時になってて、ステファニーが2階のゲストルームのベッドで寝なさいって言う。少し横になってたらジェニーがやって来て、「帰るよ〜、あたし帰る〜」ってホンモノのヨッパライみたいに言うわたしに「もううちから出られないよ、アンタ。防犯アラームセットしたから」って、歯ブラシとバスタオルと T-シャツを貸してくれた。

ゲストルームのベッドの中からデイビッドに電話した。
従兄弟がほかの州から遊びに来て、一緒にディナーに行って、July 4th の花火を見に行ったって言ってた。わたしがビーチに行けなかったことを話したら、「なんでクリスチャンの人たちなのにスポット探すの助けてくれなかったのさ」って言われた。そうだね。確かにそうかもしれない。でもビーチに行っちゃいけないっていう神さまのメッセージだったのかもしれない。わたしはジェニーんちに泊まってることを話して、おやすみなさいを言って切った。

花火はとても素敵だったって言ってた。スマイルマークや花や、そういうのがたくさんあって、今までの中で一番素敵だったって言ってた。最近仕事が多くて疲れてるデイビッドが July 4th を少しでも楽しく過ごせたなら、わたしは嬉しい。



227歳のお誕生日、おめでとう、アメリカ。



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