狭 い 行 動 範 囲

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☆烏 - 2005年07月08日(金)
















深夜。
窓の向こうから、カラスの鳴き声が聞こえる。
夜だというのに、さっきからカラスは鳴き止もうとしない。
最初は、気にも留めなかったのに。
その声が大きくなってやっと気付く。
あぁ、さっきからカラスが鳴いているのか、と。
耳を澄ますと、家の近くで鳴いているカラスとは別のカラスが、遠くの方から返事をしていた。
どうやら、カラス同士で、なにか会話をしているようだ。

さっきから、カラス達の掛け合いが長々と続いている。
僕はなんとなく、その声に恐怖を感じた。
そもそも、こんな時間にカラスがこんなにも鳴いているなんておかしい。
なにか災害が起きる前兆ではないかと。
僕は頭の中で、大きな地震が起きて、家の中がめちゃめちゃになる想像をした。
静かに寝息を立てる家族達が、死に逝く様をも想像する。
嫌な妄想だ。

僕は窓に目をやった。
この夜の闇の中、肉眼でカラスが見えるわけではないけれど、声のする方を向く。
そして僕は思った。
お前達は、何を言い合っているのだろう。
お前達は、何を思って何を言い合い、生きているのだろう。
カラスという、嫌なイメージの強い生き物だって、人間よりも数倍真っ直ぐ生きているのだろう。
人間は汚れきって、動物の言葉さえ、理解出来ない醜い生き物になってしまったよ。

カラスは、なかなか鳴き止まなかった。


















...

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