詩のような 世界

目次


2002年02月28日(木) 蜘蛛と蝶



蜘蛛が

糸を紡ぎ巣を作る



哀れな虫たちは

次々と巣の主の餌食となり

その残骸は見るも無残な姿



美しく可憐な蝶が

蜘蛛の巣に巻き込まれた

蝶は慌て助けを求める



そんな蝶の姿に蜘蛛は見惚れていた

蝶が取り乱せば取り乱すほど

蜘蛛は蝶が愛しくてたまらなくなる



標的にされた蝶はあっけなく喰われた



最後に残った蝶の羽

純白の粒子を集めたように輝く羽

蜘蛛はそれをそっと抱き

涙を浮かべ口づけをした







2002年02月27日(水) two




紫の涙をさらさら流し

途方にくれていた私の手を

そっと取り「一緒に歩こう」と

小さく笑ってくれた


私はにこりともせず

黙ってついて行ったけど

本当は「有難う」と

泣きながら伝えたかった



陽だまりに生まれた怯える花を

君の中に見つけたよ

今度は私の流した涙が

その土を潤す番



光を注ぎたい







2002年02月26日(火) 異界の海



砂浜に座って


緑色の海を見つめていた


輝く不自然な水


森を彩るような色


静かに手招きしている


ああ あれは死の海だ


歪んでいるのだ何もかもが




この白く透けた砂は

きっと罪人の遺骨

異界から来た海が浄化したのだ

報われるように と












2002年02月25日(月) A human being



涙を流したり

思わず笑ったり

忙しい生き物 

人間という生物

しかしそれさえできなくなったら

空っぽなココロを持て余し

僕らはどこへ向かえばいいんだろう?


行き先を見つけることが困難で

無表情のまま歩いてゆくことで精一杯

時々立ち止まり振り返りながら

重い足で1歩1歩進んでゆく


暗いデコボコ道を手探りで

いつか出会うかもしれない笑顔を願いながら

歌うこともせず花に見惚れることもなく

ただ ひたすら


そんな僕を見守っていてくれる誰かが

どこかにいるかもしれない

空でもいい

そうしたらやっと僕は

青に染まった空に安堵するんだろう













2002年02月24日(日) grow up



いつからだろう

受け入れることがこんなにも難しくなったのは



いつからだろう

気づけば胸に小さなナイフを隠し持っていた



いつからだろう

誰かの笑い声さえ聞こえなくなった耳



いつからだろう

あの人を愛した僕を忘れたのは



いつからだろう・・・

夢でしか感じられなくなっていた





2002年02月23日(土) ブレーキ



貴方は私を自転車の後ろに乗せて

馬鹿みたいに一生懸命坂道を登っていた

私はお決まりの台詞「重くない?」を吐いて

貴方は「いーや重くないよ」と頑張る


「重すぎだよオマエ〜」って笑って欲しかった


腰に回した手には遠慮がちに力が入り

それが何だかとてもぎこちなくなって

自転車は風を切って走っていたのだけど

私の心にはブレーキがかかったままだった






2002年02月21日(木)



呼び出し音が鳴り響く

空気の糸が微かに震えている

受話器を取る手に力が入らない

「モシモシ…」



もしもし聞こえますか

助けて欲しいんです

もう痛くて痛くてたまらない

叫び出しそうなんです

この錆びた指は使い物にならないし

胸の中には涙すら流れません

人はなぜあんなにも強いのでしょう

1度希望を失っても

いずれは他の新しい泉を見つける
 
過去は去ったものとして

見切りをつけて歩いてゆく

でも僕はそうじゃない

過去から始まるのです

だとしたら僕は何者なのでしょう

どうしようもない出来損ないですか

救いをいくら求めても

自分から踏み潰してしまうような

そんな生き方しか知らないのです

もしもし聞こえますか

どうか返事をしてください

お願いだから

貴方さえも僕を見てはくれないの?



静かに受話器を置いた

聞き覚えのあるか細い声に

応えることはできそうもない







2002年02月20日(水) 化身



紙飛行機を作った

白い画用紙で作った

羽には赤いマジックで

十字架を描いた

ビルの99階から飛ばすと

飛行機は風に乗りながら

確実に落下していった



僕はこの世に生み落とされて

地上の空気を吸ったけど

どうしてだろう

いつも空に憧れていた

鳥を見るたび

僕の姿をそれに重ねては

天を埋め尽くす白い星へと

ぐんぐん近づいていく感覚を覚えた



アスファルトに裸足で立つと

足がぞっとするほど冷えていくんだ

そして息ができなくなって

最後はこのビルのこの階を目指す

真っ赤な十字架を背負った

僕の化身を抱いて…






2002年02月16日(土) 祈り



疲れた目をこすりながら

少女は地面に座り込んで

スカートに泥がつくのもかまわずに

待っていました

狼の群れを



銀の毛を揺らしながら

もうすぐやってくるというのに

笑いすらこみ上げてくる月の夜



間違ってるこんなこと

少女は舌打ちしたのだけど

立ち上がる気力すらなくて



どこからか聞こえる長い遠吠え

耳の奥から左胸へと落ちてくる

共鳴しそうになる口を慌てて塞いだ



金の巻き毛に結んだ細いリボン

そっとひっぱり取って投げた

まるで覚悟を決めるかのように



本当に欲しかったものは

生まれたばかりの雛を見守るような

優しい暖かさ



でも少女には

祈りを口に出すことが

あまりにも難しすぎたのです






2002年02月15日(金) オレンジジュース



ねぇ
オレンジジュースばかり飲んでないで
こっちも見てよ 僕の顔を見てよ


ねぇ覗いて
見透かすような眼差しで
君には僕を動揺させる力があるんだ
そっと でも鋭く甘い傷をつけてよ


僕が怒ってウーウー唸ったら
それは君を好きってこと
僕が曖昧に笑ったら
それは少し悲しいってこと


気づいて 
見透かすようにニヤッと
デコにデコピンしてくれるだけでいいよ


可愛い笑顔ばかりじゃなくて
涙をこらえながら唇噛みしめる君も
ちゃんと愛しいことわかってる?
君は僕に泣くなと言うけれど


君の涙引っ込んだら
僕もニヤニヤしながら
オレンジ絞ってあげるね
100%フレッシュジュース!







2002年02月06日(水) アルプスの女


渦巻く吐き気

気持ち悪い
気持ち悪い

一体何が出てくるの?
この身体の中から何が?



脳が揺さぶられる
この苦しみの行方はどこ
もう強いられたくない
覚えたくない見たくもない!


そんなに始めることが必要ですか
そうしなければ生きていけないと言うの
甘えることを知らないのが日本人なら
私はハイジの国へ参ります


ブランコをこいでこいで
空に投げ出されてしまおう



そのうち吐き気なんか忘れる







2002年02月05日(火) monotone



黒と白
危険な無彩色




黒は思ったより怖くない
闇は僕に優しいから
喪服は別れの象徴だけど
見送るために生まれた黒



白は思ったより恐ろしい
霧は存在を隠すから
もしも全てが純白に染まったら
僕たちの目は光で焼かれ
独りぼっちになってしまう



黒は危険信号を出すけれど
白は黙って人を狂わす


白は何の感情も持たない
惑わせて静かに笑うのみ






2002年02月01日(金) 白いドレス




集めて散らして
集めて散らして

カラッポになってはまた求めて
繰り返し繰り返し



願いは有るようで無いから
君の手で私の首を絞めて
清らかな身体を抱きしめながら
2人は繋がってしまおう


意識は遠い丘へ
黄緑の中の小さな赤
薔薇を頂戴
私のために


ドレスは脱がさないで
白く輝くレースの裾を
ずっとずっと追いかけていて
君の幼い笑顔は
心地良い破滅へと私を導く


さぁ首を絞めて
君は好きなことをして
好きな所へ行ってしまえばいい
失うことに動揺しないように
私は消えるから


さぁ早くして
でないと私が君の喉に
刃を向けてしまいそう













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