今年は夏が暑過ぎて、しかも暑さが長く続いたせいでしょうか。 いつもの年より金木犀が咲くのが遅かった気がしました。 花もいまいち寂しいかな。 いえ、それはうちがほったらかしにしているせいか(^^; でも、とりあえず今年も咲いてくれて、いい香りを放ってくれています。 先日の雨風で、早々と散り始めてしまっている感じですが。 こうして秋は深まっていくのですね。 次は紅葉、さて今年はどこかに見に行けるかなあヽ(´・`)ノ
映画化されると知った時から、観たいと思っていました。 そして、ちょうど文庫化されたばかりだった原作を読みました。
平安時代から使われていた暦は、中国を基準に作られ、また800年以上の時を経て、江戸時代にはズレを生ずるようになっていた。 日本初の改暦事業を任されることになった安井算哲。 囲碁の名家に生まれ、徳川将軍の御前で碁を打つ身分でありながら、星の観測や算術に夢中になってしまう算哲が、会津藩主・保科正之に見込まれ、新しい暦を作ると言う大事業を手掛ける。 日本各地で北極星を観測すると言う旅から始まり、暦作りのプロジェクトチームでの数知れない観測や計算、そこから割り出された日蝕や月蝕を予測することでの今までの暦との戦い、読み違いによる失敗、挫折・・・ 天地の理を見極めることは、どれほど果てしないことなのか。
けれど、原作を読むと、これがなんともうらやましく思えてきたものです。 どれほどの苦労があっても、算哲と言う人物は幸せそうに見えたのです。 星が好きで、算術が好きで、観測をすること、そこから天の運行を導き出すことに夢中で、子供のような純粋さを持ち合わせている。 自分の力すべてを注ぎ込めることがあるのは、きっと幸せなのだと思う。 彼を取り囲む人々もまた暖かく魅力的です。 共に観測に赴く人、大きな後ろ盾となる人、碁打ちのライバル、算術の天才、そして妻となる女性。 皆、自分なりの信念を持ち、貫いている。 映画でも、それぞれ適役だったと思いました。
算哲と言う人は、大人物から見込まれるだけの才を持ちながら、なんと言うか、妙に透明な感じがして、自分の才に無頓着で欲がない。 淡々としていながら、目の前の出来事に常に新鮮に驚くような感受性もいいですねえ。 算哲役の岡田准一くん、物語前半はいつも「あっ」と驚いては走りまわっているようなところが、かわいかったです(笑) 奥さん役の宮崎あおいさんもかわいかった。原作では、時に算哲を叱り飛ばすような、おっかない(笑)ところもあるのですが、映画ではしっかり者でかわいい女性でした。
私が原作で好きだったのが、算哲が、これがすべての始まりだったと思い出す幻の音。 神社の境内に数多掛けられた絵馬が、からんころんと鳴る音。 その絵馬の中には、算術が記されたものがあり、絵馬の中で問題を出し、解けた人が答えを書き込むと言うもの。 算哲は、そこですべての問題に明察なる答えを出していた算術の天才、関と言う男を知り、ひたすら憧れるのです。 関との縁は、その後の暦作りにも影響していきます。 映画で、実際に絵馬の鳴る音を聞き、いい音だなあと思いました。
そして、原作を読みながら、あれこれ想像してもしきれなかった天文観測のための装置。 大掛りで、しかも作業はとても綿密。気の遠くなるような記録や計算。 天文と言うものが、どれほど膨大な学問なのか、とにかく感嘆です。
観終わって、清々しさが残りました。 久しぶりにいい映画を見たなあと言う感じ。 算哲が味わったのであろう幸せな気持ちが、ほんわかと伝わった気がしました。
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