泣き虫

サッカージャーナリスト金子達仁(我が家ではポルシェおじさんと呼ばれている)による,格闘家高田延彦の格闘人生を描いたノンフィクション。野球少年だった高田延彦が,新日本プロレス→UWF→新生UWF→Uインター→PRIDEとプロレス/格闘技団体を移ってきた過程がリアルに描かれている。特に前田日明や引退試合の相手となった田村潔司との因縁浅からぬ関係についても明確に高田本人の口から語られている。

そして,この本には今までのどんな格闘本,プロレス本にも書かれてなかった衝撃の事実が高田の口から語られている。それは「リアルファイトのプロレス」として格闘技マニアから熱狂的な支持を受けていたU系の団体でも,試合は"全てプロレスだった"(つまり勝敗は決まっていた)ということである。これはU神話,高田神話,ひいては「レスラー最強神話」の崩壊にもつながる爆弾発言である。高田はなぜ今このことを公にすることを選んだのか。いやーオレまじ呆然としたよ。
2003年11月26日(水)

海洋堂クロニクル

食玩(お菓子のおまけ)のチョコエッグでその名を世間に轟かせることになった海洋堂の歴史を追いかけたノンフィクション。元々プラモデル屋だった海洋堂に様々な才能が結集して,やがて爆発に至る過程が描かれている。海洋堂はガレージキット(少数しか作られないクォリティも価格も高価なプラモデルのようなもの)の製作販売をメインにしてきた会社であり,筆者はガレージキット業界の人間(らしい)。ときには感嘆しときには反発し,ある一定のパッションを保ちながら近くから海洋堂を見つめている。本人によれば,金子達仁のサッカーノンフィクションに影響されたとのこと。

綴られる物語もまた破天荒なのだが,それによりも山ほど掲載されている海洋堂作品の質の高さには正直驚いてしまう。写真を多数使ったせいで(?)本の価格が高いのがたまにきずだが,ボリュームたっぷり,本当に海洋堂を満喫した気になる一冊。
2003年11月23日(日)

裁判長 ここは懲役4年でどうすか

北尾トロの裁判傍聴記。といっても特定の事件をおいかけているわけではなく「裁判傍聴」をひとつの趣味として,いろんな事件を膨張しまくった記録である。これがまためっぽう面白い。普通のオヤジの普通の事件もあれば,救いようの無い事件,オウムのような大事件,様々な事件があり,筆者は被告に同情したり,元鉱区に感情移入したり,女性検察官に萌えたり(けっこう美人が多いとか)しながら,事件の概要をつづっていく。

社会科見学で痴漢の裁判を女子高生の集団が傍聴していると,検察も裁判官も大張りきりになったり,傍聴を趣味として何十年も続けている「傍聴マニア」の存在が明らかになったり,ヤクザの事件の傍聴にいって怖かったり,いやまあオモシロすぎです。「ビギナー」ファンの人はぜひどうぞ。
2003年11月20日(木)

科学書をめぐる100の冒険

私がこよなく愛する「本の雑誌」は,あらゆる分野のオモシロ本を紹介してくれるのだけど,文系スピリットにあふれる本なので,唯一科学モノに関して空白がありました。ところが1年程前?に私の尊敬する進化論科学者佐倉統をホストにして,コラムニスト田端到が様々な科学書について話を聞くという連載が始まり,それを一冊にまとめたのがこの本でありまーす。

科学書には解説書から読み物や暴露モノまで範囲は広いのだけど,比較的マジメ本を中心に取り上げられている感じですね。けっこう読んでいるつもりだったけど,まだまだ面白そうな本がたくさんあるってことを知ることができて(科学書はどマイナーな出版社から出ることがあって,なかなか目に触れないし),また楽しみが増えたというところですか。
2003年11月10日(月)

ま2の本日記 / ま2