蹴球戦争

馳星周の「蹴球戦争」読了。相変わらずといえば相変わらずで「この国(日本のことね)のサッカーはひどい。これはサポーターと協会とマスコミのレベルが低いからだ」という持論は止まりません。でも日本と韓国で開催されたW杯を十数試合みての観戦記なので,リアルタイム感がいいですね。もうとにかく悪口ばかりなんだけど(スタンドでタバコが吸えないから怒るというのはどうか思うヨ)。W杯期間中は韓国サッカーに対してはかなり辛辣な論調が多かったようだけど,馳星周は韓国サッカーを絶賛している。これもまた面白い。ときどき出てくる金子達仁が笑える。
2002年08月25日(日)

暗号化

スティーブン・レビィの「暗号化」をようやく読了。サイモン・シンの「暗号解読」と合わせると,暗号に関する歴史と技術と人物について,だいたい抑えることができます。スティーブン・レビィは「ハッカー」の著者でもあり,テクノロジーと人間のかかわりに深い関心を持つライターです。

「暗号化」では"公開鍵暗号"と呼ばれる,現在広く使われている強力な暗号技術の話が中心です。アメリカにはNSAという暗号技術を専門に扱う政府の組織があって,暗号に関しては理論を発表したり関連特許が使えない時代が長かったとはね。これがつい二十年ぐらい前の話とは思えない。暗号理論の研究者はみんなNSAに雇われてしまうので,民間ではろくな研究もできなかったわけですが,それが公開鍵暗号の発明によって崩れていくわけです。公開鍵暗号は在野の研究者により発明されたので,この技術の公開を巡り(インターネットが深く関わっている),政府と民間の戦いが始まります。

「犯罪者が強力な暗号を手にしたらどうなるのか」という政府の主張と,「国民は自分のプライバシーを守る権利がある」という民間の主張。ドラマの背後にいる人間を中心に描いていくのはスティーブン・レビィの得意技ですなあ。
2002年08月23日(金)

遠き神々の炎

ヴァーナー・ヴィンジの「遠き神々の炎」読了。厚めの文庫で上下巻なので通勤読書では,けっこう時間がかかった。銀河の片隅で遠い遠い昔に封印された邪悪な意識体を復活させてしまい,こいつが銀河全体を危機に陥れるという,これだけ聞くと昔のSFみたいな話です。

魅力的なのは,銀河は中心から外側にむけて大きく3つのエリアに分かれ,それぞれのアリアで空間の性質が異なるという設定でしょう。中心に近い「無思考深部」では,物質は高速に移動できず,コンピュータもまともに動作しない。中間の「低速圏」(地球もここに含まれる)では光速の壁がありコンピュータは高度なアルゴリズムを実行できない。外側の「際涯圏」では超光速移動が可能で,コンピュータも賢いのですんごい文明が発達している。いやまあデタラメといえばデタラメな設定なんだけど,これが面白いですね。文明は外へ外へと向かうわけです。で銀河の外側は「超越界」で,上位際涯圏に到達した文明が"超越化"した"神仙"の住む場所になっています。

邪悪な意識は際涯圏を浸食して,超越界まで脅かすようになります。そして邪悪な意識と一緒にその対抗策が封印されていたのでないかという推測の基に,邪悪君の封印を解いたところから脱出した宇宙船をめぐって大活劇が始まるわけです。なぜか主人公は女性と二人の子供と集合意識を持つ犬型宇宙人とスケボーにのったワカメみたいなやつ。一体どういう話になるんだかと思いつつガンガンと読めてしまう。キャラがちょっと類型的なのが気に食わないけど,これはストーリーが複雑なのをカバーするためかな。
2002年08月20日(火)

NHKへようこそ

ひきこもり小説「NHKへようこそ」読了。実に不思議な小説ですね。表紙なんかのイメージからSF的な展開(「ワダチ」とか。古いか)をなんとなく予想していたのだけど,全然そうではなかった。

主人公はひきこもりの大学生。唯一の友人が同じアパートの隣に住む二次元ロリの男。ある日新興宗教の勧誘にやってきた岬ちゃんという少女が,主人公のひきこもりを治すと宣言するのが始まり。主人公の行動があまりに馬鹿で笑ってしまう(それもインターネットを駆使した今時の馬鹿なのがよい)んだけど,それだけといえばそれだけの小説。でもけっこうおもろい。評価に困るね。
2002年08月17日(土)

ま2の本日記 / ま2