ウィニング・ラン

マイロン・ボライター・シリーズ最新作「ウィニング・ラン」読了。あまりに面白すぎて一気に読んでしまった。スポーツエージェントのマイロン,相棒の大金持ち(兼平気で人を殺すピチガイ)ウィン,共同経営者のエスペランサ(元美人女子プロレスラー),受け付けやってるビッグ・シンディ(元巨大女子プロレスラー)という面々はいつもの通り。

毎回異なるスポーツを扱うこのシリーズですが,今回はマイロンのクライアントがらみの事件ではなく,ひとりの病気の少年に対する骨髄提供者をめぐるおはなしです。このシリーズでは,必ずマイロン組のだれかの個人的問題が大きく関わってくるんだけど,今回はマイロン本人の事情で,少年を助けるために走り回ることになります。まあリーダビリティは抜群。あっと言う間に読み終わってしまう。

あとがきは北上次郎で,「目的は手段を肯定するか」という,ハードボイルド的ジレンマに対する面白い論評があります。
2002年04月30日(火)

獅子の門(朱雀編)

「獅子の門(朱雀編)」読了。なんと十数年ぶりの続編らしい。全然そういう気がしないのは,つい先日読んだ漫画版の「餓狼伝」に同じ登場人物が出てくるのであった。このへんの仕掛けについてはあとがきに書いてあります。

「獅子の門」「餓狼伝」といった,スーパーナチュラルな要素を省いた純粋格闘技のシリーズは,現実の格闘シーンに対応しながら進化してきている。当初は第一次UWFにおけるスーパータイガーvs藤原喜明の戦いにおけるテーマ「蹴りと関節はどちらが強いか」から始まり,総合格闘技ブームにおいて「打撃と組み技のどちらが強いか」と形を変え,それがグレーシー一族の登場によって「マウントポジションの攻防」と変質してきた。げつんじつの速度においつけなくなっている時期もあったが,「獅子の門(朱雀編)」では見事にモダンな格闘小説になっていると思う。しかし,久我重明,キャラたちすぎ。
2002年04月18日(木)

エンディミオン

大河SF「ハイペリオン」シリーズの第三部「エンディミオン」読了。文庫本で上下2巻が短い短い。もっと読みたいっすー。ハイペリオンシリーズは,とにかく物語がシンプルで力強い。長大なストーリーの中で,徐々に謎が明かされていくスリルも最高ですな。この物語の強さが,ハイペリオンシリーズ最大の武器でしょう。

「エンディミオン」は,シリーズの中でもシンプルなストーリーで,基本は追いかけっこ。逃げるは時間の墓標を抜けて過去からきた少女にして,キース・サイブリッドの娘アイネイアー。追いかけるは銀河を支配するキリスト教会"パクス"の神父大佐デ・ソヤという構図で,とにかく飽きさせないっす。アイネイアーがいくところ,前作で滅びたはずの超AI「テクノコア」の遺物である転移ゲートがよみがえり,星から星へと逃げ回るんだけど,追いかけるデ・ソヤの乗る大天使級宇宙船は,乗員の生死を無視した超光速の加速を行うというブツ。すさまじい加速で押しつぶされた乗員は,「ハイペリオン」にも出てきた忌まわしき"聖十字架"によって蘇るというおそろしい仕掛けになっているのであった。とまあ,こんな話が満載。

SF版「隠し砦の三悪人」って感じかなあ。魔神シュライクも健在ですが,これにタメを張る怪物まで登場して,いつまでも読んでいたい小説でっす。
2002年04月16日(火)

書斎曼陀羅 (1) (2)

「書斎曼陀羅」の1巻と2巻を読了。いろんな作家や編集者や学者の書斎を訪ね,それをイラストにまとめたルポ。イラストと文は「有栖川有栖の密室大図鑑」の磯田和一です。

まあ,いろんなすごい書斎がでてきますが,驚いたのは京極夏彦の書斎が40畳!あるということと,実はここに移ったのは最近で,その前は6畳の部屋にあの本がほとんど入っていた(40畳に移ってからはあまり本は増えていないという..)という事実ですな。なにしろ「匣」を書いたころは,まだ6畳だか4畳半の部屋に住んでいたらしい。うーん。まさに京極ドリーム。

他にも「床に本を敷きつめてある部屋」「磯田和一が太っているので通過できない部屋」「ストーブを置く場所がなくて,コンロで暖をとっている部屋」などが登場するのであった。
2002年04月02日(火)

ギャンブル放浪記

「ギャンブル放浪記」読了。阿佐田哲也のギャンブル関連のエッセイや戦術論や観戦記をピックアップしてまとめたもの。

阿佐田哲也は何を読んでも面白いのだけど,やはり麻雀の観戦記が面白いかなあ。「これが俺の麻雀」からの抜粋はなかなか懐かしかった。阿佐田哲也はギャンブルにおけるツキの存在を信じているので,ワタシはちょっと立場がちがうのだけど,それでも実に説得力があるよね。当たり前か。競輪の入門エッセイも,まったく知らない世界のことだったので興味深いものがありました。なんでノロノロ走るんだろうとか思ってたもんね。おれ。
2002年04月01日(月)

ま2の本日記 / ま2