サムライ・レンズマン

まさかレンズマンの新作が読めるとはねえ。作者はブラックロッドシリーズの古橋秀之とくれば期待しないわけにはいかない。「サムライ・レンズマン」という題名もいいね。

主人公はシン・クザクという盲目のレンズマン,武器は日本刀で,アルタイル柔術(ははは)の達人でもある。お懐かしいキムボール・キニスンも出てくるし(リゲル人とかも出てきます),超化学兵器にはいちいち動作原理が説明されるE.E.スミス節も踏襲していますなあ。レンズマンなんだから主人公はもっと強くてもいいくらいかな。
2001年12月25日(火)

煙か土か食い物

「煙か土か食い物」読了。傑作。ミステリノワールとかいう不明なジャンルらしいが,読んでみると「ボビーZの憂鬱」とか思い出す。でもちゃんと謎があるから,オフビートなミステリですね。

主人公のキャラがすごすぎ。奈津川四郎はアメリカでERの医師をやっているのだが,母親がけがをしたという知らせを聞いて帰国(これが福井ってのがまた変)。母親は実は連続主婦生き埋め犯に襲われたと知り,独力で犯人探しを始める..って書くとなんだか普通だけど,この四郎君は新本格ミステリ史上最強のキャラといってもいいっす。謎はがんがん解く。暴力はふるいまくる。女とは寝る。捜査には介入しまくる。これがリズム感あふれる一人称の文体で語られると快感快感。で,兄弟である一郎,二郎,三郎もすげーキャラであることが分かり,父親も祖父もすげー。どうなってんの奈津川家。

メチャクチャな謎が四郎の力技で解決していくんだけど,ラストも盛り上がります。この小説だけは続編は無理だろうと思ったのだけど,すでに出ているらしい。おなかいっぱいだから,続けて読めないっすよ。2001年のミステリではベスト1。
2001年12月20日(木)

煙の殺意

『煙の殺意』読了。ずっとずっと昔にハードカバーで読んだけど,構成が違う気がするので,文庫で新刊になったのを気に読み返してみた。これ読むと,ますます大阪圭吉の悪いところが見えてくるなあ。

泡坂妻夫の短編は,短いながらも魅力的な謎があり,印象的なキャラがいて,読者を引き込むプロットがあり,合理的で意外な解決がある。短編推理小説のお手本ですね。表題作『煙の殺意』には,異常にテレビが好き(殺人事件の現場でデパート火災の中継を見ている)な刑事と,異常に死体が好きな検死官が出てきて笑わせながらも,そのキャラがまた伏線になっているあたりが実に素晴らしいです。
2001年12月10日(月)

『銀座幽霊』

『銀座幽霊』読了。いやお久しぶりの大阪圭吉。大学のころ雑誌「幻影城」で「三狂人」を読んだときはかなりショックを受けたんだけど,今読むとなんてことない話だななあ。

この人は決定的にキャラが弱くて,プロットにも凝らず,事件をそのまま投げ出して,すぐ解決篇といった感じの短編ばかりですね。後半(この本では発表順に短編が並んでいる)の方になるとトリックがなくなってくるのに比例するように,話が面白くなる気がする。ミステリがつまらないのはトリックがあるからだ説。
2001年12月08日(土)

『ひきこもりマニュアル』

『ひきこもりマニュアル』を読む。別にひきこもりになる予定は無いが,クソゲーハンターこと阿部広樹が書いているので買ってみました。マジなのかふざけているのかよく分からないが,ポジティブで正しいひきこもりを目指したマニュアルらしい。いやしかし「間違ったひきこもり」の実例があまりにすごくて,そっちばっかり読みたくなっちゃうな。
2001年12月07日(金)

ピュア・ダイナマイト

『ピュア・ダイナマイト』読了。ナニをとち狂ったかダイナマイト・キッドの自伝を出す出版社があるとは。しかもエンターブレイン。よく分からん。

ダイナマイト・キッドは,20年ほど前に日本で活躍したプロレスラーで,大ファンだったんですよー。端正な顔立ちに,長い金髪,小柄だが鋼の肉体,そしてブチ切れたような過激なファイトが売りでござった。初代タイガーマスクと名勝負をくりひろげたけれど,後に全日に移籍したため,自然と見なくなってしまった。そのキッドの自伝なんだから読まないわけにはいかない。

これを読むとキッドって,ひどい悪ガキというか悪ふざけが好きなのね。トラブル・メーカーでもある。おまけにステロイドとクスリをやりまくり。最後には心臓発作を起こし,ステロイドの副作用で歩行困難になってしまう。まさにザ・自業自得。とんでもないやつなんだけど,読んでいると感動するんだよなあ。それはやはりキッドのプロレスにかける熱意のためでしょう。勝ち負けではないところでプロレスをとらえているのもいいし。日本をやたら誉めているのは翻訳されるのを意識していたんでしょうか。引退直後の肉体の衰え方は衝撃的ですな。うーむ。
2001年12月03日(月)

ま2の本日記 / ま2