ひとりびっち・R...びーち

 

 

二枚舌 - 2001年09月25日(火)

 実りの秋、食欲の秋、味覚の秋。
 天高く馬は肥えても、牛にとってはかなり危ない今年の秋。

 有明海の海苔のときにも感じたことだけど、農水省って、かなりアタマが悪いような気がするのは私だけだろうか?

 「肉骨粉」で、本来草食動物の牛に、病気の仲間の死骸を共食いをさせてたなんて、牛が神様のインド人(ヒンドゥー教徒)が聞いたら、びっくりじゃ済まないだろうな。

 で、ふと思ったのだが、神様を食べちゃう国や国民に対して、「報復」や「制裁」を考えないのって、かなり寛容なんじゃないだろうか。

 と、時事噴飯モードに突入するのは穏やかじゃないので、話を戻そう。

 そう、味覚の秋である。

 ここのところ、めっきり手抜きとマンネリが目立つ母に代わって、料理を担当することが多くなった。

 出盛りの栗で、栗ごはんを炊いたり、里芋の煮物をしたり、男爵イモでコロッケを作ったりしている。

 安価な旬の素材を生かし、添加物やグルタミン酸ソーダや精製された塩や砂糖を極力使わず、薄味で健康的な野菜中心の料理。
 これは、喘息で病弱だった娘の成長期に勉強して、徹底して行っていた調理法である。
 いわば昔取った杵柄であるからして、健康的な食生活について語れと言われれば、うるさいほど語れるかもしれない。

 しかし、である。
 私は高度経済成長期の子どもである。
 チクロたっぷりの粉末ジュースを飲み、インスタント食品の発展と歩みを共にしてきた。
 弟と半分ずつではなく、コーラを1本全部飲んでみたい、とか、サッポロ一番やグレープフルーツを初めて食べた時に、「こんなおいしいものがこの世にあったのか!」と思って育ってきたのだ。

 だから、「食」に関しては、私は完全に二枚舌である。
 
 美食や健康食を知識として語れて、調理もそこそこできるというのが「表」の舌ならば、秘められた「裏」の舌こそ、私の本来の味覚であろう。(大げさ)

 さて、その裏ベロだが、とにかく健康に悪いものをこよなく愛している。

 人工のメロン香料がばっちり効いているメロンパン。
 これを「ごはんの前なんだから食べちゃダメよ!」という時間帯にこっそりと食べるしあわせ。

 コンビニの肉まん。
 真冬の帰り道の買い食いが最高。
 歩きながら、時には車を運転しながらこれを頬張るのは、まさに至福の時である。

 カップ麺。
 夜更かし三昧をした深夜、「ああ、こんなものを食べてはいけない!」と、背徳的な気分に浸りながら啜るスープは、骨までしみる禁断の味だ。
 午前3時に友人が買ってきてくれたカップ麺ほど美味しいと思った食べ物はいまだかつてない。
 
 ここまで書いてしまうと、カミングアウトをしたような気分で、実に爽快だ。

 不美食バンザイ!
 




 


...

幻のデジカメ - 2001年09月14日(金)

 夕餉の食卓、ふと窓際の棚に目をやると、カメラの箱がある。
 どうみても新品のようだ。

私:「カメラ買ったの?」
父:「う〜」

 父は日本語が苦手である。(いかなる言語も苦手なのだろうが)

私:「何で?」

 確か、実家にはカメラはいくつもある。

私:「普通のカメラなんでしょ?」

父:「デジカメだっ!」

 ・・・・・・・

 「あ〜」と「う〜」を解読できる母の通訳によると、知人のPENTAXのOBに薦められるまま、デジカメを買ってきたということが判明した。

 ふむ。パソコンに触る気もない父が、義理で買ってきたデジカメだから、びー子か私に使わせるつもりなのか?
 それにしても、前代未聞の気前の良さだ。怪しい、怪しすぎる。 

 が、しかし、最新機種だというデジカメの魅力には逆らえない。
 食後に念入りに手を洗い、パリパリとカメラの梱包を開いた。
 
 PENTAX Optio 330
 コンパクト3倍ズーム 334万画素 CCD搭載
 をを! 念願のマニュアルモードも、動画もある!

 私はいそいそと梱包内容をチェックし、リチウム電池を充電器にセットした。

私:「まず、充電しないと使えないんだよ〜♪」

父:「あ〜」

私:「記憶媒体はコンパクトフラッシュか・・・あれ? 同梱されてないよ」

父:「う〜」

私:「な〜んだ別売りかぁ、ケチだね〜PENTAX。明日買ってこなくちゃ写せないや、残念、残念」

 と、そのとき、カメラ本体を今にも壊しそうな勢いでいじくりまわしていた父が言った。

父:「おい、フィルム・・・みたいのはどこに入れるんだ?」

私:「へ?」

父:「だいたい、おまえたちに使わせるんじゃないんだ! 俺が使うんだ〜っ!」

 一瞬フリーズしかかったが、私は笑顔で退場した(こめかみは多少痙攣していた)。

 ・・・やっぱり。
 
 父のデジタルに対する認識を甘く見て、とんだぬか喜びをしてしまった。
 おNEWなデジカメは幻だったのだ。

 デジタルカメラ=フィルム(みたいなもの)を入れて写す新型のカメラ

 現時点で、そう思ってフィルムの挿入口を探している父が、近い将来デジタルカメラの仕組みを理解して使いこなせるようになる確率はほぼ0%である。

 なぜなら、父は家電製品の取扱説明書を自力で読めたためしがないし、私の説明は意地でも聞かないからだ。
 これまでに父の犠牲になってきた、数々の電器製品や機械工具の姿が、走馬灯のように目蓋に浮かび、胸が痛む。

 残る希望はただひとつ。
 こうなったら祈るしかない。

 どうか、壊してしまう前に飽きてくれますように・・・




...

息つぎ - 2001年09月13日(木)

 「すぴぴ〜 すぴぴ〜」

 まったく、健康なヤツは眠りが違うよなぁ・・・と、娘の寝息を聞きながら、不愉快な半覚醒状態で寝返りを打つ。

 「きりきりきり・・・」

 おや? 珍しく歯ぎしりしてるぞ。
 乳歯の頃はうるさいぐらい歯ぎしりして、ちょっと心配してたけど、永久歯になってからはほとんどしなくなってたんだけどなぁ。

 「ん・・ぱぁ〜〜〜っ!」

 ちょ、ちょっと待て、今のは何だ?

 「ん・・ぷ・ふぁ〜〜!」

 こいつめ〜、今夜はやけにうるさいぞ。何やってんだ〜?
 やんなっちゃうなぁ・・・ふうぅ・・眠れにゃい。

 ・・・・・・・

 一夜明けて。

 「おまえ、ゆうべ歯ぎしりしてたよ〜 うるさかったよ〜」
 
 「ふ〜ん、だ」

 「いやぁ、健康なヤツって、よく眠るよね〜」

 「あったりまえじゃん、若いもん。おかーさんの不眠症なんて、つきあってらんないね〜、へへ〜ん、だ」

 「そういえば、“ん、ぱぁ〜〜〜っ!”って何だ?」

 「へ?」

 「“ん、ぷふぁ〜〜〜っ!”って、ゆうべ、寝ながらやってたんだよ」

 「そういえば・・・プールで泳ぐ夢見てた〜」

 「どぅわ〜! あれは“息つぎ”だったにょか〜〜っ!」

 大爆笑。

 もしかして、私は“息つぎ”を忘れているから寝苦しいのか??
 今夜あたり、意識して“息つぎ”をしてみよう。
 3ストロークで1ブレスで大丈夫かな?

 “息つぎ睡眠法”

 成功したら、画期的な不眠治療法として、『いきいき』とか『壮快』とか、健康雑誌に投稿できるかもしれない。(むり)

 

 

 
 

 


...

10万馬力 - 2001年09月06日(木)

 自分の予定というものが一切ない生活で、曜日を確認する手段として母のお出かけがある。
 何かが憑依しているとしか思えないスケジュールで、毎日どこかに何かを習いに行く。

 その日は雨の火曜日、朗読の会がある日だった。
 中途半端な距離の、駐車場のない公民館まで、私はお抱え運転手として迎えに行った。

 母を乗せて走り出すと、少し先の急な坂道を、急ぎ足で登っていく女性の後姿が見えた。

 「ほらほら、あれが先生よ」
 
 「へぇ〜」

 「ほら、何て言ったっけ、ペタペタっていう・・・
  そうそう、ミュールよ、ミュール
  こ〜んなに(運転中だから見られないって)
  ヒールの高いの履いて、颯爽としてるのよねぇ」

 「ふぅ〜ん」

 「私とトシは変わらないのよぉ、あんなサンダルでよく歩けるわ〜」

 「だって、10万馬力だもん」

 「へ?」

 「だって、ほら、アトムでしょ?」

 朗読の会の先生は、鉄腕アトムの声優さん、清水マリさんなのだ。
 
 アトムで育った世代としては、ミュールどころか、空を飛んでいないことが不思議、というのが偽らざる心境である。
 
 
 


 

 

 


...

にっちとさっち - 2001年09月01日(土)

 また岩波にやられてしまった。

 以前にも書いたことがあるけれど(2/25の「くびったけ」)、岩波文庫の中からはらりと出てくる栞に、不意を食らって脱力するのは何度目だろう。
 岩波文庫には、1冊に1枚、親切な栞が挟まってくる。
 他社の文庫も同様だと思うが、岩波の場合、表には「広辞苑」の宣伝、裏には“言葉の道草”という、「広辞苑」から抜粋した項目をアレンジした文章が印刷されている。
 誰がどういう基準で選んで抜粋するのか、そして、どういうシステムで挟み込む作業が行われているのか、一度お客様相談窓口(そういうセクションがあったとして)に尋ねてみたいぐらいだ。

 今回はゴーガンの『ノア・ノア』の間に潜んでいた。

 ・・・・・・・ 

 にっちもさっちも

 借金で首が回らない。不況と円高のダブルパンチ。「にっちもさっちも行かない」のは、例えばそんな時。『広辞苑』によれば、「二進も三進も」と書いた。そろばんの用語から来た語で、「二進(にっち)」「三進(さっち)」は割算の九九の語。どう計算してもうまくいかない意から、金銭の融通がきかないさま、また一般に身動きがとれないさまを言う。

 ・・・・・・・

 そうだよ、その通りだよ、でも、何でお前に言われなきゃなんないんだよぅ。
 どこかで覗いてるんじゃないだろうな・・・「やんのか、こら、出て来やがれっ!」
 ってな具合である。

 でも、待てよ、もしかしたら、本の内容に合わせてセットしてるんじゃないか?
 確かにゴーガンも「にっちもさっちも」行かなくなってタヒチとパリの間を1往復半したんだ。

 でも、でも、待てよ、「くびったけ」が挟まっていたのは西田幾多郎随筆集だ。
 西田幾多郎と「くびったけ」はどう考えても無関係だよなぁ。

 ふうぅ。

 確かに、意味は知っていても語源までは知らなかった。
 巻き返しを図ろうとするときには、我と我が身の状況を正しく把握しておくことも大事だ。
 にっちとさっちの語源を覚えて、ここはひとつ、我が身を振り返って反省し・・・・・

 えぇ〜い! やっぱり余計なお世話だ〜!

 まったく、月初めからシケた話題になってしまったものだ。
 やれやれ。

 おっと、もう一つ、今思い出したのだが、変な夢を見た。

 かなり豪華な寝台列車で長い旅をしているのだが、その食堂車で、橋田寿賀子にビーフカレーをご馳走しているのだ。
 それが、めちゃくちゃ美味なカレーで、夢の中では私が調理したことになっている。
 橋田寿賀子は唸りながら食べ、私も食べているのだが、これが、もう、本当にうまい。

 夢の中では実際に食べることはないと言う人が多いが、私は食べる。(笑)
 もちろん、美味い、不味いもある。

 しかし、何で橋田寿賀子なんだろう?

 あの人は、TVなどで拝見している限りにおいて(もちろん、直接お目にかかったことなどない)、「うまいカレーを食べさせたくない人ベストテン」に入るぐらい、ご本人も書いているものも大嫌いなのだが・・・。
 
 できることなら、このカレー、元気がないというBros.の弟君にご馳走したかったなぁ・・・。
 たとえ夢でもね。
 
※橋田さん、お名前の漢字が間違っていたらごめんなさい。



...




My追加

 

 

 

 

INDEX
past  will

 Home