My Cup Of Tea...POO

 

 

週末出勤 - 2007年07月21日(土)

土曜日の仕事場が好きだ。
土曜日の電車が好きだ。

いつもはあんなにいっぱい居合わせてる人々みんな
てんでばらばらに散っていった休日、
自分だけ馴染みの場所に取り残されている感覚が、
好きだ。

世界が、淡く広く思える。
密度が、薄くなっただけなんだけど。

ホワイトボードの上に残ったマーカーの染みみたいに、
閑散としたオフィスの机にはりついて、
ぽつりぽつりと仕事をやっつけていく。

いそがず、ふんばらず、
押されず、押さず。
漂いつつ、
流されず。

一週間、土曜日ばかりだったらいいのにな。
こんなに白くて大きな日ばかりだったらいいのにな。


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あとかたもなく、至福 - 2007年07月20日(金)

クッキーをもらった。
輪切りのミニチュア満月みたいな、素朴な見た目と、
キッチンからそのまま運ばれてきたみたいな、新鮮で香ばしいバターのかおり。
オーストリアのマイスターの称号を持ってる日本人職人さんが焼いたとかいう品物で、


口のなかでクッキーが溶ける前に、
私が溶けた。


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焦がれ - 2007年07月19日(木)

連日、寒、灰色、長袖。
節操のない梅雨、
居座り続ける頭上のいじわる。
太陽に、曝されたい。

沖縄民謡を聴いた。
耳から、
すこしだけ忍び込んだ
日光の気配を捕まえて、
飼うことにする。しばし。


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仕事、しろよ? - 2007年07月18日(水)

昨日、夕刻、職場の自席にて。

声をかけられたので
振り返ると、
職場の男性が
左手に握り飯、右手に吸い物の椀を持って
背後に立っている。

仕事に多少関連した話題を振られて話しているうちに、
会話の焦点が、なぜか、
古き良き映画音楽に対する回想へとずれていき。

某有名恋愛映画の主題歌を唄おうとした彼が、
頬張った握り飯をずるずると汁で喉に流し込み、
勢いよく口ずさんだのは


「だーだだだだーだだーだだえまにゅえーる」


それって……。

「あ、違った。これじゃ『エマニュエル夫人』だ!」

…ですよねぇ?
稀代の官能フランス映画ですよねぇ?

みたことないんです、
というと、

勧められた。

「エマニュエル夫人」の官能性にみられる加虐精神と被加虐精神について
ひとくさり、濃厚バターみたいな講義を拝聴しながら、
吸い物の出汁のにおいも、しみじみとのどかに漂って。

この上なく、ゆかいな闇鍋風だなぁ。
なんじゃぁ、
この食べあわせの悪さ。

なんでもなかったように
彼は去っていったが、
私は、和洋折衷の着地点を探りそこねて、
イチゴが食べたくなった。

素朴な素材の味がする映画を希求。


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待つ人 - 2007年07月17日(火)

仕事帰り。
19時半の地下鉄。

ある女性をみた。
背がすらりとして、カーキ色のトレンチコートを着た
長髪の美人さんで、
ひとり、違う世界にいた。
車両のはじっこ、
優先席の前に立って、
とんとんと足で床を蹴って、
軽く拍子をとるようにしながら
笑顔みたいに顔を歪めて

「ふざけるな」
「あんたたちふたりのせいで、どれだけ迷惑かかってると思ってるのよ」
「むかつく」

って、よく通る声で。
たったひとりの世界で、
彼女は言葉をまきちらし。
そこからはみ出した感情で
車内は異様な気配に満ちていた。

「ふざけるなよ」
どんどん、
「馬鹿にするなよ」
感情が溢れてゆき、
「半殺しだぞ」
誰も受け止めないコトバが、
「ふざけんなよ」
醜い不発弾のように彼女の回りを埋めていき、

とうとう、潰れた。

彼女は、瓦礫につぶされていく間際の動物のように、
絶叫した。


「都会だと思って馬鹿にしやがって」
「ぶっ殺してやる」
「ドラえもん帰って来て!ドラミちゃんがまってるよ!!」
「ぶっ殺してやる」

「ドラえもん帰って来て!ドラミちゃんがまってるよ!!」

私に、四次元につながるポケットがあれば、よかったのに。
彼女のコトバが、ちゃんと通じる世界に連れていってあげられる魔法のドアがあれば、よかったのに。
生き埋めの世界を、救える術があったら、よかったのに。


おこがましい。
おこがましい感情だ。
彼女がほしいのは、たぶん、そんなものじゃないのに。


瓦礫を避けて、私は降りた。
肺をふりしぼる金切り声は、すぐに消えた。


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