弁護士の素顔 写真,ギャラリー 小説,文学,司法試験合格体験記 法律関係リンク集 掲示板


2004年11月20日(土) NYの街角:帰米/往復書簡


JFKに到着したのは午後で、家に着いてから約1日寝て過ごした。ジェットラグというよりも、単に一週間のハードスケジュールが祟ったというべきであろう。

事務所の同期から、同期でNY Bar(NY州の司法試験)を受験した人々は皆合格したとの知らせが入った。受験資格の関係でNY barを受けなかった私を除き、皆受かったというのは実に喜ばしいことだ。みな優秀な人々なので、心配はしていなかった。それでも何があるかわからないのが、試験というものなので、全く不安がなかったというのは嘘になる。だからこそ、このニュースは実に嬉しかった。

***

暫く前から、ネットで知り合った友人と企画していた「往復書簡」を公開することにした。この日記の右上から辿ることができる。彼は、広範な識見に裏打ちされた、練れた文章を書く人なので、ご興味のある向きは、彼のサイト、godblessthechildもご訪問されたし。私も、彼の文章のファンの一人である。

My追加






2004年11月16日(火) 一時帰国日記:「う」/事務所


うなぎを食す。美味しいシチュエーションだが、なぜか箸が進まない。
店を出て食事の相手と別れて、暫く歩くと、眩暈がする。それもかなり強い眩暈。視界が左から右に自動的に流れていく。こんなことは初めてだ。座り込んでしまおうかとも思ったが、なんとか堪えて、事務所の下のスターバックスにたどりつく。

熱い珈琲を飲んでいるうちにようやく落ち着いてくる。何だったのだろう。いずれにしても体調はすぐれない。大事を取ってしばらく腰を据えて休むことにする。顔見知りの秘書に見つかってしまった。

その後ようやく復活したので、お土産のJacques Torresのチョコレートを配りながら挨拶回り。このChocolate Factoryは、マンハッタンでは有名になりつつあり、upcomingなスイーツの店を3つ挙げるとすれば、ここが挙がっても不思議はない。場所は、以前にも紹介したDUMBOで、York Streetが最寄の駅だ。今回は、ここで200個近く買ってきたが、事務所全体には到底行き渡らない。

事務所は本当に大きくなった。直接会ったことがない新人だけでもかなりの数だ。これでまた約2年の間、外に居るとなれば、下手をすると弁護士だけでも100人近く知らない顔が増えることになる。まるで別の事務所に来たような感じがすることだろう。

夜は、新しくパートナーになる2人とその周辺の人々とで飲む。「島流し」という焼酎を選ぶと、みんな面白がって同じ銘柄ばかり飲む。

My追加






2004年11月15日(月) 一時帰国日記:999.9(フォーナインズ)/面接


昨日会ったばかりの、訪日中の友人と銀座めぐり。デジタルカメラを見たいとのことなので、ビッグカメラに立ち寄り、店員の説明を通訳したり。国際フォーラムを見る。雨が降る中を昼食のため煉瓦亭へ。日本の「洋食」を食べたいとのことで、メニューにはなかったがカツカレーを注文する。

眼鏡を作るために、前から行こうと思っていた999.9(フォーナインズ)へ。早速見て回る。かなり時間を掛けて、結局、それほど違和感のないスタイルの眼鏡に落ち着く。検眼までの間、銀座を案内して回る。西五番街に行く。日本の5th Avenueみたいなものだ、と説明するが、正直ジョークとして成立しているかどうか、心もとない。Pierre Marcoliniへ立ち寄って、ホットチョコレートを頼む。ここも久しぶりだ。窓から見えるボーグ帽子店の店先を眺めながら、和む。

その後、検眼を経て眼鏡をその場で作ってもらう。そうでなければ間に合わない。6時からのアポイントの確認の電話を、店の電話を借りてさせてもらう。山手線の駅で別れて、気を引き締めて向かう。

My追加






2004年11月14日(日) 一時帰国日記:神楽坂めぐり


ビジネスクラスでの快適な空路の旅を終え、到着したのは、土曜日の夕刻である。
実家に身を寄せ、しばし久闊を叙する。

翌朝早くから、ちょうど訪日中の友人と既に日本に帰国済みの友人と落ち合う。約束どおり神楽坂を案内するためだ。東西線の神楽坂駅から、神楽坂をゆっくり下りつつ、いろいろな店や印象的な小道を紹介して回る。神楽坂の風情は変わっていないが、1年半前よりも洗練されてきた印象がある。

アユミギャラリーに立ち寄り、和可菜のあるあたりを巡ってから、下りきったところにあるCanal Cafeまで。PowWowで珈琲。気心の知れた3人だから、雑談も楽しい。時間の流れかたが同じ、こういう友人たちは本当に貴重だ。裏道に入り、入り組んだ道で迷子になったような感覚を味わいながら、大久保通りへ。新しくできた和風カフェで和風のスイーツを食べているうちに、日が暮れてくる。

十分に日が暮れて、居酒屋へ。馴染みのbarは、日曜日で開いていないのが残念だ。だが、いずれまた機会もあろう。ジェットラグもあって、酔いが回るのが早い。明日の約束をして、辞去する。

My追加







2004年11月12日(金) 一時帰国日記:1年半ぶりに、日本へ。


考えてみれば、年月の経つのは早いものだ。思考が現実に追いつくには、時間が必要なこともある。1年半の間、一度も帰国していなかった。その必要がなかったからだ。あるいは、より誠実に言えば、必要があったにせよ、それを認めなかったからだ。

JFK行きのバスは、グランドセントラル駅の前から出発する。冷たい小雨の中、やや緊張してバスを待つ。雨は不透明な空から落ちてきて、待合室の汚れたガラスを伝う。普通の平日と同じように、人々が忙しく行き交う。

ある意味、この一時帰国が今後の人生を決めてしまうことになるかもしれない。先行きは決して透明ではない。人生の岐路というものは、このように淡々と訪れるものなのだろうか。しかし、いかに大袈裟な予兆もなく静かなものだとしても、それが大きな賭けであることには変わりない。この与えられた任務を遂行しているうちに、世界観が変わってしまう可能性すらあるのだ。非常に大きなものを獲得できる可能性もあれば、全てを失う可能性だってある。

黒人のスタッフが、行き先を確認して回っている。老夫婦が大きな荷物を抱えて雨宿りをしている。滞在中の予定がほぼ一杯になっているスケジュール帖を繰り返しチェックしているうちに、バスが来た。

My追加






2004年11月07日(日) NYの街角:ミート・パッキング・ディストリクト散策



「今、NYで一番お洒落なスポットはどこか」と問われれば、おそらくNYに住む人の半数はミート・パッキング・ディストリクトだと答えるだろう。SOHOでもなく、NoLitaでもなく、Christopher Streetでもなく。

ミート・パッキング・ディストリクトは、その名の通り、精肉工場が立ち並ぶエリアだ。14th Stから12StとHudoson Stからハドソンリバーまであたりのごく狭い範囲を指す。ほんの数年前まで、昼は工場労働者で溢れ、夜は街娼が立ち、SMクラブがあり、という、どちらかと言えばいかがわしい地区に分類される場所だった。

それがいまや、Spice Marketや、Pastisといった有名なレストランが並び、セレブ2名の推薦状がなければ宿泊できない会員制のホテルがあり、LOTUSAPTをはじめとしたお洒落なクラブが並ぶ、流行の最先端を行く街になってしまった。

日曜日の午後に出かける場所ではないのかもしれない、と思いつつ、友人と出かける。



石畳の街である。Pastisの前の路上で、昨夜Reunionで再会したばかりの友人Cとその恋人Markと遭遇して驚く。何か私の研修している事務所の名前を間違えられたような気がするが訂正するのも面倒なのでそのまま流す。彼らはPastisで昼食を取って、これからBostonまで帰るとのこと。

Design within Reachという家具ショップで柳宗理のバタフライストゥールを見かけ、購買意欲を刺激されたり。精肉工場は日曜日とあって、どこもシャッターが下りている。路上に靴が落ちている。SCOOPの前には、上半身裸の男達が十数人集まっている。どうやらCMの撮影らしい。



MEETというカフェで夕暮れを迎え、その後、ハドソンリバー沿いに沈む夕陽を見ながら歩く。もう秋も終わりだ。



My追加






2004年11月06日(土) NYの街角:リユニオン



UPenn時代の友人達と同窓会。総勢25名。

会場となったPIPA(38 E. 19th St.)は、ABC Carpetというインテリアショップに併設されているスペイン料理の店である。ABCは好きなショップの一つだ。NYCに引っ越してきたばかりのころは良く訪れた。

皆、変わっていないが、既に本国に帰っている人々が多いのが寂しさを誘う。

My追加






2004年11月05日(金) NYの街角:アラビックカフェ/水タバコ

旧友、遠方より来る。マンハッタンからRラインで15分ほどのアストリアへ。アストリアは、もとよりギリシャ移民が多い街だが、アラブ系も多く、最近は人種も多様化したエスニックタウンである。

DEMITRISというグリークレストランでギリシャ音楽の生演奏を聴きながらシーフード。昨日もロックフェラーセンターのスケートリンク脇のThe Sea Grillで日本から来たパートナーにご馳走になったばかりだが、ここも負けず劣らず美味。



その後、アストリアの夜の街を歩く。アラビア語と思しき標識が多くなってくる。ここがNYとはとても思えない。エジプトレストランの怪しい外装が目を引く。濃紺のブルカを全身にまとった女性とすれ違う。まさかと思って振り向くが、既に夜の闇に溶け込んでしまったのか、もう見えない。友人が某投資家と携帯電話で商談している。人体に対する治験がまだ日本では許可されていない・・・とか原因分子の特定に関し疑義があるとの反論が予想される・・・云々という友人の流暢な英語での説明を聞くとはなしに聞きながら、彼も、自分もずいぶん遠くまできたものだと、感慨に耽る。



目的のアラビックカフェへ到着。ターキッシュコーヒーと、水タバコを注文。私はタバコは吸ったことがなく、これがタバコと名の付くものの初体験。周りのトルコ人に教わりながら、水タバコをふかす。少し空気を吹き入れ、温まったところを吸う。そして肺に暫く留めてから吐き出す。紅茶のような高貴な香りが肺に入ってくる。と同時に、気分が非常に落ち着くのを感じる。効果は速やかで、かつ徐々に変化してくる。指先の温度が少し冷えてくるのがわかる。友人は、タバコというよりマリファナに近いような感覚だと評する。その感覚は、頭の芯の部分がキャベツになったような感覚だというが、私にはその比喩が良く判らない。別の友人と、レセプター(受容体)の仕組みと麻薬やニコチンの中毒との関連についていろいろと話し込む。回し飲みをしているうちに、陶然とした気分になってくる。水タバコの上に置かれた炭を取替えにやって来る店員は英語が良く判らないようだ。周りの客は、みな水タバコを片手にバックギャモンに興じている。アラビア語のTV放送が、独特のドラマを流し続けている。水タバコの、こぽこぽ、という音が遠くに心地よく聞こえる。客の入れ替えはほとんどない。非NY的/非現実的に時間は流れ、夜は更けてゆく。しかし、と私は思う。NYのアラブ人街で、我々がこうして集っているこの現実の方がよほど非現実的なのではないか。同じ大学の、狭い教室で授業を受けていたあのころから、我々はどれほど遠ざかってしまったことだろう。

やがて我々は無口になる。水タバコの、こぽこぽ、という音がさらに遠く聞こえる。近くの客がダイスを勢い良く振った。

My追加







[MAIL] [HOMEPAGE]