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2001年12月13日(木) 今夜、ArdbegのあるBarで


水面にようやく浮上したかと思えば、一息つく間さえ十分に与えられないまま、更なる深海へ潜水する。厭きもせず繰り返す、これが日常。

荒れ模様の水面に辛うじて顔を出した、そんな夜に、良く立ち寄る神楽坂のbarで同僚と呑む。一つ覚えのようにラガヴリン。同僚はMaker's Mark。2杯目を何にしようかと考えていると、マスターが、ディスティラリー閉鎖前のArdbegを奥から出して来て、「ほんの少しだけですが、どうぞ」とサービスで注いでくれる。知識としては知っているが、いままで見たことのないラベルと箱である。Ardbegは過去一度閉鎖しており、十数年前に新しい資本の参加により復活したディスティラリーである。この強烈な個性のあるシングルモルトを初めて知ったのも、閉鎖前の酒だった。ただ、今回のは、更に古い。マスター曰く、海外の知り合いのところに直接発注するとのこと。箱の状態にもよるが今や一本八万円ぐらいすることもあるそうだ。

感謝しつつ、口に含む。独特の強烈なピートの香り。と思うと、瞬間に消えて行く。軽やかだ。にもかかわらず、重厚な甘味のようなものが舌の上に残る。
最後の一口がもったいなくて、何度か躊躇った挙句に飲み干す。

***

同僚と、店の外で反対方向に別れる。底冷えのする夜。
上機嫌に一歩を踏み出すが、不意に、眼の奥の方で暗い水面が広がっていくのを感じる。また、繰り返しだ。







2001年12月05日(水) 概念的な、あまりに概念的な


仕事場の部屋の中にはオーディオが一台据え付けてある。流れているのは緩やかなリズムを伴ったジャズだ。部屋の前ではファクシミリが大量の文書を吐き出している。裏付けの取れない事実を手早く仮定事実へと落とし込む。観念的な操作を繰り返し行い、法の文言に定義のない概念を限定的に解釈する。定義を確定する。背景事実から定義に該当しない事実を洗い出す。概念的操作を反復する。この世界の境界線は常に曖昧だ。国境すら明確に意識されることはない。過去の埋もれた文献から新しい発見がある。その度に記述は尖鋭化する。時が来れば、やがて輪郭が浮かび上がる。待つのだ、そのときまで。音楽がグレン・グールドのオルガン曲に変わっていることに気付く、そのときまで。






2001年12月01日(土) 歴史の暮れ方


ここ数週間の嵐が漸く過ぎたようだ。
週末に家に持ち帰る仕事は2つだけで済んだ。

寝酒のため、久しぶりに神楽坂のバーに立ち寄る。
一杯だけアイラ・モルトを流し込んで、10分足らずで席を立って帰途に就く。

そのまま倒れこみ、意識を取り戻すころは外はもう夕方である。
週末の夕方はこのように暮れて行く。







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