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1999年01月15日(金) 二回試験とは


後期修習に入ってから、東京に私が帰ってきたことを知った友人たちから、飲み会の誘いを受けることが多くなった。

その度に「二回試験があるので……」と断るのだが、「まだ試験があるの?」と、吃驚されることが多い。

司法試験に受かれば後は自動的に弁護士になれるものだと思っているのだ。無理もない。かくいう私も、今でこそしたり顔で「二回試験の勉強で忙しくて」という言葉を言い訳として各方面に対し多用しているのであるが、論文試験に受かるまでは二回試験の存在すら知らなかったのである。

かいつまんで説明しておこう。

二回試験は修習生間における俗称で、正式には「司法修習生考試」という。単なる司法研修所の卒業試験ではなく、れっきとした国家試験である。

なぜ「二回試験」というのかは、伝え聞くところによれば、何のことはない、一回目の試験が司法試験で、二回目の試験であるからだそうな。
科目は民事裁判、刑事裁判、検察、民事弁護、刑事弁護、教養の六科目で、これらについては論文式試験が課されている。

さらに、民事系統、刑事系統の口頭試問があり、合計で八日間の試験と言うことになるが、実際には2月22日から短い人で3月8日まで、長い人では3月10日までの期間にわたり考試が行われる。

これだけ長い試験はちょっと他の国家試験では考えられない。しかも、考試時間もとてつもなく長いのだ。

今でこそ全く苦にならずに、もっと長い時間が欲しいと思うこともしばしばだが、論文は10時20分から17時50分までの7時間30分である。勿論昼食のための時間は含まれているが、昼食時間中にも答案の作成を認める扱いになっているため、みな急いで弁当をかき込む。

思えば実務修習でお世話になった弁護士さんを始め、多くの弁護士さんは昼食を食べるのがすさまじく早いのだが、ひょっとするとここで昼食を早く食べる技術を身につけるのかも知れない。

さて肝心の二回試験の内容について説明を試みてみよう。


二回試験は、前述のごとく、6科目について論文式試験、5科目について口述式試験で構成されているが、論文式試験は、白い表紙の記録(実際の事件の記録を匿名にするなどの加工をした上で、100ページから200ページくらいの冊子にまとめたもの)を読んで検討し、次のような書類を作成することが求められている。

民事裁判……判決の一部(事実整理)とそのように整理した理由を起案。

刑事裁判……判決の内、主文と理由中事実認定部分を起案し、量刑の理由を除いた問題点を起案。

民事弁護……準備書面(最終)及び小問

刑事弁護……弁論要旨(弁護人の主張を法的に構成したもの)を起案。

検察   ……起訴状および考え得る問題点を起案。

それぞれ、二回試験の本番ではB5サイズの起案用紙に原則として一行おきに記載し、大体40ページ以上にわたって書くことが多いようだ。

このとき、40ページまでは白色プラスティック製のスナップを用いて綴じるが、40ページ以上書いた場合には黒い布製のひもを用いて綴じることになるので、提出した後に、皆がどれくらい書いたのか大体分かる。

後期の修習は、ひたすら二回試験の形式に類似した問題が出され、その起案を一教科につき3から4回行うことになる。

渉外弁護士になるものにとっては、いずれ留学する際に後期の通常点が評価の基準として提出されるという噂があり(かなり真実らしい)、従って、二回試験の成績でほぼ将来の出世が決まってしまうと思われる裁判官と同じ程度に懸命に勉強することになる。

もっとも、私ががむしゃらに勉強したか否かは……聞かないでください(笑)。






1999年01月10日(日) 民事裁判起案


後期の起案の中でももっとも難易度が高く、また体系化されているのは、民事裁判の起案であろう。

法律効果の発生のための主要事実が何であるかを追求し、当事者の主張をその立証責任の分配の観点から整理する作業が求められており、これが難解なのである。

いわゆる要件事実論と呼ばれるものがそれであり、「民事訴訟における要件事実 第一巻」「第二巻」及び紛争の類型別に攻撃防御の関係を解説した「類型別」が4冊、前期中に配布されているので、後期修習にに入る前に一通り自力で学んでおくと後期に入ってからの勉強がやりやすいはずである。

私は面倒なのでほとんどやらなかったが、これは負担の軽減の観点からいっても失敗であったと思う。

東京、大阪、京都などの大都市では、これらを購読、検討する自主ゼミなどが開かれており、みんなよく勉強しているようである。

その点我が修習地である盛岡などはいたってのんびりしたもので、ゼミをやろうなどと言い出そうものならたちまち他の修習生の冷たい視線に圧殺されるであろうことは明白であったため、私も泣く泣く(?)ゼミを開けず、実務修習中には結局通してこれらの貴重な文献を読むことはなかった。実にもったいない話である(笑)。






1999年01月05日(火) 2回試験への道のり


二回試験では、実は落第するものはほとんどいないのである。
落ちるのは年間数人程度で、それも試験当日病気でやむなく欠席した場合か、さもなくばかなりご高齢の方か、あるいは当日相当の大失敗をした場合に限られるというのがもっぱらの噂である。

それでも確実に落ちるものは出るので、皆その少ない落第者になることを極めて恐れている。

落ちた場合はどうなるか?

実は、6月に再試験があるのである。これで落ちた者は居ない。

しかしその再試験までの間、5人の教官がつきっきりでマンツーマンの特訓を行うことになるようなのである。

故に二回試験の重圧は、その不合格率の低さにもかかわらず、非常に高いといわれている。

実際、私もプレッシャーの余り、英語とか、二回試験とは全く無関係な法律とかに逃げることもしばしばであった(笑)。







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