昨日・今日・明日
壱カ月昨日明日


2004年10月31日(日) 京都ぶらぶら

 曇天。お弁当をつめて傘をぶら下げ、知恩寺の古本市へ行った。もっと早く出るつもりだったのに、家賃を持って大家さんのところへ行ってついつい話しこんでしまったり、町内会費を集めに歩いたり(まだ全部集めていないのだった、トホホ)、でも留守だったり、何かとモタモタしてて電車に乗ったのはお昼を過ぎていた。

 午後、知恩寺到着。まず持ってきたおにぎりで腹ごしらえをする。曇り空だけれど来場者は多い。昨日の雨であちこちがぬかるんでいて足元が悪く、ブーツのつま先や踵が泥まみれになった。泥まみれになるのはいっこうにかまわないのだが、買いたい本がなかなか見つからないのが寂しい。めぐり合わせが悪いのか、私の見方が悪いのか。坪内祐三言うところの「欲しいような欲しくないような本」ばっかりが目につく。その中で山田稔の『ごっこ』という単行本を見つけて、あっ、と思ったその瞬間に、棒きれが眼鏡をかけたみたいな男の人にサッと取られてしまい、哀しくてしばらく棒きれの後をついて歩いていたのだけれど、そのまま会計されてしまった。これで一気に諦めムードが濃くなり、後は寺の周辺を散策したり、枯葉を集めたりして一人で遊んだ。
 2時間ほどいて結局ここでは、未読の深沢七郎とモームの短編集を買ったのみ。それぞれ100円。弁当を食べに来たようなものだ。新潮文庫から出ているカバーつきのモームを一冊300円くらいまでで全作品揃えたいと思っているのだが、今のところ遅々として進まず。
 Tは7冊ほど買っていた。よく7冊も見つけられたものだ、感心する。

 それからあみだくじみたいにクネクネと歩いて三条まで戻る。出町柳から丸太町までの道が静かで良い感じ。途中、荒神口のところにある小さなお菓子屋さんで手作りのプレーンクッキーを買った。三月書房をのぞいて珍しくここでは何も買わず、ごはんを食べてからアスタルテ書房に行ってまたモームの短編集と石川淳の座談集、上巻を買った。あわせて600円也。アスタルテ書房は、棚は金子國義とか澁澤とかがバシーッと並んでてけっこうお高くて、店の佇まいも上品さの中に暗い知性が漂っているという感じで実に高雅なんだけど、かかってる音楽はカントリーロックだったりするところがバラバラで好きだ。

 さんざん街をうろついて、夜になってから電車に乗る。特急の中で、昼間買ったプレーンクッキーを珈琲とともに食べた。ポツポツと素朴な味がして美味しい。お菓子作りは苦手だけれど、クッキーはかろうじてまともなものを作る自信があるので、近々のうちに焼いてみたいと思ったり。
 帰宅してから、明日の弁当のために鶏を煮て、同じ鍋にゆで卵をいれて煮卵も作る。

 なんだかんだでもう10月も終わりやで、なんだったんだこの1ヶ月。あれもこれもと思っていたが、どれも中途半端に終わってしまった。反省。来月からはもう少し計画的にやっていこう、ってたぶん今思ってるだけだろうけど。
 なんでもいいけど、明日こそは晴れてくれ。

・購入物:以下、古書
     深沢七郎「東北の神武たち」(新潮文庫)
     サマセット・モーム「手紙・環境の力」(新潮文庫)
     サマセット・モーム「太平洋」(新潮文庫)
     石川淳「夷齋座談・上」(中公文庫)

・朝食:バタートースト、ルッコラとツナのサラダ、スクランブルエッグ、珈琲
 昼食:お弁当(鮭おにぎり、カツオおにぎり、卵焼き、ソーセージ、たくわん、お茶)
 夕食:外食、チキンカツ定食


2004年10月30日(土) いまはまるで手さぐり状態

 雨の土曜日。きわめて陰鬱。その上、原卓也の訃報や、吉朝さんの検査入院による休養のニュースなど、ショックなこと多し。なんちゅうこっちゃ。何かにひたすら手を合わせて祈りたい。
 今朝の「ウィークエンドサンシャイン」は、Duane Allman特集。実に堪能した。レコード棚を探索し、「an anthology」を出してきてかける。久々にボブ・スキャッグスの「ローン・ミー・ア・ダイム」など聴いて、胸かきむしられる思いがした。

 支度をして、「おはなし会」のため午前11時頃に出かける。初めて行くところなので道を間違えて遅刻しないよう、少し早目に出た。電車に揺られて終点で降り、指示された停留所を探してバスに乗った。会場まではけっこう遠い。小雨が降っていて、信号や停留所で止まるたび、ワイパーがグイングインと音を立てて振れる。寂れた商店街をぬけていくバス。大阪の中心から離れると途端に、田舎のような光景になる。見知らぬ景色をバスの車窓から眺めるのが好きだ。旅行者になったような気分になる。目的も行き先も今夜の宿も決まっていない、私は町から町への旅の者。
 雨のせいか子どもの数は少ないながらも、無事終了。終わった後お茶をいただいていたらIさんに、紙芝居作り進んでる?、と聞かれたので、はい半分くらいまで、などど答えてしまう。本当はほとんど手をつけていないのに。なんでこんなクソの役にも立たぬ嘘をつくんだろ、自分がイヤんなる。
 みんなと別れて、またバスに乗る。来た時より雨が強くなっていて、窓がナナメの雨粒でぬれていた。絵本など抱えてて荷物が多いため、どこにも寄らずにまっすぐ家に帰る。なんだか夢をみていたような一日であった。

 夜は、一人でデタラメごはんを食べて、何だか気持ち悪くなる。キムチ鍋を食べ過ぎてから、少しお腹の調子が悪いようだ。その後は引き続きDuane Allmanを聞いたり、ナボコフを読んだり。ここんとこ就寝前の恒例行事みたいになっている「ドラエもん募金」への電話をして、寝る。

・購入物:なし

・朝食:バタートースト、コーンポタージュスープ(お湯を入れてかき回すやつ)、珈琲、バナナヨーグルト
 昼食:田舎巻き寿司4切れ
 夕食:少し前に作って冷凍しておいたビーフカレーライスにコロッケをのせて、それと麦焼酎の水割り


2004年10月29日(金) 甘んじて受け入れよ

 午前6時30分起床。カラッと晴れているけれど、新聞・ラジオの天気予報では夕方から雨が降ってくると言っている。この週末はずっと雨になるらしい。それを聞いてTは、明日から始まる京都・知恩寺での古本祭りが、無事行われるかどうか心配している。古本市って大雨でもあるのかな、と聞いたら、そりゃああるに決まっている、と胸をはって答えていたけれど本当だろうか。この人が自信を持って言うことは、ほとんどあてにならんからなあ。

 会社へ行く。あんまりやる気なし。やる気のない時はいくらやってもろくな成果が上がらぬというのが古今東西の常識、というか私が作った常識なので、急ぎの件とあたりさわりのない仕事だけして、あとはボウと雲など眺めている間に時間が過ぎた。
 夕方、中津に打ち合わせにでかけ、そのまま帰ることにする。雨にあわないようにと急いだのだが、雨は結局夜遅くになるまで降らなかった。
 パントリーでパスチャライズ牛乳、豆腐、揚げ、食パンを買って、家の近くのスーパーで豚肉などを買う。野菜売場の一角で人だかりがしていたので何事かとのぞいてみると、細ーく四分の一にカットした白菜が100円で売られていた。一人一つと決められているのに、三つもカゴに入れているオバハンがいて店員に、「お客さんお客さんご購入は一人につき一つです、速やかに返してください」と拡声器で注意されていた。振り返ってオバハンは、「娘と一緒に来てるから!」と怒鳴り返す。店員も負けておらず、「じゃあ娘さんをここに連れて来て下さい」と言い返し、またそれを拡声器で言うもんだからうるさくて仕方ない。野菜をめぐって、世の中はすごいことになっている。

 今晩おかずはキムチ鍋。思い立ってジャガイモを入れてみたら、これがホクホクとして美味しかった。最後にうどんも入れて、腹十二分目くらいまでたらふく食べてしまい、食後はしばらく動けなくなった。
 焼酎を飲み過ぎたせいか夜10時すぎころからトロトロと眠くなり、そのままリビングでゴロンを寝てしまう。夜中の1時頃に目覚めてお風呂に入ってから、布団で4時頃まで本を読んだ。「彷書月刊」とナボコフの初期短編を3つほど。雨は朝まで降り続いたようであった。

・購入物:なし

・朝食:カレーライス、ポテトサラダ
 昼食:お弁当(ポテトサラダ、ごぼう天、ゆで卵、ルッコラ、ごはん、蜜柑)
 夕食:キムチ鍋(豚肉、鶏肉、白菜キムチ、ワケギ、コスレタス、ジャガイモ、揚げ、豆腐、エノキダケ、シメジ、うどん入り)、焼酎水割り


2004年10月28日(木) 月の手前を旅客機が横切る

 今朝はかなり冷え込んだ。寒くなると途端に早起きが辛くなる。布団からの離れ具合で季節の移り変わりを実感している今日この頃。

 午後、御堂筋をテコテコ歩いていたら、取引先のSさんにばったり会って立ち話。Sさんはもうすっかり冬装束で、白のロングコートに真っ赤のロングスカートという、少々バランスを欠いたスタイルでその上、「少女A」を歌ってた時の中森明菜みたいな髪型をしていて、この人はだいたいいつもこういう感じなのだけれど、80年代前半で時が止まってるなあ、と会う度思う。でもすごく無邪気で明るくて楽しい人であるし、私は80年代っぽいSさんがなんか不思議で好きだ。
 また飲みに行きましょうね、というような話をして、別れ際に、ねえねえ前やってくれたアレ面白かったなあー、ホラ前田吟と長山藍子の物真似!、またやってー、そうだちょっとここでやってみてよー、と言われたのだが丁重にお断りした。酒を飲んでもいないのに、昼の日中に御堂筋の真ん中で前田吟の物真似などやってられんわ。

 所用をすませてそのままフラフラと、堂島のジュンク堂ヘ行った。ずいぶん長い間ここに来ていなかったような気がする。しばらく遠ざかっているうちに、実にいろんな本が出ているものだ、あちこち目を奪われてしまう。これもあれもと妙に気が走る。『彷書月刊』で古本小説大賞に選ばれている小説が何となく読みたくなって気になったのと、「古典芸能」の棚のところで『初代桂春団治落語集』を発見し、パラパラめくってみたらもう買わずにおられなくなって、懐具合の問題もあるし今日のところはこの2冊に止めておく。「彷書月刊」を買うのは初めて。

 自転車で帰宅。ノソノソとカレーを作る。30円のモヤシを使ってサラダも作る。これは案外美味であった。野菜高騰につき、とうとうモヤシの出番が来た、という感じだ。
 夜、買ってきた「桂春団治落語集」を読む。こんな素晴らしい本が出ていたことを今まで全く知らなかった私ってやっぱり阿呆だ。夢中になって読んで、あっと言う間に夜中。風呂に入って寝る。

・購入物:東使英夫・編「初代桂春団治落語集」(講談社)
     「彷書月刊」11月号(彷徨舎)

・朝食:バタートースト、バナナ、ヨーグルト、珈琲
 昼食:お弁当(豚キムチ、もやしのサラダ、ゆで卵、塩昆布、ごはん、蜜柑)
 夕食:ビーフカレーライス、ルッコラともやしの和風サラダ、麦酒


2004年10月27日(水) 僕等の視野は、偏り狭かっただろうか

 雲低く垂れ込める一日。午後からほうぼうへ出歩いて、いろいろおしゃべりしたり、自己顕示欲が強くペラペラと自慢話ばかり並べるような、何だコイツバカか、と呆れるような人にも会ったりして、心身ともにクタクタ。クタクタだったが、今日観とかないと後がつかえるので、ガーデンシネマに「モーターサイクルダイアリーズ」を観に行った。

 整理券をもらってからスカイビルの地下に降り、映画の前にかつどんで腹ごしらえ。かつどんなんて久しぶりだ。今日入った「喝鈍」は法善寺にもあったお店で(今もあるのかな?)、ご飯が美味しいのと梅干が食べ放題なので好きだ。
 
 レディースデイのせいか、立ち見も出る大盛況。全然知らなかったけれど、ゲバラを演じているガエル・ガルシア・ベルナルという人はたいそう人気があるそうだ。私は全く好みでないのだが。
 よく出来た映画だとは思うし、それなりに面白かったし、特に鉱山で仕事を求めてさまよう夫婦に会うシーンはかなりグッときたし、アンデス山脈もマチュピチュ遺跡も素晴らしかったんだけれども、どうも諸手をあげて、ああよかったよかったと言えないんだなあ、何かがこうひっかかるんだなあ。それは一体何だろう。
 それはやっぱりクライマックスの、ハンセン病患者たちが隔離されている島まで川を泳いで渡るシーンに、全く気持ちが乗らなかったからだと思われる。ベタすぎて観ていて恥ずかしい。それまでは抑えた感じでよかったんだけれど、アレはあまりに演出が陳腐だわ。惜しいなあ。

 途中で明日の朝ごはんとお弁当分の買物などして、22時半くらいに帰宅。自転車をこいでいたら足先が冷えたので、すぐお風呂に入って温まった。本棚から「モーターサイクル南米旅行日記」を出してきて(これはすぐ見つかった)、ところどころ読み返し、トロトロと眠る。

・購入物:なし

・朝食:バタートースト、珈琲、リンゴヨーグルト
 昼食:お弁当(ウィンナー、ターサイのおひたし、卵焼き、塩昆布、ごはん、蜜柑)
 夕食:外食、喝鈍にて(ふつうのカツどん)


2004年10月26日(火) グレーの雲で月が隠れている

 しのつく雨の日。冷たい雨だ。地下鉄で出勤。車内で、ノーマン・マルコム「ウィトゲンシュタイン」を読了する。
 ウィトゲンシュタインと親しくつきあうのは『シンの疲れることだ』とノーマン・マルコムは書く。厳しい物言い、遠慮かしゃくのない批評、加えて詮索好きの傾向があり、気骨が折れ、神経がすりへり、それに何と言っても彼と話をするのは知力を振り絞る必要があった、と。そりゃあそうだわなあ、こんな人と喋ったら、私なら脳みそが腸捻転起こしそう。
 なんだかんだ言っても、実に面白い本だった。ウィトゲンシュタインは確かに奇矯な人物かもしれないけれど、天才はそれくらいでなくちゃね。

 帰りに、成城石井でチーズと牛乳と割れ煎餅を、阪神百貨店で6枚切食パンと豚肉200グラムを買って、バスにて帰宅。バスは交通渋滞のためにずいぶん遅れていて、バス停で30分くらい待たされた。私の前に並んでいた、のび太のママみたいな眼鏡のオバちゃんが、どうなってんのかしらねえ、みたいなことを私に言って、ちょっと遅れてるみたいですねえ、と答える。行列のあちこちでそんな会話が聞こえていた。待っている間もずっと雨が降っていたが、バスを降りたらポツポツ顔に当たる程度になっていて、傘をささずに歩いた。

 夜、来月から年末までの、観に行かねばならない映画やライブ、美術展や写真展などをピックアップして、いろいろと計画を立てる。計画どおりにいったためしがないけれど、まあ一応かたちだけ。差し当たっては、来月4日からの「中島らも追悼写真展」が今のところ一番楽しみかも。
 夜中に明日の弁当の仕込みをして、就寝。弁当のために生きてるなあ、という気がしないでもない。

・購入物:なし

・朝食:バタートースト、珈琲、バナナヨーグルト
 昼食:お弁当(ワケギと卵のチャーハン、竹輪のキンピラ、塩昆布、蜜柑)
 夕食:枝豆ごはん、ターサイと豚肉のトウバンジャン炒め、海老ワンタンのスープ、麦酒


2004年10月25日(月) 凪の時

 朝方、鄙びた紡績工場みたいなところで繕い物の仕事をしている夢を見た。せっせと作業している後ろから鬼軍曹みたいなオバサンに、もっと早くやらんかい、とヤイヤイせっつかれ続けるという夢。たいへんな悪夢であった。目覚め甚だ悪し。

 残業のあと、自転車でまっすぐ帰宅。風が冷たくて、ハンドルを持つ手がかじかんだ。
 帰って宅配野菜の整理。パックされている野菜は確かに少ないが、レタスが入っていたのには驚いた。その他はショウガやニンニクなど、それ単独では食べられないものが多い。ワケギがたくさん束になっていたので、湯豆腐に入れる。
 食べながら、日本シリーズの最終戦を観る。なんだかんだで結局、西武が優勝した。去年と違って今年の日本シリーズは、ごくごく平穏な気持ちで見られたのでよかった。こんな気持ちに慣れたくないとも思うけど、去年みたいなことが毎シーズンおこったら体がもたんしな。
 
 Tが田中小実昌の泰流社から出ている本を3冊買って帰ってきた。「ご臨終トトカルチョ」「オチョロ船の港」「新宿ふらふら旅」。一冊1000円くらいだった、とのこと。それと1992年の5月号の「Switch」もあった。特集はジーナ・ローランズ。特集は薄っぺらな内容でイマイチだったけれど、終わりのほうに『今注目のバンド、ニューエストモデル』というような記事があったので喜んで読む。
 給料日のせいか、今日はお金を請求されなかった。珍しいこともあるものだ。でも忘れているだけかもしれない。このままそっとしておこう。

 シンシン冷えて寒いので、毛布を出してきてくるまる。くるまりながら、学校の体育館ってなんであんなに寒いんだろう、と10年前友人が言っていたのを思い出す。締め切ってても、ストーブをたいても、何枚毛布をかぶっても、寒くて寒くてたまらん、と言ってた。そのことを思い出して、ギュッと目をつむった。

・購入物:なし

・朝食:カレーうどん
 昼食:お弁当(豚肉のショウガ焼、ジャガイモの醤油煮、卵焼き、ごはん、漬物、塩昆布)
 夕食:焼き秋刀魚、湯豆腐(うどん入り)、枝豆、麦酒、ごはん


2004年10月24日(日) 幸運を祈る

 朝、5時頃目覚めて、本や新聞など読んでいるうちまた眠くなり、次に目覚めたのは10時前だった。最近、休日はこのパターンが多い。
 布団と洗濯物を干して、Tにパンを買いに行ってもらって、遅めの朝ごはん。それからただひたむきに掃除をして、昼から自転車に乗って梅田まで出かけた。

 まずキングコングでCDを売却。20〜30枚ほどで9000円ほど戻ってきた。これでウチにある日本人のアルバムはホントに限られた人々のものばかりになった。それから、かっぱ横丁で少しだけ古本を見る。今せっせと集めている、でも集めているばかりでまだちゃんと読んでないのが気がかりと言えば気がかりな、新潮文庫の海外文学短編集、本日はフォークナーが見つかった。230円(だったかな?)也。また「八月の光」を読み返してみたいなあ、と思ったり。でも今はノーマン・マルコムの「ウィトゲンシュタイン」に夢中なのだった。
 テアトルで「きわめてよいふうけい」の前売りチケットを買って、チラシをごっそりもらってくる。その後ロフトで、無印のコットンのタートルネックとパックスの石鹸歯磨き粉と、MOLESKINEの2005年ポケットダイアリーを買った。なんやかんや言ってもやっぱり手帳はMOLESKINEに限るわね、と私は思っている。
 ラーメンを食べてから、旭屋で「本」をもらい、タワーへ行って「イントキシケイト」と「バウンス」をもらって、今日は何も買わずに試聴だけして、阪神百貨店で「キャラメルバニラ」のソフトクリームをペロペロなめて、自転車に乗って帰る。心地のいい疲労感。

 帰宅後、明日のための第一条として、弁当のためにジャガイモを煮る。ここんとこ、芋の類を食べることがホントに多い。Tは、「未知との遭遇」のリチャード・ドレイファスみたいだ、と言って、喜んでいるのか悲しんでいるのかよくわからない顔をしていた。「未知との遭遇」と芋がどのような関係があるのか、私にはよくわからない。
 野球など見て、「本」に連載中の町田康「真実真正日記」を読んで(今回は素晴らしく面白かった)、就寝。時間は不明、というか、もう忘れた。

・購入物:ウィリアム・フォークナー「フォークナー短編集」(新潮文庫) 古書

・朝昼兼用食:トースト、ほうれん草のサラダ、スクランブルエッグ、ツナ、珈琲、蜜柑
 夕食:外食、北斗にて(マーボーラーメン)


2004年10月23日(土) 縁側で寝ているまでのことさ

 朝起きたら頭が痛くて体もだるく、どうも調子が出ない。Tのお弁当を作って、朝ごはんを食べてその後片付けをしたら、後はもうなあんにもする気がなくなってしまった。
 今日は休息日と決めて、天気も良いのに日がな一日、ゴロゴロして過ごした。

 本日行ったこと。
 天井を見上げてゴロゴロ寝た。お昼に雑炊を食べて、珈琲をいれてクッキーも食べた。日記をつけた。フェラ・クティの曲ばかりを集めたMDを作った。これはものすごく楽しかった。今も頭の中で音楽が鳴り響いている。友達から携帯にメールが来た。2,3回は返事を返していたが、途中で投げ出してしまう。メールのやりとりは必ず私のほうから送るのを止める。面倒くさくてやってられない。携帯メールは世の中からなくなってほしいもののひとつだ。でもきっともうなくならないだろう。
 洗濯物を取り入れる時空を見たら夕焼けがキレイなオレンジ色だったので、少しくらい外に出てみるかと思い、ぶらぶら買物に行った。スーパーでジャコと椎茸、豚肉を、それから「夫婦善哉」の柳吉みたいに昆布の佃煮を作ってみようと、昆布屋さんで昆布を買った。うまく出来るかな。その続きに近所の本屋へ行って、あるわけないと思うけど一応「本の話」があるか聞いたら、はーいどーぞ、と言ってアルバイトの女の子が一冊レジの下から出してきてくれたのでいたく感激した。何でも言うてみるもんだ。

 ホットプレートを出してきてペチョペチョと壱銭洋食を焼いて、ビールを飲みながら一人で食べた。食べながら本日初めてテレビをつけたら、新潟の地震のニュースをやっていた。しばらく見てから、押入れから避難袋を出してきて中を点検した。ラジオの電池が溶けて変な具合になっていたので取り替えることと、カンパンの類をもう少し補充しておこう。いざとなれば誰かにあげられるかもしれないし。どうやら私は生き延びたいと思っているようだ。その場に直面すれば、もっと強くそう思うだろう。
 日々は繰り返しながら、平たく過ぎていく。でも、今日とおんなじ明日がくる保証など、やっぱり誰もどこにも持ってないのだ。当たり前のように受け取っている私達の毎日は、考えてみればあまりに脆弱だ。今日、というか、今この時が、運命が変わる前の最後の時間かも知れない。だから、すべての人のあらゆる一瞬は同じように貴重だ。

 晩ごはんのあと、じっくりじっくり昆布を炊いた。時折、「緑の年の日記」を読む。体調は夜になってずいぶん楽になったと感じる。明日はもう少し活動的に過ごしたい。
 
・購入物:なし

・朝食:ハムエッグ、味付け海苔、ワカメの味噌汁、ごはん
 昼食:卵雑炊
 夕食:壱銭洋食(山芋をたっぷり入れたお好み焼きの生地を薄く広げて、上にネギと豚肉と紅ショウガなどのせて焼き、醤油をぬって青海苔とカツオをふりかけて食べる。素朴で旨し。)、麦酒


2004年10月22日(金) 矯めつ眇めつ

 午前6時起床。天気が良いことを確認して、すばやく洗濯をして干す。清々しい陽気。空が高くて、すみずみまできれいに青だ。たまには雨もいいけど、やっぱり晴れているって素晴らしい。
 
 午後、街に出かけた折、ちょうど前を通りかかった堺筋本町の天牛堺書店に久々に寄ってみた。パタパタと本をひっくりかえしていると、580円で阿部昭の単行本「緑の年の日記」を見つけた。作家・阿部昭が20歳の頃に書いた日記を読み返し検証する、という体裁を用いた青春小説。クリーム色の表紙に、緑の日記帳が描かれている装丁が良い感じだ。迷わず購入。阿部昭の書いたものはとにかく、見つけたら買うことに決めているので。

 今日は早目に会社を出て、まっすぐ家へ帰った。玄関に荷物を置いてすぐに、「蝿オババ」の家に町内会費をもらいに行く。6時半頃に行ってみたらあいにく留守でがっかりしたが、そのうち帰ってくるとみてしばらく家の前で待つ。ベランダには洗濯物が干しっぱなしで、シャツやらステテコみたいなのやら、わりと大きめのピンクのパンツがヒラヒラ揺れていた。「蝿オババ」はゴボウみたいに細い体なのにあんなに大きいパンツをはくのかなあ、と思っていると本人が帰ってきた。待ち人来る。嬉しい、借金取りの気持ちが少しわかった気がした。
 5時頃来てと言ったのに、と文句を言いながらもちゃんと1800円払ってくれた。よかった、よかった、少し肩の荷が下りた。

 夜、買ってきた「緑の年の日記」にパラフィン紙を巻く。古本の中でもパラフィン紙をまきつけるのが似合う本と似合わない本がある。この本のしっとりとした佇まいには、パラフィン紙が本当に似つかわしい。
 本を枕もとに置いて眺めているうち、午後23時ころ就寝。
 
・購入物:阿部昭「緑の年の日記」(福武書店) 古書

・朝食:バタートースト、ふかしジャガイモ、珈琲、リンゴ
 昼食:お弁当(焼鮭、ジャガイモサラダ、卵焼き、レタス、塩昆布、ごはん、蜜柑)
 夕食:豚肉と牛蒡の甘辛煮、湯豆腐、カボチャの煮つけ、ごはん


2004年10月21日(木) 言葉を意味でわるわけにはいかない

 朝はまだ少し雨がパラパラしていたけれど、会社に着いたら晴れてきた。
 新幹線は夜の9時頃やっと動いて、家に帰ってきたのは夜中の2時をすぎていたと、Nさんが言っていた。台風の被害は本当に甚大で、取引先の中でも工場が浸水して、生産が出来ない状態になっているところもあるそうだ。電話で担当者と、ここまでひどくなるとは思ってなかったね、というようなことを話す。ずいぶん疲れているようであった。
 
 仕事は昨日の続きを淡々と片付けて、図書館に行くために早めに会社を出た。最近、夕方5時を過ぎたらもう薄闇が広がっていて、何となく寂しい。帰り際に、「本の話」をもらうため旭屋に行った。でも「本の話」はまだ届いていなくてもらえず、少し店内をウロウロし新刊をチェックする。装幀が新しくなった講談社現代新書はホントにあれでいいの?私は嫌いだ。あまりにもつんつるてんで読む気がしない。
 閉館間近の図書館にすべりこんで取り置きの本を引き取る。
 本日借りたもの。作品社の「ナボコフ短編全集1、2巻」。今まで幾度となく買おうと思ったが何故か縁がなく、とにかく借りてみることにした。ナボコフの短編はほとんど読んだことがないので楽しみだ。
 図書館の後はスーパーに行って買い物。野菜の値段がバカみたいに高いので、げんなりする。特に葉物がべらぼうだ。だからここのところ、カボチャや芋ばかり食べている。

 夜は、野球を見たりナボコフをパラパラめくったり本を整理したり売却するCDを選定したり、する。年末までに持っている本やCDを見直し整理して、本当に必要だと思うものだけを所有するようにしよう、と決意したりもする。
 寝る前は「田村隆一詩集」を読む。午前0時ころ就寝。 

・購入物:なし

・朝食:ヤマザキのスナックパン(このパン、妙に好きだ…。新聞など読みながらパクパクと何本も食べてしまう)、バナナヨーグルト、珈琲、蜜柑
 昼食:お弁当(野菜天、サツマイモの味噌煮、ゆで卵、レタス、ごはん、蜜柑)
 夕食:かぼちゃのそぼろ煮、レタスとウィンナーのスープ、ジャガイモサラダ、枝豆ごはん


2004年10月20日(水) 空から小鳥が堕ちてくる

 今日は日帰りで東京に出張する、はずだったのだが、諸般の事情により急遽Nさんが行くことになり、私はいつもどおり出勤した。向こうで行う会議や打ち合わせは面倒だったけれど、東京に行くのはとても楽しみにしていたので、嬉しい半分がっかり半分、というところかな。

 午前中書類を持ってきてくれたN青年社長が、今日は早よ帰らなあきませんで、と言っていたので、へーそうなの、と思った程度で台風のことはあんまり気にしていなかったのだが、昼過ぎに心斎橋まで出かけた折にはザアザア降りの雨にあい、道には人気がほとんどなくて、ひょこっとのぞいた大丸も3時に閉店するらしく張り紙がしてあって、本当に台風がくるのだと思った。
 会社に戻ってきて午後3時半頃東京駅からNさんより、新幹線が動いていないからしばらくここで足止めだ、ワンカップもスルメも寿司もたんまり買ったしベンチも確保したし、電車が動くまでここでひとりで宴会だウシシシ、というような電話があった。その後もしばらく仕事をしていたのだが、早く帰れと上司に怒られたので、すごすごと帰途につく。地下街はほとんどの店が閉まっていて、暗ーい正月みたいだった。
 家で、ダシ醤油を作ったり、芋を煮たりしているとTより、電車賃がないから心斎橋まで金を持ってきてくれ、という、耳を疑うような、どうにもこうにもにわかには信じ難い電話があり、ものすごく嫌だったけれども豪雨の中、傘をさして出かけた。駅に行くまでの橋のところで下を見たら、水量の増した川がたいへんな勢いでゴウゴウと流れていて、暗くて様子が判然としないだけに余計に怖くて、今回の台風はもしかしたらヤバイかも、と思った。

 夜になって雨は止んだけれど、風がビョウビョウと吹いてきた。思潮社の「田村隆一詩集」を読む。パラパラめくっていたら、購入した当時のものと思われる1989年12月11日付けのアバンティブックセンターのレシートが挟まっていた。この本を買った時、自分がどういう状況で誰といて何を大切に思っていたか、いろいろと思い出して、感慨深かった。時間は流れたようで、案外留まっていたりするのかも。
 日記を書いて、午前2時頃就寝。

・購入物:なし

・朝食:レーズンとクルミのパン、クリームシチュー、珈琲
 昼食:お弁当(キャベツとソーセージのカレー炒め、蒸しカボチャ、ゴボウのキンピラ、ごはん、蜜柑)
 夕食:焼秋刀魚、湯豆腐、サツマイモの味噌煮、ごはん、麦酒


2004年10月19日(火) 不埒な傍観者

 雨。昨夜から降っていたようで、窓を閉めていても部屋の中にまで雨の匂いが漂っている気がした。朝から部屋の灯りをつけるのは嫌いなんだけれど、自然光だけでは暗くて新聞も読めないし、お弁当も作りづらい。まるでずっと夜が明けないみたいだ。
 地下鉄で出勤。車内では本を読もうと思っていたけれど、前の席に座っていた女の子が一心不乱にお化粧をしていて、それを眺めていたら面白くて、全行程が完了するまでじっと見てしまった。左手で鏡を持ちながら、右手ではアイライナーやらマスカラやら紅筆をすばやく持ち替え、手早く仕上げていく。ガタゴト揺れる電車内でも難なく「本日の顔」が作られていく器用さに感心した。口紅を塗り終えて、左から右から斜め上から顔を鏡に映してみて、笑ったりちょっと怒った顔をしてみたりする。なるほどこの動作がフィニッシュか。ここで梅田到着。スカートをヒラヒラさせて彼女は降りて行った。
 人が化粧しているのを見ていたら、何故かペンキ塗りがしてみたくなった。

 グダグダと残業。帰りに成城石井で珈琲を、阪神百貨店で天然酵母のバケットとミニメロンパンを買って、旭屋で「草思」をもらう。買いたい本もあるのだが、今日はグッと我慢。特に理由はない、なんか我慢したい気分だったので。実にいろいろな気分があるものだ。
 帰りのバスでミニメロンパンをかじりながら「草思」を読む。山田宏一の連載がしばらく休載なんだって、何でだ!?ショック大。今月の特集は「プロ野球に必要なもの」。熟読していたら、隣に座った森繁久弥をより上品にしたようなおじいさんが、よう雨降るね、と話しかけてきた。私は昔からよく見知らぬおじいさんとかおばさんとかに話しかけられるけれど、これは一体なんでだろう。それはおじいさんかおばさん(たまにおばあさんか舶来人)に限られるのだけれど。
 おじいさんは、明日は台風だ、この分だと今年は「台風30号」くらいまで発生するかも、みたいなことを一人で喋って、ところでキミの食べているものは何?、と尋ねてきたので、メロンパンです、と答えると、何が可笑しいのか知らんけどホッホッホッと笑い、明日は台風やなあ、ともう一度言って、黙り込んでしまった。わけがわからない。人間の頭の中は複雑怪奇だ。

 夜は、彫刻家、高田博厚の「フランスから」を読み始める。冒頭の一章と、堀江敏幸の解説を読んだ。

・購入物:なし

・朝食:レタスとツナのサンドイッチ、バナナヨーグルト、珈琲
 昼食:お弁当(キャベツのカレー炒め、ケチャップウィンナー、ゆで卵、ごはん、蜜柑)
 夕食:コーンクリームシチュー(人参、ジャガイモ、玉ねぎ、ブロッコリー、鶏肉入り)、カボチャのサラダ、バケット、麦酒


2004年10月18日(月) 月曜日と欲求不満と「断る」ということ

 あっという間に、また月曜日。切ない。朝ごはんに、昨日残しておいたお好み焼きを食べることを楽しみに、午前6時すぎに起床した。ものを食べることがわたくしの原動力になっているようだ、今のところ。
 
 仕事でもその他のことでも、頼まれて軽い気持ちで引き受けて、それが自分の首をジリジリとしめていっているなあ、と感じる。この前読んだ「反時代的毒虫」の中にあった、車谷長吉のお祖母さんが三日に一度は口にしたらしい『とにかく人生で大事なことは断るということだ』という言葉を思い出した。『断るということがいちばん難しいことなんだ、断ることがすなわちこの世を生き抜いていくことなんだな』、という部分。
 断るのか引き受けるのか、断るとしたらどうやって断るのか、引き受けるならどこまで引き受けるのか、いつも迷う。どっちに転んでも難しいことは同じで、何かを得て何かを失う図式は一緒なんだけれど。私はまだまだきっぱり断るということが出来ずにいる。ためらいながら引き受けたものを持て余してウロウロとしている。

 残業して帰宅。予約していた本が届いているらしいので図書館に行きたかったのだが、間に合わなかった。観たい映画もたまってきているのに、なかなかうまく時間がとれなくて不満だ。最近早起きしているせいかすぐ眠くなってしまうので、本もあんまり読めないし。夜、寝るのがもったいない、とよく思う。私の時間はまだまだこれからなのに、寝てしまったらおしまいだって。でも布団をかぶったら、抵抗むなしくスヤスヤと寝てしまうのだが。
 
 やっぱり、ゴンブロヴィッチの「コスモス」は見つからない。どこに行ってしまったのだろうか。

・購入物:なし

・朝食:お好み焼き1/2枚と焼そば半分(昨夜の残り)
 昼食:お弁当(レンコンのキンピラ、かぼちゃの煮物(お好み焼きに入れたダシの残りで煮た)、ワカメ入り卵焼き、ごはん、塩昆布)
 夕食:ジャガイモのオムレツ(ひき肉とジャガイモと人参を炒めて、ふわふわ卵で包んだもの)、エリンギとひらたけのお味噌汁、かぼちゃの煮物、ごはん


2004年10月17日(日) 腰をかがめてくぐり抜ける

 午前5時頃、いったん起きる。まだ夜だ。少し寒いが昨日ほどではない。日記を書いて、メイ・サートンの「独り居の日記」を読んだり、MDにおとしておいた昨日の「ウィークエンド・サンシャイン」を聴いたりしているうち、また眠ってしまった。
 次に目覚めたのは10時頃。遠くで秋祭りのお囃子の音が聞こえていて、窓からは金木犀の香りふわふわとただよってくる。今日も良い天気になりそうでよかったよかった、布団を干して洗濯をする。
 遅い朝ごはんの後、「日曜喫茶室」を聞きながら掃除。「日曜喫茶室」のゲストのひとりは松本隆。松本隆の話はいつもおんなじだなあ、と思うのだけれど、それは聞き手側が同じようなことばかり聞くからだと気がつく。それから荻野アンナ。荻野アンナのことは好きでも嫌いでもないけれど、何故この人はどうしようもない駄洒落を言うのだろう。よっぽどの条件がそろわない限り、駄洒落は絶対面白くないですよ。おぞましい感じさえする。その次に、明治大の教授か助教授かをやってる斉藤ナントカという、名前は忘れたけれどホラ、声に出して読むのが好きな人。あの人が出てきたので、ラジオを消した。なんか苦手なのだ。特に理由はないけど、どことなく鬱陶しい。
 
 掃除が終了後、テロテロと近所をまわって町内会費を集めて歩く。10軒中3軒留守で、1軒は髪をリーゼントみたいに固めた横浜銀蝿みたいなオバちゃんが出てきて、お金がないと言って払ってくれなかった。オバちゃんは身体が細くて背も低くて目がギョロッとしてて、ホントに蝿みたいだった。いつならありますか?と聞いたら、週末ならあると思うから夕方5時頃来い、と言うので、とりあえずすごすごと帰ってきた。
 その後、お好み焼きの材料を買いにスーパーに行ったら、その横浜銀蝿がいた。そっと後ろから近づいて観察してみたところ(私もやることが暗いけれど)、食料だけでなく酒やらビールなんかも買っていた。ビールを買う金はあっても、町内会費半年分の1800円を払う金はないということなのだろうか。世の中にはいろいろな人がいる。

 夜は、スジ肉とコンニャクを甘辛くたいて、お好み焼きに入れて食べた。旨し。はっきり言って、絶品であると思う。
 それから新聞各紙の書評を読んでいたら、ゴンブローヴィチの「コスモス」が急に読みたくなって、本棚をあちこち探してみるもとうとう出てこなかった。次々と本の行方がわからなくなる。夜も更けてきたので諦めて、引き続き「独り居の日記」を読む。日々生活を積み重ねていくことの尊さ、みたいなことを考えた。
 米を研いで、午前0時頃就寝。

・購入物:なし

・朝食兼昼食:昨夜の残りの肉じゃがを卵とじにしたもの、レンコンのキンピラ、麩のお味噌汁、ごはん
 夕食:お好み焼き(ねぎとスジとコンニャク入り)、キャベツの辛ソース焼きそば、麦酒


2004年10月16日(土) 思い描くようにはいかなくて

 快晴。ここ数日でもっとも良い天気だったのじゃないだろうか。こんな気持ちのいい土曜日に休日出勤とは、ちっとも面白くない、なーんにも面白くない。しかも朝の7時集合で、とびきり早起きせねばならず、終日眠かった。まあ、お昼にお弁当をもらってそれが美味しかったことが、本日ただ唯一の良い出来事と言えるでしょうか。
 一日ビルに閉じこもって接客仕事。ド厚かましい大阪のオバハン連中にはもう本当に辟易する。恥ずかしいという感情がなくなった人間というのは、見ていて恐ろしいものだ。こうなってはもうおしまいだと思う。
 ビルの窓の隙間からのぞく青空をみては、早く帰りたいよう、とため息をつく。ずっとビルの中にいるのは息がつまってくる。太陽の下を風に吹かれて歩いてみたかった。でも結局解放されたのはとっぷりと日が暮れた後であった。がっくり。

 家に帰って、晩ごはんを作りながら日本シリーズを観た。中日の選手って見れば見るほど地味だなあ…。華がないというか。一番びっくりしたのは、野球をあんまり知らないTが、ベンチにいて帽子をかぶっていない西武の和田を見て「へー、衣笠っていま西武にいるんや」と言ったこと。いくら鉄人といえども、いつまで衣笠を現役でやらせるつもりなのか、私は心から衣笠に同情する。

 夜は、石川淳の「鷹」を読んだ。石川淳はめちゃめちゃよく切れる刀のようだ。切れすぎて何だかコワイような気もする。それから布団に陥没するようにして寝た。

・購入物:なし

・朝食:焼たらこ、坊ちゃんかぼちゃのサラダ、卵焼き、ごはん
 昼食:配給弁当(白身魚の竜田揚げ、煮豆、ひじきの煮付け、酢豚風の炒め物、じゃがいものサラダ、十穀米ごはん、お茶)
 夕食:肉じゃが、レンコンのキンピラ、湯豆腐、ごはん、焼酎のお湯割


2004年10月15日(金) どいつもこいつも

 もういちいち書かないけれど、今日も会社で腹が煮えくりかえるような出来事が二、三あって、夕方までむしゃくしゃしていた。
 終業後は、Tと待ち合わせをしてごはんを食べて帰る約束をしていたので、心斎橋まで行った。定刻どおりに指定された御堂筋線の改札の前に行ったのにTはおらず、数分待ってもこない。Tは携帯電話を持っていないので連絡のとりようがなく、こういう時困る。いつもならその辺りで本でも読んで気長に待つのだが、今日はなにしろイライラしているものだから何でもかんでも腹が立つ。しばらくしてようやく、改札のところで立っているのがしんどかったから横のドトールで珈琲を飲んでいる、と公衆電話より電話があり、さらにムカムカきた。携帯電話を持たないのは勝手だから別にいいけど、持ってないならそれなりに、打ち合わせた場所でちゃんと待っとけよ。
 怒っていたのだけれど、Tが中尾書店で安藤鶴夫の「年年歳歳」を買ってくれたことと、ごはんをおごってもらったので、機嫌がなおった。
 何かに怒っていてもすぐ忘れてしまう。大きなことでも些細なことでも、大抵寝たら忘れる。会社であった腹ただしいことも書かないんじゃなく、もう詳細を忘れてしまったから書けないだけなのだ。これは数少ない自分の長所だと思ってきたけれど最近は、ただバカなだけなんじゃないかと感じている。

 ごはんの後はタワーにつき合って、いろいろと試聴して遊び、疲れて帰ってきたら、Iさんと友人Kより電話があり、特にKの電話はなんだかんだと長くて、しかもバカバカしい内容で(彼が見知らぬ時計をしていてどうしたのかと聞いたら買ったと答えたが自分で時計を買うような人でないから絶対おかしいと思い、どこで買ったのか問いつめたら東急ハンズだと言うから家のゴミ箱を調べてやった、そしたら出てきたのはハンズはハンズでも三宮のハンズの袋であった、あの人は三宮になどほとんど行かないし、しかもしかもプレゼント包装だったのだ!というような話)、くたびれた。状況証拠だけではそれ以上追求できないんじゃないの、と答えておく。

 疲れて、電話の後、23時半にはもう寝てしまった。

・購入物:なし

・朝食:ごはん、ポテトサラダ、トマト、長ネギの味噌汁
 昼食:お弁当(豚肉と玉ねぎの豆板醤炒め、ポテトサラダ、ゆで卵、ごはん、塩昆布)
 夕食:外食、五十三次(おでん、熱燗、冷奴、かけそば)


2004年10月14日(木) 思い屈する時でさえも

 午前6時半すぎ起床。朝、この時間はピシピシと冷える感じになってきた。朝ごはんに、鶏肉と冬瓜の煮物を食べる。美味しいが、朝からけっこう濃い。お腹がいっぱいになって眠くなる。このまままた寝てしまいたいが、そういうわけにもいかんのだ。

 会社に行く。会議と打ち合わせ。これからの仕事の進め方について考えをめぐらせてみる時、あちこちから何かこう、暗澹たる雲がモクモクとわいてくるような感じがして、どうも気分がすぐれない。果たしてこれらのことをちゃんとこなしていけるんだろうか、と思う分だけ、気持ちが少しづつ重くなっていくようだ。
 Aさんと打ち合わせをした時、いい仕事ができるようガンバリましょうね!、みたいなことを言われて、どうしたらこんな真っ直ぐで前向きな気持ちを持つことができるのだろうと、眩しいような気持ちになった。みんな偉いわ。私以外の人はみんな。

 帰り、久々に天神橋筋商店街に寄った。いつもの八百屋さんに行ってトマトとピーマンを買って、次に矢野書房に行った。四天王寺の古本市では1000円の値がついていた「マラマッド短編集」が150円で見つかった。表紙の伏し目がちな表情が格好いいハーディの短編集と共に購入。2冊で300円也。この新潮文庫の海外文学短編集シリーズが好きで、古書店でみかけるとついつい手が伸びる。昔のものほど佇まいが良いという感じがする。

 寒いので、夕食は鍋。ごはんの後は、懸案の紙芝居制作の準備に手をつけるものの、なかなか進まず。飽きて寝るまではずっと、永井龍男の「青梅雨」を読み返した。永井龍男の言葉はいつも冴え冴えとしている。 

・購入物:バーナード・マラマッド「マラマッド短編集」(新潮文庫)
     トーマス・ハーディ「ハーディ短編集」(新潮文庫) いずれも古書

・朝食:鶏手羽先と冬瓜の煮物、いんげんのゴマ和え、梅干し、味付け海苔、ごはん
 昼食:お弁当(焼鮭、卵焼き、いんげんのゴマ和え、塩昆布、ごはん)
 夕食:豚肉と水菜と豆腐のハリハリ鍋風(うどん入り)、麦酒


2004年10月13日(水) いつも、そういう格好を?

 どうも気分が晴れない。なんかゴタゴタしている。今週末から来月にかけて、いろいろとクリアせねばならない諸問題が山積していることに今日気づいた。というか、改めて確認した。どれもこれも自ら首をつっこんで率先してやった結果舞い込んできたことであって、何のせいにできるわけもなく、私が自分で片付けなければならないことなのだった。なのに、なんでこんなに気が重いの?
 いろんな場面で何かを選択してきてて、その時はベストとは思わないまでもまあベターかなと考えて選んだことのはずなのに、振り返ってみると歩いてきた道が大きく曲がってて、当初とは全く想定外ところに自分が立ってしまっていることが時折あって、今まさにそれだ。ちゃんと行き先確認して電車に乗ったのに終着駅が自分の目的地と違う、あれー、私こんなとこに来たかったんだっけか?と思い振り返っても、元の場所に戻るための終電はもう出た後なのよ、という感じ。
 なんでもいいけど、とにかく憂鬱なのでござる。

 ちょっとした調べ物をするのと、今後必要になりそうな絵本を借りるため、会社帰りに自転車で図書館に行った。日が沈むとかなり風が冷たくなっていて、ちょっと震えるほど寒かった。図書館にはそんなに長居せず、やるだけのことをサクサクやって、近くの北極星でオムライスを食べた。クリームシチューがかかっているやつを頼んだら、けっこうボリュームたっぷりでお腹がいっぱいになって、最後はそれを通りすぎて気持ち悪くなった。とても美味しかったんだけれど。
 帰り、様々な通りを北東方面にジクザクに走っていると、中央線の本町あたりの紀伊国屋に偶然行き当たり、すこし店内を徘徊した。この店は紀伊国屋にしては見やすいレイアウトで嫌いじゃない。品揃えは浅く広くという感じだけれど。「i feel」を買う。

 家に帰ったら、ネットで注文した文庫が2冊届いていた。前に図書館で借りていて、借りるだけでは飽き足らなかった本。嬉しい。
 明日の朝食とお弁当の仕込みをやってから、CDを何枚かMDにおとし、本を読んだ。サッカーを見るためずっと起きているつもりだったんだけど、お風呂に入って温かいミルクを飲んでいるうち、妙にほっこりして寝てしまった。

・購入物:佐々木基一「私のチェーホフ」(講談社文芸文庫)古書
     高田博厚「フランスから」(講談社文芸文庫)古書
     「i feel」秋号(紀伊国屋書店)

・朝食:バタートースト、トマト、柿、珈琲
 昼食:お弁当(モロッコいんげんとソーセージの炒め物、卵焼き、ジャガイモのキンピラ、ごはん、蜜柑)
 夕食:外食、北極星で(きのこのクリームシチューオムライス)


2004年10月12日(火) 金色のウィスキーを飲みながら

 朝出かける間際に、町内会長が共同募金を集めた際に渡す領収書を持ってきてくれた。領収書と一緒に赤い羽根も入っていて、これも募金してくれた人に渡すのだそうだ。会長が帰ってから中を確認してみたら、羽は一枚しか入ってなかった。募金してくれた人が二人以上いたらどうするんだろう。羽をブチブチッとむしってあげるのかしら。ふわふわと舞い踊る赤い羽根。
 赤い羽根か黒い羽根か知らんけど、とにかく町内のことに振り回される日々である。

 終業後、たまたま通りかかったのでTSUTAYAに入ってみる。クリストファー・リーブが亡くなったので、追悼の意味をこめて「日の名残り」を見直してみたくなったのだ。私にとってクリストファー・リーブは、「スーパーマン」よりも、「日の名残り」のほうが親しい。アンソニー・ホプキンス扮する執事が仕える最後の主人役で、スキッとした演技がカッコよかった。背筋が伸びる感じがした。訃報を知った時は、なんでやー、と思った。なんでやーって、ただそれだけ思った。
 いろいろと感慨にふけりながら店に行ったけれど、「日の名残り」はレンタル中だった。

 ぶらぶらとジュンクへ向かう。「未来」の10月号をもらうため。堂島へ向かう道すがら、古本屋さんを何軒かのぞいて、200円で文庫を2冊買った。田村隆一の本がまた見つかって嬉しい。丹念に歩いてみれば、これからもコツコツ集められるかも知れない。田村隆一は児童文学の翻訳でその存在を知って、今では大好きな詩人のひとりとなった。児童文学は、本当にいろんなことを教えてくれた。
 ジュンクでは「未来」と「UP」をもらう。それから「群像」とか「文学界」を立ち読みして、後ろ髪をひかれつつも今日は買わずに帰る。財布の中身が乏しいもんで。

 晩ごはんを食べて、Iさんから電話がかかってきて話した後急に睡魔が襲いかかり、化粧も落とさず23時頃から布団をかぶって寝た。妙な夢をみてついさっき(午前2時半すぎ)目覚め、ノロノロとコレを書き始めた。これから「未来」の堀江敏幸の文章を読んでもう一度寝るつもり。おやすみなさい。
  
・購入物:田村隆一「ぼくの東京」(徳間文庫)古書
     安藤鶴夫「寄席―落語からサーカスまで―」(旺文社文庫)古書

・朝食:バタートースト、珈琲、柿、リンゴ、ヨーグルト
 昼食:お弁当(インスタントのハンバーグ、ジャガイモのキンピラ、千切り大根とジャコの煮物、ゆで卵、ごはん、塩昆布)
 夕食:コスレタス入りのソース焼きそば、麦酒


2004年10月11日(月) 次第に収斂していく

 午前6時30分起床。せっせせっせと家事仕事にいそしむ。鮭を焼いて朝ご飯を食べ、その後片付けと台所の掃除。シーツを洗濯して、洗濯の合間に日記を書いて、布団を干して部屋中に掃除機をかけ、雑巾がけもして、トイレとお風呂を磨く。それから回覧版もまわした。ここまで終了したところでお昼になった。

 さっぱりと晴れたらやりたいと思っていたことはほとんどできた、と満足して畳に寝転がっていたら、前年度まで班長をやってたオバちゃんがやってきた。パーマをあてすぎたのかパンチパーマみたいなチリチリの髪になっているのが可笑しかった。大仏じゃあるまいし。
 先々月のバザーに出品するものを各家庭から集めて回らなかったでしょう、とか、裏のアパートにいるオバアちゃんのために布団の乾燥サービスを申し込んであげなかったでしょう、とか、「なんたらかんたら募金」のことはどうなってんの、とか、お宅はいつ来ても留守だから困る、とか、まあ怒られたというか、文句を言われた。実際はこんな率直な言い方ではなく、前置きが長くまわりくどくて、最初は話の要領がつかめなかったのだが、要するに私の職務怠慢を糾弾に来たというところらしい。知らなかったもので申し訳ありません、と頭を下げて謝っておく。こちらが謝ったら、いやそんなつもりで言うてるんやないんやけどね、と急に愛想がよくなった。大仏オバちゃんはそのあとも口の中で何やらゴチャゴチャと喋って、ほなよろしゅうお願いします、と言って帰って行った。
 どうやら世の中は面倒くさいもので充満しているようだ。
 あーあ、とため息をついてまた畳に寝っころがったら、そのまま1時間くらいグーグーと昼寝してしまった。

 昼から食料の買出しに行ったり、本屋で料理の本を立ち読みしたり、テテを聴きながら本棚の整理をしたりノロノロと過ごした。
 車谷長吉の「反時代的毒虫」を読んだ。読んでいると血が濁っていくような随筆を期待してたんだけど、対談集だったのでちょっと拍子抜けだった。水上勉との対談で、三島由紀夫の「金閣寺」より水上さんの「金閣炎上」のほうが優れている、というような話があって、ホントにその通りだと思った。三島由紀夫の「金閣寺」のどこが素晴らしいのか私には皆目わからん。

 夜は、ダイエーと西武のプレーオフを観たり、田村隆一の「詩人のノート」と色川武大の「怪しい来客簿」を交互に読んだりした。
 なんだかんだで午後23時頃、就寝。早寝早起きだ。 

・購入物:なし

・朝食:焼き塩鮭、じゃがいもと人参と豚肉の煮物、たまごの味噌汁、ごはん
 昼食:カレーパン、牛乳
 夕食:モロッコいんげんと豚肉のガーリック炒め、ジャガイモのキンピラ、千切り大根とジャコの煮物、ごはん、焼酎お湯割り


2004年10月10日(日) 追いつめられた鹿は断崖から落ちる

 午前7時起床。やっと晴れた。久しぶりに青空を目にした。朝ごはんを食べてからためこんでいた洗濯をする。布団も干したいところだけれどそれは諦めて、お茶とミレービスケットを携えて10時半頃から自転車に乗って出かける。

 自転車で50分くらいかかって、四天王寺まで行った。古本市で石川淳の本を探した。文庫中心にざっと見て回って3冊購入、計850円也。古本を見るのは1時間くらいでやめて、木陰に座って池にひしめきあっている亀を見ながらお茶でビスケットを食べた。亀たちはひょこひょこ池からあがって甲羅干ししている。鐘の音とお線香の匂いと塔の影と亀。お寺に参詣する人達もどことなくのんびりしてて、数ある古本市の中でも四天王寺のが一番好きかも。
 
 それから自転車を走らせて難波へ。タワーでチェックしていたCDを3枚買う。テテはこないだ試聴した時から気になっていたんだけれど、昨日「快適音楽セレクション」で紹介されたのをもう一度聴いたらやっぱりかっこよくて絶対買おうと思った。あとはナタリーワイズと最近はまっているエチオピアを。難波のタワーの6階は、客が少なくて静かなので好きだ。
 テロテロとジュンクへ移動。これでもかなり我慢したんだけれど、またたくさん買ってしまった。田村隆一と正岡容の文庫がうれしい。今日の毎日新聞で落合恵子が紹介していた絵本も買う。オーケストラの団員105人たちが、支度して服を着て家族に挨拶して電車や車に乗って演奏会場にスタンバイするまでのそれぞれを描いた絵本。絵がキュートでかわいい。

 また自転車をこいで心斎橋へ。連休二日目の日曜日のせいかあちこちでイベントをしているので走りにくくて困る。大阪市立近代美術館の心斎橋展示室(旧出光美術館)で、「佐伯祐三展」を観た。
 佐伯祐三は織田作之助に似ている。大阪生まれで若くして亡くなっていて(佐伯は30歳、織田作は34歳)、親兄姉を大切にして、憑かれたように制作に邁進して、それから何と言っても顔が似ている。だから私はこの人のことが好きだ。その絵も好きだ。
 描かれているパリは下町や裏町ばかりだ。洗濯屋、運送屋、酒場、レストラン。スポンジみたいな石の壁。書きなぐられたような広告の文字。空は曇っていて暗く、人通りも少ない。カフェを描いても、客はたいてい独りだ。佐伯祐三はきっとこういうパリが好きだったのだ。飾られ彩られた街よりも、忘れられたようなうらぶれた感じが。その気持ちには強い親しみを感じる。

 じっくり絵を見てから、隣の東急ハンズで念願のお弁当箱を買った。散々迷って結局、シーガルの丸い2段式にした。ああ、早く使いたい。しかしこれを使うということはまた会社に行くということで、それを思うと何だか複雑だ。
 日がとっぷり暮れてからまた自転車で40分くらいかけて帰る。帰宅後は餃子を食べてビールを飲んで、収穫を並べて楽しみ、明日のTのお弁当のためにいろいろお惣菜を作ったりもした。
 つらつらと思い返してみるに、今日はいつになくガツガツと買い物をしてしまったような。しばらく大人しくしておこう。

・購入物:カスキン絵・サイモント作「オーケストラの105人」(すえもりブックス)
     島尾伸三「中華幻紀」(ワールドフォトプレス)
     正岡容「東京恋慕帖」(ちくま学芸文庫)
     田村隆一「詩人のノート」(講談社文芸文庫)
     車谷長吉「反時代的毒虫」(平凡社新書)  ここまで新刊
     石川淳「影/裸婦変相/喜寿童女」(講談社文芸文庫)
     石川淳「文林通言」(中公文庫)
     土門拳「風貌・続々」(講談社文庫)
     大谷晃一「大阪学 文学編」(新潮文庫)  ここまで古書
     Tete「A faveur de l'automne」(オルターポップ)
     「ethiopiques vol.1 golden years of modern ethiopian music 1969-1975」(オルターポップ)
     Nathalie Wise「raise hands high」(five stars)ここまでCD

・朝食:巻寿司、焼きネギの味噌汁
 昼食:外食、自由軒の別カレー
 夕食:焼き餃子、コスレタスのサラダ、麦酒     


2004年10月09日(土) なにもいうことはない

 空模様、引き続き悪し。洗濯したい、布団干したい、スニーカーも洗いたい、窓をパーッと開け放って、ガーガー掃除機かけたい。でもできない。欲求不満だ。台風は来るのか来ないのかよくわからないまま、ネトネトと雨だけが降り続いている。
 家でごろごろくすぶっていたら、母よりちょっと帰ってこないかと電話あり。特に予定もないので出かける。

 京都に到着したのはお昼頃で、実家の最寄り駅に着いたら雨はもう止んでいて空もずいぶん明るくなっていた。
 実家に帰ったら従姉妹が遊びに来ていて、ケーキなどをネチネチ食べながら母と3人で四方山話をした。主に従姉妹が嫁姑問題について語る。お義母さんが子どもの進学等々に口出ししてきてもう困っちゃう、というような橋田寿賀子が泣いて喜びそうな話。母が、右の耳で聞いてすぐ左の耳から出しちゃばいいのよ、というようなアドバイスをしていた。
 地元の秋祭りのため母が鯖寿司と巻寿司を作ったので、何本かもらって帰る。それから、お弁当作りに凝っているのだと言うと、母のお手製塩昆布と大根の漬物、デザートになるからと、柿とリンゴと蜜柑をくれた。ありがたいありがたい。

 行きの電車では石川淳の「紫苑物語」を読了、帰りの電車では色川武大の「怪しい来客簿」を途中まで読んだ。「怪しい来客簿」にあんまり夢中になっていたため、帰りの地下鉄はひとつ駅を乗り過ごした。
 「紫苑物語」は、読み終わってしばし呆然とするほど面白かった。小説のあちこちに才気がビシビシと迸っていて、小説全体の佇まいが完璧にカッコ良い。それに石川淳は相当なストーリーテラーだ。素晴らしい。次は「鷹」を読むつもり。

 夜は、星野道夫の本棚にもあった「POWERS OF TEN 宇宙・人間・素粒子をめぐる大きさの旅」を引っぱり出して読む。自分の外側に宇宙があり、自分の中にも宇宙があると感じられる、壮大な本。何度読んでも飽きないし、読むたびひしひしと、世界は無限だ、と思って気持ちがいい。星野道夫がアラスカでひとり、この本を読む気持ちはすごくわかる。自分の想像をはるかに越えたとてつもなく大きいものが存在しているって知ることは、本当に気持ちがいい。それを知るために生きているって思うほどだ。
 
 夜になってようやく晴れてきた。午前0時すぎ就寝。 

・購入物:なし

・朝食:温かいうどん(ネギと卵入り)、バナナ、珈琲
 昼食:昼食というか、従姉妹が持ってきてくれたチーズケーキとか実家にあったクッキーとか柿とか、なんかそんなようなものを食べた。
 夕食:実家にて(寄せ鍋、巻寿司、冷酒(土佐鶴))


2004年10月08日(金) silent time and then pure day by day

 しとしと雨。そして寒い。今日は大雨になるそうだ。明日は台風らしいし、そうなると洗濯物がたまって不本意だ。毎日洗濯したいタイプなので。生活って天気と密着しているなあと、こういう時に実感する。

 昨日までとはうってかわって本日はヒマ。ヒマなのでNさんとKさんと雑談。ヒマ3人組。
 Kさんがこの数ヶ月で急に太って、駅の階段を登るだけでも息切れがするという話をして、Nさんが、その太り方はヤバイ、アンタこのまま太ったら若年性なんとかいうヤツでコロッといくで、と脅かしていた。Nさんはすぐ人を病気にするのが悪い癖だ。気の弱いところがあるKさんが、そうですかねーそうですかねー、子ども生まれたばっかりなんですけどねーと、本気で心配するので気の毒になった。Nさんは、まあそう心配せんでも葬式にはちゃんと香典もっていったるがな、と慰めていた。
 男の人が結婚すると急に太るのは何故だろう、と新婚のKさんを眺めながら考える。ごはんを残すと新妻に叱られちゃうのかな?

 帰りにお弁当箱を物色しようと阪神百貨店に行ってみたが、いいのがなかった。曲げわっぱがいいな、と思ったけれど、8000円くらいするので目玉が飛び出た。8000円の弁当箱に詰めるのが一切れ150円の鮭というのでは、なんかちょっとね。諦めてバスで帰る。

 晩ご飯のあと、庄野潤三ごっこ(晩酌の後にチョコを食べる、というやつ)をしてから、Tが買ってきた「Coyote」の最新号を読む。星野道夫が読んできた本の特集。蔵書リストやフェアバンクスの家に残された本棚の写真が紹介されている。こんなことされたらおちおちエロ本とかも置いとけないな。星野道夫の本を読み返してみようと思ったが、どこにしまったものやら見つけられなかった。
 ソウルセットを聴きながら午後0時ころ就寝。寒いので布団にくるまって寝る。
 
・購入物:なし

・朝食:バターロール、いちごジャム、リンゴ、ヨーグルト、珈琲
 昼食:お弁当(焼鮭、大根菜とじゃこの炒め煮、ネギ入り卵焼き、ごはん)
 夕食:焼きサンマ、ミニおでん(大根、コンニャク、厚揚げ、たまご、餅巾着、ゴボウ天)、焼酎お湯割、大根菜とじゃこの炒め煮、ごはん


2004年10月07日(木) 絵とみみずとチョコレート

 午後から神戸まで絵を観に行った。以前仕事でお世話になった方の個展。阪神電車の特急にゆられつつ、昼休みに旭屋でもらった新潮社の「波」を読む。庄野潤三の「けい子ちゃんの浴衣」を読んでいたら、私にしては珍しくチョコレートを食べたくなった。庄野潤三は買物に行ったついでに時どき「明治のチョコレート」を買って、それを銀紙にくるんだままいくつかに割って小さな缶に入れておき、晩酌の後に2かけほど食べるんだって。まあ美味しそう。缶に入れた板チョコを食べる自分を夢想しているうち目的地に着いた。平和だ。
 神戸は少し時雨れていた。ちょっと迷って会場到着、帰ってから観た感想をメールで送らねばならぬので絵の題名と特徴などせっせとメモしておく。義理にとりつかれて、いつになく熱心な絵画鑑賞となった。
 絵を見た後はちょっくら神戸探索、といきたいところなんだけど、仕事を残しているのでまたすぐ大阪へ。帰りの電車では30分間コッテリ眠り、梅田の「まるしげ」で早速、明治の板チョコを買った。思いついたらすぐ実行。この素早い行動力が仕事等々にも発揮されたらなー、私も普通の人間なんだけど。

 残業して帰ったら、ちゃぶ台の上に見知らぬ古本が15冊ほど積まれていた。今日が休日にあたっていたTが、四天王寺と天満宮の古本市で買ってきたものらしい。本はみんな埃だらけで、触ると手が真っ黒になった。
 私の分としては、高井有一と小川洋子、そして前から読みたい読みたいと切望していた徳富蘆花の随筆集「みみずのたはごと」上下巻を見つけてきてくれた。くれるのかと思ったらやはりお金を請求されたので、エライ高いなあと思いながらしぶしぶ1200円払う。「みみずのたはごと」が2冊で1000円だったという。ホントかなー、どうも疑わしい。

 夜、フェミ・クティを聴きながら、ウェットティッシュで拭いた「みみずのたはごと」を少しづつ読み始める。もったいないので少しづつ。自然描写が巧いなあ、すぐ目の前に光景が広がるような鮮やかさがある。それに少しとぼけたような味わいも。それから、フェミ・クティと徳富蘆花は案外合っているような。
 たぶん、午後11時半頃には就寝。その頃からまた雨がポツポツ降り出していた。

・購入物:徳富健次郎(蘆花)「みみずのたはごと上・下」(岩波文庫)
     小川洋子「余白の愛」(福武文庫)
     高井有一「蟲たちの棲家」(集英社文庫) すべて古書

・朝食:ぶどうパン、ヨーグルト、バナナ、珈琲
 昼食:お弁当(梅干おにぎり、サツマイモのそぼろ煮、卵焼き)
 夕食:白菜と豚肉の重ね蒸し、しめじといんげんと人参のゴマ味噌和え、湯豆腐、麦酒、ごはん


2004年10月06日(水) 無垢の日々、静けさの時

 本日も午前6時起床。お弁当作り、朝ご飯、その後片付け、洗濯物干し、身支度、等々終えて、時間が余ったので扇風機を掃除して押入れにしまう。麻素材の服とかサンダルとか団扇とか、ひとつひとつ夏っぽいものをしまっていく時に季節の移り変わりを感じる。

 特にいいこともないのに仕事が煩雑で、もう嫌になってきた。こないだ張り切って行ったプレゼンもイマイチ手ごたえなく終わったし。担当者に、うーんまあ考え方は面白いんですけどねえ、とか言われてしまった。面白いんですけどねえ…の続きは何やねん。最後をにごさず、自分の意見はちゃんと言ってほしいものだ。

 残業してお腹が空いたので家まで我慢できず、堂島でワンタンメンを食べた。それからフェミ・クティのライブ盤でも買って帰ろうとふらふらとタワーに行ったら、ソウルセットの新譜が出ていてビックリした。ずっと心待ちにしていたにもかかわらず本日このようなものが発売されるとは全く知らなかったが、何となくタワーに行ってみようと思った日がちょうど5年ぶりの新譜の発売日だったとは、何たる僥倖であろうか、音楽の神様ありがとう。と心で手をあわせて感謝して、フェミ・クティとあわせて2枚購入して帰る。

 というわけで、今日は寝るまでずっとソウルセットを聴いていた。買ってきたシングルをリピート2回して、あとは久しぶりに「Jr.」を。カ、カッコいい。トロける。

・購入物:tokyo no.1 soul set「change my mind」(zoot sunrise sounds)
     femi kuti「africa shrine」(P-ヴァイン)

・朝食:ごはん、焼鯖、梅干、味付け海苔、豆腐とワカメの味噌汁、りんご
 昼食:お弁当(焼鯖、小松菜と卵の炒め物、ごはん、梅干、リンゴとバナナ)
 夕食:外食、ツボヤ(ワンタンメン)


2004年10月05日(火) ないないづくし

 雨。早朝は激しい降りかただったけれど、出かける頃には霧雨みたいになった。雨でまわりの景色が煙ったように見える。少し寒い。通勤途中ではコートを着ている人やマフラーをしている人もいて、もうこんな格好をしてもいい季節なんだ、と思った。今頃って、どんな服を着ていいのかわからない。と言うか、着る服がない。

 というわけで、帰りにいくつか店をのぞきシャツやスカートを見て比較検討する。お店の人が、西梅田に「ヒルトンプラザ」がオープンしたよ、と教えてくれたのだが、今日オープンしたてでごったがえしているところに行く気もしないし、入っているテナント名を聞いてみると私が欲しいものも買いたいものも買えるものも多分そこにはないしそれに、何と言っても金がない。そうだ私お金がなかったんだった、と思ったら急にアホらしくなってきて、バスに乗って家に帰った。
 いつもより少し手前の停留所で降りて、スーパーで鯖とベーコン、果物屋さんでバナナとリンゴ、本屋で「考える人」を買う。『石井桃子の百年』と、橋本治の連載『浄瑠璃を読もう』を読むため。
 浄瑠璃といえば、ポストに11月文楽公演のチケットが届いていた。舞台に近いど真ん中で、今までで最も良い席だった。忠臣蔵の話自体ははっきり言って嫌いなんだけど、文楽となるとまた話は別なのだ。楽しみ楽しみ。

 夜9時半か10時前頃、ごはんも食べたし後片付けもしたし、珈琲も淹れて、さあ本を読もうとしたら、昨日一緒に飲んだ友人より電話があり、近くにいるのだが今から行ってもいいかと言うので仕方なく、いいよ、と答えたら、5分もかからないうちにやって来た。暗い顔をしているので悪い予感がしたが、声は案外元気だった。
 珈琲を飲むかと聞いたら、ビールがいいというのでビールを出す。なんかツマミはないのか、と言うから大根を切って大根サラダを作り、水菜の胡麻和えを与えた。それから昨日の話の続きと報告。どうどう巡りの話をフンフンと聞く。結局0時頃まで話す。帰り際に友人が、こうして夜に突然誰かに会いたくなっても会える友達が本当に少なくなってしまった、みたいなことを言ったので急に寂しくなった。
 玄関に立って友人の自転車が小さくなっていくのを見送る。彼女が帰ったら急に眠くなって、汚れた食器も洗わずそのまま寝てしまった。 

・購入物:「考える人」2004年秋号(新潮社)

・朝食:バケット、キノコスープ、茹でて塩をかけたジャガイモ、りんご、珈琲
 昼食:お弁当(ジャガイモのベーコン巻き、ほうれん草のおひたし、ゆで卵、ごはん)
 夕食:豚肉と大根と人参の炒め煮、水菜の胡麻和え、豆腐とワカメの味噌汁、ごはん、麦酒


2004年10月04日(月) お弁当と本と変な人

 午前6時起床。晴れ。お弁当を作る。石田千さんの本を読んでから、毎日出来るかぎり作ろうと決めた。自分でこしらえるお弁当が一番の御馳走なんじゃないかって、最近本気で思うようになった。お給料が入ったら、ちょっと奮発して新しい弁当箱を買おう、と楽しみにしている。何でもモノからは入るのは私の悪い癖だけど。
 
 今日は週明け早々、少々儲かりそうな仕事の話が舞い込んできたので、朝からあちこち電話して頼みこんだり教えを乞うたり、資料を作ってもらったり届けてもらったり探してもらったりして、様々な人の手を借りて張り切って働く。急ぎの仕事なのにみんな快く協力してくれてすごくありがたかった。久々に労働の充実感のようなものを感じた。話がまとまればいいのになあ。でも、大山鳴動して鼠一匹さえも出なかったという例が今までにいくつもあるので、あんまり期待しないほうがいいかもしれない。
 
 夜は、友人と飲み行く約束をしていた。彼女の打ち合わせが長引いて、1時間半くらいドトールで待たされる。その間に荒川洋治の「忘れられる過去」を読んでしまった。随所で、いろいろと勇気づけられた本であった。「夜のある町で」とあわせて、文中に出てくる、気になった作家や詩や文章をメモにとっていったら、けっこうな量になった。荒川洋治って変な人だなあ、と思う。私が誰かを、変な人だなあ、と思う時はもうその人のことを好きになっている時で、この場合の「変」というのはタイヘンな褒め言葉なのだった。

 友人とは深夜までタラタラと話をした。大人になるのはしんどいことだと心底思った。
 別れたのは何時頃だったか、帰宅してテレビをつけたら、井川がノーヒットノーランを達成したと、ニュースで言っていた。ノーヒット試合もいいけど、髪の毛を切れ。井川も変な人だ。この場合の「変」も褒め言葉なんだろう、多分。
 それから、どこをさがしても見つからないのでしびれをきらしてネットで注文した「池袋モンパルナス」が届いていた。嬉。早速パラフィン紙を巻こう。

・購入物:宇佐美承「池袋モンパルナス―大正デモクラシーの画家たち」(集英社文庫)古書

・朝食:バタートースト、イチゴジャム、リンゴ半分、珈琲、ヨーグルト
 昼食:お弁当(ニラ卵、エリンギのガーリック炒め、昨夜の残りのサツマイモ、ごはん)
 夕食:店名忘れた、ベトナム料理屋(生春巻き、ソフトシェルのチリソース、焼ビーフン、生中麦酒2杯と焼酎水割り)


2004年10月03日(日) 日がいくつも流れすぎる

 肌寒い朝。布団に包まって朝寝坊。9時くらいにペリカン便のおじさんに起こされた。荷物の中味は「ベルメゾン」のカタログ。前に野菜の水きり器を買ったら、それから季節ごとに送られてくるようになった。分厚いのが3冊も入っている。ペラペラめくってみて、結局欲しくなったのは米研ぎボウルだけだった。ボウルの一部分が「日清焼きそばUFO」の湯切り口のようになっていて、水を切る時いっしょに米が流れ出ないようになっているやつ。約2000円。欲しいな、とは思ったけれど、たかがボウルに2000円もバカみたいだな、と思い直してやめた。

 11時頃朝ご飯を食べて、気合をいれて掃除をする。部屋と風呂掃除。曇り空が気になるけれど、洗濯もする。掃除の間、「日曜喫茶室」を聞く。池内紀が出ている。池内紀は今日の「日曜美術館」にも出ていた。美術館の次は喫茶室か、散歩ルートとしてはなかなか良い感じだ。
 昼下がり、私もぶらぶら散歩に出る。ようやく昼間でも、半袖では寒い気候になってくれた。なるべくあんまり歩いたことのない道を選んで歩く。小学校の校庭からは運動会の歓声が聞こえ、中学校の校舎からはトランペットの音が聞こえた。大根やネギ、ニラやピーマンなどがたくさん実っている家庭菜園がある小さな平屋の家の前で、おじいさんが野菜にゆっくり水をやっているのを横で眺める。ピーマンはまだ小さかったけれど、ニラとネギはピンピンしていた。立派に育っていますね、と声をかけたら、おじいさんは嬉しそうに、美味しいでえ、と言った。近所の古本屋さんで、杉本秀太郎の本を見つけたので買う。それから古本屋の近所の豆腐屋で、分厚い油揚げを一枚買った。餅とか焼く網があるやろ、あれでサッと焼くんやで、サッとやでサッと、と店のオジサン。言われたとおりにしたらすごく美味しかった。

 夜は、Tが買ってきた植草甚一の「ぼくの読書法」と、坪内祐三の「まぼろしの大阪」をパラパラ読んだ。人の買ってきた本が面白そうに見えるのは何故だろう。「まぼろしの大阪」で一番びっくりしたことは、「ヤングOH!OH!」が東京でも放送されていたらしいこと。あんなものが全国ネットだったとは…。
 「夜のある町で」を読了してから、午後11時半には就寝した。

・購入物:杉本秀太郎「異郷の空 パリ・京都・フィレンツェ」(白水Uブックス) 古書

・朝・昼兼用食:塩鮭、卵焼き、茄子と長ネギの味噌汁、梅干、ごはん
 夕食:鯖の味噌煮、キノコ汁(マイタケ、エリンギ、シメジ、シイタケ、エノキ)、油揚げの網焼き(ショウガとカツオ、しょう油をかけて食べる)、薄く切ってフライパンで焼いたサツマイモ(甘くてオヤツみたいだった)、大根の漬物、ごはん、麦酒


2004年10月02日(土) 甘い狂気

 9時頃家をでて、図書館で打ち合わせの後、Iさんと外で2時間くらい話をした。疲れた。
 私は朝6時半頃に朝ご飯を食べたきりでもうそろそろお腹が空いていたのだけれど、Iさんは、じゃあちょっとここらで、とか言って図書館の前にあるベンチのところに座っていきなり真剣な話を始めだし、食べ物のことなど言い出せる雰囲気じゃなくなって、空腹をごまかすのに苦労した。それに加えてIさんは煙草がダメなのでこれを吸うこともままならず、意見を求められても頭のめぐりがいつもに増して鈍重で、気の利いたことのひとつも言えなかった。
 私が応えに窮しているとIさんが、そうねアナタはコンプレックスがないからこんな気持ちはわからないわよね、と言ったのですごく意外で、私にもコンプレックスくらいありますよ、と答えたのだが、じゃあ具体的にどういう点かと聞かれたら、考えてみたところこれといって思い浮かばず、そもそもコンプレックスってどういうものなんだろうと、今日はずっとそれが頭にひっかかっていた。
 とりあえず、まあ劣等感みたいなものはあるけれど別に気に病んでいないだけですよ、と言ったら、そういう状態を「コンプレックスがない」というのよ、とIさんは呆れたように言った。

 腹を空かせて帰宅。何だったんだ。家にあったインスタントラーメンを作って食べビールを飲みながら、私のコンプレックスとは何かを考え続けるもやはりわからず。あきらめてゴロリと寝ころび、その辺りにある本、雑誌の類を斜め読みする。中野重治や荒川洋治、それから小島信夫。「en-taxi」に載ってた小島信夫の「記憶」という短編を読んだら、面白くてさらに頭が混乱した。人間の頭の中とは一体どのような仕組みになっているのだろう。

 夜は、レーザーディスクでパトリス・ルコント「仕立て屋の恋」を観る。
 公開当時劇場で観たけれど、細かいところはすっかり忘れていた。陰影ふかいカメラワークと、マイケル・ナイマンの音楽が切ない。誰かを真剣に好きになるいうことは、人生を狂わせるということで、天国と地獄は薄皮一枚の差だ。怖いなあ。純愛とはやはり恐ろしいものですよ、ある意味ね。

・購入物:なし

・朝食:バケット、ウィンナー、カレー粉で味付けしたキャベツ、バナナ、珈琲、牛乳
 昼食:サッポロ一番塩ラーメンに、ゆで卵とモヤシとニラと豚コマ切れ肉を炒めたものをトッピング、麦酒
 夕食:たまごどんぶり、冷奴


2004年10月01日(金) 朝から晩まで夢の中

 午前6時起床。空気がピシッと冷たく、けっこう寒い。そういえば今日から10月なのだった。カレンダーをめくって、ラジオのニュースを聞きながら、朝ごはんとお弁当作りにいそしむ。昨日551の蓬莱で買ってきた肉だんごをフライパンで玉ねぎとピーマンと一緒に炒めて、お弁当のおかずにする。野菜に肉団子の甘酢がからまって美味しい。ちょっと工夫でこの旨さ、というやつだ。

 今日は本当に良いお天気だったので、昼休みはIちゃんと近くの公園でお弁当を食べた。空が高く真っ青で、風がそよそよと心地良い。
 Iちゃんは午前中にあった会議で、Mさんが「えー、端的に申しますと」と何回言ったか(Mさんは「えー、端的に申しますと」というのが口癖なのだ、しかしその後に続く言葉は端的であった試しがない)ということについて話し、さらに私が、会議で発言する時のMさんの物真似をしてふたりでゲラゲラ笑っていたら、隣のベンチに腰掛けておられたおばあさんに、「楽しそうねえ」と声をかけられた。それから、「女の子どうしで仲が良かったら、恋人がいなくても充分楽しいわよねえ」と言われ、すっかり男がいないと決めつけられた私たちは愕然として、その後はあんまり喋らなかった。

 本日の買いもの。午後から神戸にでかけ、シャーペンの替え芯を買うためナカザワ文具に入った折、パラフィン紙を見つけて、A2くらいのサイズのものを4枚買った。それから帰りしなに天満橋に行ったので、チロッとジュンク堂に寄って、梅田の本屋さんにはなかった平凡社ライブラリーの「中野重治評論集」を買った。こないだから「愛しき者へ」という書簡集をポツポツ読んでいて、これがまたけっこう面白く、なんか最近、地味な中野重治ブームなのだ。

 夜は、買ってきたパラフィン紙を広げてカッターで切り、堀江敏幸の本と牛腸茂雄の写真集に巻いた。私は3冊くらいやって飽きてやめたが、Tは面白がってわりとしつこくやっていた。古本屋でもないのに。パラフィン紙と遊んだ後は、テレビで少しだけ「八つ墓村」を見た。バカバカしい。
 今日はどうにもこうにも眠くてたまらず、午後11時には就寝。 

・購入物:中野重治「中野重治評論集」(平凡社ライブラリー)
 
・朝食:肉じゃが、梅干し、味付け海苔、卵焼き、ごはん
 昼食:お弁当(肉団子とピーマンの甘酢炒め、モロッコいんげん、ごはん)
 夕食:近所で買った一口ヒレトンカツ、キャベツのコールスローサラダ、冷奴、茄子と長ネギの味噌汁、ごはん、麦酒


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