昨日・今日・明日
壱カ月昨日明日


2003年07月31日(木) あーあ

 通勤途中に、セミがジャンジャン鳴いている公園があって、今朝、何人かの少年が集まってセミ取りをしていた。この間、耳鼻科でナンパした男の子がいるかなあ、と思ってさがしてみたがよくわからなかった。私が、あの子の顔をもう忘れてしまっているだけなのかもしれないけど。

 「カンバセーションピース」を読んでいたら、おじいちゃんのことを思い出した。野球について、おじいちゃんがいつも言っていたこと。
 一、二塁間でも、センター前でも、三遊間でも、ボールが外野に抜けていく瞬間を見るのはもう最高に気持ちがいい、あの気持ちは球場でなくては絶対味わえない感動だ、野球は球場で見るのが一番だ。
 小説でも似たようなことが書いてあって、みな思うことは同じなのだな、と思った。
 小学生の頃、おじいちゃんと一緒によく球場に野球を見に行った。高校野球の地方大会だったと思う。私が外野にボールが抜けていく感動を味わったのはもっと後のことだったけど、野球を見るのはとても楽しかった。

 今日は久々に一人暮しの夜だった。CDをとっかえひっかえ聴きながら、気づいたら350の缶ビール5本、一人で飲んでいた。いくらなんでも飲みすぎなんじゃないの。こんなこともうやめとこう。

・購入物:なし

・朝食:とろろかけご飯、卵焼き
 昼食:お弁当(白身魚のチリソース、とうがらしの炒め煮)
 夕食;小松菜とニンジンの和風焼きそば、マグロの山かけ、麦酒)

 


2003年07月30日(水) 強く、美しいもの

 朝、出かける前に聴いていた「宇宙フーテン・スイング」が、一日中頭の中で回っていた。そのせいで気持ちがハイだったのか、仕事も強引にガンガンどんどん進めて、さっさと帰る。もう細かいことなどいちいち気にしていられるもんか。まあ、もともと気にしてないけどさ。
 このアルバムの中の「もぐらとまつり」という曲がすごく好き。かっこいいよ。

 本を買いに行く。今日は新潮社にお金を使った。
 保坂和志の「カンバセーション・ピース」は「新潮」連載時に読んでいるけれど、ソフトカバーであることと、加筆修正あり、というので買った。加筆修正って、平仮名を漢字に直したり、「でも」を「しかし」にするだけじゃないよね?

 帰ってから「東松照明1951-60」(作品社)を眺める。
 私はこの写真集が好きで、ヒマがあれば開いている。前半の子どもたちの写真ももちろん好きだけど、一番好きなのは「中村遊廓」と題されている、46頁の女性の写真。眉のりりしい女の人が、鼻からタバコの煙をブオーッとふきだして、カメラを睨んでいる。なんか文句あんの?って感じ。これがまた、力強くて美しくて実にいいのだ。
 この写真集を見ていると、負けるもんか、って思う。何にかわからないけど、何かに。補強されていくような気がする。東松照明の写真はそういうところがあると思う。

・購入物:小林信彦「おかしな男・渥美清」(新潮文庫)
     吉村潮「浮かれ三亀松」(新潮文庫)
     小沢昭一・大倉徹也「流行歌・昭和のこころ」(新潮文庫)
     保坂和志「カンバセーション・ピース」(新潮社)

・朝食:カレーパン、バナナ、牛乳
 昼食:お弁当(きんぴらゴボウ、タコ酢の物、ちくわの天ぷら、ご飯)
 夕食:外食、居酒屋で(麦酒、湯豆腐、サラダ、牛すじ煮込み、など)


2003年07月29日(火) 「黒いハンカチ」

 夕方から雨で、かなり蒸し暑い。今年は涼しい夏だとは思うけれど、大阪の中心地はなんでこんなに不快な暑さなんだろう。どこか空気の澄みわたったところへ行きたい。 
 
 小沼丹の「黒いハンカチ」を読む。うーん、あんまりおもしろくない。かなり楽しみにしていただけに、ありゃ?という感じ。
 推理短編小説集なんだけど、どの小説も動機が弱い、というかはっきり書かれてないし、ニシ・アズマの推理もなんかインチキくさい。どれを読んでも、ふうん、という感想以上のものがでてこないのだ。
 例えば「懐中時計」に見られるような、読者を突き放した鋭さ、みたいなものがなくて、全体的にボンヤリしている。ベタベタと感情を押しつけてこないで、ひたすらクールなところはさすがだと思うけれども。
 私はミステリの面白さがあんまりわからなくて、何しろ宮部みゆきの小説を読んだ時も、それが一体どうしたの、としか思えなかったのだから、このての小説の私の感想はあんまりあてにならないと思います、多分。

・購入物:なし

・朝食:鮭塩焼き、ちくわ、味噌汁、ご飯
 昼食:レーズン入りカマンベールチーズパン、牛乳
 夕食:麻婆茄子、冷奴、モロヘイヤのゴマ和え、麦酒、ご飯 


2003年07月28日(月) つぎ

 午後1時からの会議に必要な企画書を作らねばならなかったのだが、全然できない。全然進まない。先週からやっときゃよかったのになあ。時間だけが刻々と過ぎていく。午前中したことといったら、現実逃避に日記を書いただけ。
 もうダメだ、逆さに振ってもなあんにもでてきません、と思った途端、神が降りてきたように考えがわいてきた。なんとかギリギリ出来上がる。人生之綱渡り。このラスト30分の集中力を土壇場にしか発揮できないところが、私がイマイチパッとしない所以なのかもしれない。
 結局、企画は通らなかった。なんじゃそら。何だったの、私の午前中。やっぱり、やっつけ仕事は内容空疎を極める、ということか。ま、いいや終わったことは。どんどんつぎ行く〜。

 夜、洲之内徹を読んでいたら、『「一夫一婦制亡国論」に大いに賛成する』というくだりがあって、私も賛成賛成とうなずいていたら、友人から電話。恋愛相談。またか。
 話を聞けば聞くほど、男が逃げているような気がするので、正直にそう言う。きっと彼女も気づいてるのだろうけど、気づかないふりをしているのだろう。しかしここを乗り切らなければ。私達には「次」があるのだ、今は到底信じられなくても、「次」は必ず待っているのだよ。

・購入物:なし

・朝食:トースト、オムレツ、珈琲
 昼食:ポテトサラダサンド、牛乳
 夕食:豚とパセリとチンゲンサイのソテー、味噌汁(豆腐と素麺)、オクラ、ご飯

 
 


2003年07月27日(日) タコ焼き

 日曜美術館を見る。今日は土門拳。「筑豊のこどもたち」から「古寺巡礼」。
 あかん。朝からこんなさみしいものを見たら、一日立ち直れない。
 室生寺と法隆寺に行きたくなる。来週行こう。

 食器棚の整理をしていたら、タコ焼き器(っていうの?)が出てきたので、タコを買ってきて、タコ焼きを焼く。キャベツをバサバサ入れて焼くと、とてもおいしい。仕事辞めて、タコ焼き屋でもしようかなあ。6個500円くらいの、高級タコ焼き屋。絶対売れないと思うけど。

 散歩中、古本屋で「日本文学全集」の徳田秋声の巻2冊を200円で買う。「あらくれ」や「縮図」など、主な小説がほとんど読めるので。他に田山花袋・岩野泡鳴・近松秋江が一緒に収録されている巻もあったけど、この3人をまとめて読むのもなんだか疲れるなあ、と思って見送った。
 それから、うなぎを買って帰った。いまだかつて夏バテなどしたことがないが、まあとりあえず食べとこうということで。

 教育テレビの「劇場への招待」。今日は文楽で、劇場でも観た桐竹勘十郎の襲名披露狂言なので楽しみにしていた。「口上」まではしっかり見ていたのに、「絵本太閤記」の作品解説のおっちゃんの話のところで寝てしまった。起きたら終わってた。かなしい。

・購入物:日本文学全集「徳田秋声一・二」(中央公論)
     野坂昭如「野坂昭如の戯れ唄道中」(新旅行選書)
  
・朝・昼食:たこ焼き、麦酒
 夕食:うなぎ、タコときゅうりと素麺の酢の物、イカフライ、麦酒、日本酒(剣菱)、ご飯


2003年07月26日(土) 「絵のなかの散歩」

 朝から耳鼻科へ行く。実は2、3日前から右耳が痛かったのだ、口に出すのもこわくて、誰にも言ってなかったけど。昨夜からワンワンと耳鳴りまで加わって、なんだか幻聴みたいな気もするし、ああとうとう頭がおかしくなったのか、と思ったりしてたんだけど、だんだん読書も集中してできなくなってきて、本が読めないのは死活問題なので、仕方なく病院へ行くことにした。
 医者ってすごいなあ、ちょいちょいと治療してもらったらすぐ治っちゃった。痛いと思ったらもっと早く来なさい、と怒られた。私は子どもか。

 待合室で、中耳炎の治療に来ているらしい、小学2年生男子と話す。夏休み何して遊んでんの、と聞くと、セミ取り、だって。セミ取りかあ、いいなあ。私もしよ。

 健康を取り戻したので、午後から淀屋橋に東松照明の写真を見に行く。それから中之島公園で、洲之内徹の「絵のなかの散歩」を読む。

 「絵のなかの散歩」の中の、例えば『赤まんま忌』とか『佐藤哲三「赤帽平山氏」』などの章を読んだり、口絵の海老原喜之助の「ポアソニエール」を見たりして、平然としていられる人を私は絶対信用しない。これらは必ず人の心を動かして、揺さぶりまくるはずだと思う。もう頭を抱えちゃうよ。
 「絵のなかの散歩」は品切れで、書店では手に入らない。世の中何かおかしい。それならせめて、「気まぐれ美術館」を「新潮文庫の100冊」に入れろ、と声を大にして言いたい。

 海老原喜之助の「ポアソニエール」について、洲之内徹はこう書いている。
『こういう絵をひとりの人間の生きた手が創り出したのだと思うと、不思議に力が湧いてくる。人間の眼、人間の手というものは、やはり素晴らしいものだと思わずにはいられない。他のことは何でも疑ってみることもできるが、美しいものが美しいという事実だけは疑いようがない。』

・購入物:ナンシー関「ナンシー関大全」(文芸春秋)
     暮しの手帖5号

・朝、昼食;チキンサンド、珈琲
 夕食:外食(揚げワンタン、麦酒)


2003年07月25日(金) 本によばれる

 昨夜寝る前に、Tがどこからかもらった外国のお酒を一人で飲んだ。いい香りで爽やかな味だから、クイクイいける。ロックで飲みながら日記書いたり、本読んだりして、いい気分になって寝た。
 そしたら今朝、頭は痛い、吐き気はする、ものすごい二日酔い。あれは一体どういう酒?と聞いたら、「あれ、アルコール度数50度らしいで」と言う。わお。教えといてくれよ。おかげで午前中いっぱい、機能不全な人間になってしまった。
 
 帰宅すると、「虎辞書なる」をやってたので見る。これ、私が唯一見てる番組なんじゃないだろうか。今日は1982年の巨人戦、川藤がサヨナラヒットを打った試合。
 川藤は球団から引退通告された時、「オレは阪神が好きだから、給料はなくていいから働かせてくれ」と言ったんだよ。そんなカッコいいこと、私も一回言ってみたいよ。その後、川藤がオールスターに出場して二塁打を打った時、鳥肌が立つくらいホントにうれしかった。

 今日も帰りにふらりと古本屋さんに立ち寄って、何冊か安い本を買った。偶然手に取った、野口富士男「感触的昭和文壇史」の第一章は『芥川龍之介の死』だった。ほらほら、また本に呼ばれた。本の世界にはなんらかの神がいると思う。

・購入物:安岡章太郎「酒屋の三里、豆腐屋の二里」(福武文庫)
     庄野潤三「ザボンの花」(福武文庫)
     野口富士男「感触的昭和文壇史」(文芸春秋)
     野村無名庵「本朝話人伝」(中公文庫)
     林美一「枕絵の巨人たち」(バニーブックス)  すべて古書

・朝食:食べられなかった
 昼食:ミルクパン、牛乳
 夕食:外食、カルビ石焼きビビンバ、麦酒


2003年07月24日(木) 河童忌

 ミルトン・ナシメントのデビュー盤と、今日発売したばかりのソウルフラワーユニオンのCDを買いに行く。
 「シャローム・サローム」を2回とミルトン・ナシメントを1回聴く。良いわ、良いです。これを聴かずに、一体何を聴けというのだ?
 これからしばらく、この2枚のCDで生きていく。

 今日は芥川龍之介の命日。
 生前、芥川は「うんと暑い夏に死んで、みんなを困らせてやるんだ」と言って笑っていたらしい。みんなが暑くて困ったかどうか知らないけど、無念だったことは間違いない。無念で無念で、どうしようもなかったと思う。
 晩年の、大正の末から昭和にかけて書かれた芥川の小説や断章は、どれもこれもみな遺書みたいで、読んでいても苦しくなるものが多い。辛くて、何とも言えず哀しくなる。文字どおり、命をかけて書いていたのだから当然なのかもしれない。
 
 もう少し身体が丈夫で、もう少し強い心があって、もう少し凡庸だったら、ちょっとは楽な人生だっただろうか。

 芥川の命日は「河童忌」ということを、今日はじめて知った。
 もし自分の死んだ日が「河童忌」といわれていると芥川が知ったらきっと、口を歪めて笑うと思う。

・購入物:ソウルフラワーユニオン「シャローム・サローム」
     ミルトン・ナシメント「トラヴェシーア」    以上CD

・朝食:フランスパン、珈琲
 昼食:お弁当(鮭、ちくわの天ぷら、卵焼き)
 夕食:野菜炒め、子かぶとさつまあげの煮物、麦酒、ご飯


2003年07月23日(水) 「小山清全集」

 帰りのバスで隣に座った男の人、成田三樹夫にそっくりだった。ホントに似てた。まじまじ見てしまった。まさに「仁義なき戦い」。か、かっこいい。久々に一般人でかっこいい人を見た。でも服のセンスは、う〜ん、って感じだけど。
 成田三樹夫が降りるまで乗っていようかな、とちらっと思ったけど、やっぱり先にバスを降りた。似てるけど、あの人は成田三樹夫じゃないもんな。あたり前か。

 図書館の返却期限もとっくにすぎてしまい、明日には返却せねばならない「小山清全集」から何編か読む。どれもこれも、読んだ後、しばしボーッとしてしまう。読み終わったら、すぐまたもう一回読みたくなる。特に小山清が新聞配達をしていた頃を題材にした小説が、たとえようもなく好き。
 これは図書館で借りて読むような本じゃない、何月何日までに一気に読むとか、そんな読み方は愚の骨頂だと思う。これは自分でお金を出して買って、ゆっくり、じっくり読むものなんだ。特に小山清のような作家の本は。
 小山清は太宰治を師と仰いでいて、『この人が生きているうちは、僕は孤独ではない』とまで思っているようなんだけど、そこんところが私とは趣味が合わないような気がしないでもない。

 今日の晩ご飯はすき焼き。豪華でしょ。肉は鶏肉で、しかもちょっとだけで、あとはほとんど野菜と豆腐だけど。阪神のサヨナラ勝ちで、よりいっそう美味しくいただきました。
 
・購入物:なし

・朝食:トースト、珈琲
 昼食:サラダ冷麺
 夕食:すき焼き(うどん入り)、麦酒


2003年07月22日(火) 来てね

 朝からよその会社で会議。疲れたあ。
 今日初めて会った、オーソン・ウェルズの部下というのが、何とも変わった人で、煮ても焼いても食えないとは、まさにあの人のためにある言葉だと思う。とにかくもう、喋る喋る、一人で喋って一人で笑い、おまけに駄洒落を連発する。助けて〜。何で駄洒落を言うかなあ、この人がいたらクーラー要らないわ。
 何でもいいけど、あんまり会いたくないタイプだ特に午前中は、と思っていたら、明日の朝イチに打ち合わせすることになってしまった、アーメン。
 
 帰ったら、郵便局から不在通知が届いていて、郵便物はジョアン・ジルベルトのチケットだった。あらら来ちゃったよ、チケット。夢みたい、「生ジョアン」に会えるなんて。
 っていうか、ホントに来日するのか?「パジャマを着た神様」を読んでいると、どうもこの人信用できないんだけど。

・購入物:なし

・朝食:バターロール、キュウリとカニカマサラダ、ゆで卵、珈琲
 昼食:サツマイモパン、カレーパン(ピロシキ、と書いてあったから買ったのに、中身がカレーだった。くそお)、牛乳
 夕食:チンゲンサイとアスパラの炒め物、冷奴、トマトサラダ、ご飯

 

 


2003年07月21日(月) 長くて、幸せな一日を

 朝10時頃、家の前で自転車をみがいていたら、阪神のメガホンをぶら下げ、ハッピを着込んだ近所のおじさんとその一人息子、コウちゃんがやってきた。今から甲子園に行く、雨が降らないか心配だ、と心の底からうれしそう。今年はまだ甲子園に行ってない、と私が言うと、コウちゃんはタイガースの袋に入ったチョコレートを一個くれた。当然デーゲームなのだろうと思ったのだが、ナイターだという。あの親子の、今日一日はきっと長いだろう。でも幸せだろうなあ。
 テレビで試合を見ながら、二人が画面にうつらないかと探してみたけど、当然、わからなかった。

 芥川龍之介の晩年の小説を何編か読む。宇野浩二が一番ほめていた「玄鶴山房」や「点鬼簿」、「春の夜」など。芥川の初期作品は滅法巧いけど、へえ、とか、ふうん、としか思えなくてあんまり好きではなかったが、後期はいいなあ。人間を見つめる、この冷たい目。
 
 夜はジョアン・ジルベルトを聴きながら、文藝春秋の「本の話」を読む。中野翠の連載、先月に引き続いて、私が思っているとおりのことがそのまま書いてあって笑ってしまう。私も、嫌いな言葉のない人にはなるべく近づきたくない。

・購入物:なし

・朝、昼食:ジャーマンポテト、大根と厚揚げの煮物、ご飯
 夕食:鮭の塩焼き、モロヘイヤのおひたし、トマトサラダ、玉ねぎの味噌汁、麦酒、ご飯
 
 


2003年07月20日(日) 「女殺油地獄」

 朝から、玉ねぎ、ニンジン、ピーマン、パプリカ、セロリ、ズッキーニ、トマト、オクラ、ニンニク、を使って「でまかせラタトゥユ」を作り、茹でたてパスタにかけて食べる。もう、最高においしいよ。天気もまあまあ上々だし、昼間からビールを飲んで、いい気持ちなった。いい気持ちになってから、部屋の掃除をする。

 午後3時頃からおでかけ、細々と買い物をすませてから、6時から文楽劇場で「女殺油地獄」を観た。
 「女殺油地獄」なんて題名を考えつくということからして、近松門左衛門は天才だと思う。伏線はきっちりはってあるし、登場人物への洞察は深いし、見せ場は迫力満点だし、救いようのない話だけど人の心の機微がちゃんと描かれている。
 
 「豊島屋油店の段」、本当にすごかった。何しろ竹本住太夫が素晴らしかったし、簑助さんの与兵衛も凄味十分で、もう舞台に釘付け状態。もうあれは人形じゃないぞ、人間以上のなにものかだ。なんで文楽を観るのはこんなに楽しいんだろうか。
 もちろん人形を観るのもドキドキするんだけれども、浄瑠璃と三味線の音色を聴くのも、すごく好き。10年くらい前は、こんな辛気くさいもの聴いていられるか、なんて思っていたんだから、人間なんてどう変わるかわからない、軽薄なもんだ。
 まあとにかく、文楽をとりまく全てのことが好きなのよ。オダサクを読まなかったらこんな素晴らしいものを知らないで生きるところだった、ホントに感謝。

 ご飯を食べてから、かなり長く難波のタワーレコードをうろつくも、結局何にも買わずに帰る。よかった、よかった。

・購入物:會津八一「渾齋随筆」(中公文庫)
     大曲駒村「東京灰燼記」(中公文庫) 以上古書

・朝、昼食:ラタトゥユのパスタ、オクラの和え物、小かぶと卵のスープ、麦酒
 夕食:外食(五目そば、餃子)
 


2003年07月19日(土) 正なることより雅なることを

 午後から休日出勤。全然おもしろくない。

 とろとろと仕事場に行くと、今日一緒に働くことになっている女の子達が楽しそうに話をしていて、ねえねえフクダさんは血液型何型ですか?、と聞いてきた。私は血液型の話がキライだ。でもそうも言えないので、B型、と答えると、えーイヤアン、とか、やっぱり〜、とか言って笑われる。
 なんで血液型を言っただけで、イヤアン、なんて言われるの?やっぱり〜ってどういう意味やねん。わけがわかりません。

 とにかく、今日のところは無事終了、とっとと帰ってやる。
 帰って「ミュゼ」を読んでいたら、ジョアン・ジルベルトの初来日公演があることがわかって居ても立ってもおられず、あれよあれよという間にチケットを購入してしまった。これで9月に江戸へ行かねばならないはめになっちゃった。何が何でも有給とろ。

 それから宇野浩二の「芥川龍之介」のこと。長い回想作家論だったけど、この本を読んでホントによかった。陰気で神経質で堅苦しそうな気がしていた芥川龍之介という人のイメージが、完全に変わった。以下、芥川が遺した言葉。一生忘れない。
『正にして雅ならざるよりも、正ならずして雅なるものを高位におけ、正なることより雅なることにすすめ』

・購入物:なし

・朝、昼食:チキンサンド
 夕食:豚しゃぶサラダ、冷奴、レタススープ、キュウリの漬物、麦酒、ご飯


2003年07月18日(金) まだまだカエターノ・ヴェローゾ

 とうとうこの一週間、家にいる時はほぼずっとカエターノ・ヴェローゾを流していたんだけど、今日聴いた「カエターノ・ヴェローゾ」というアルバムのカッコ良さは一体何なんだ。
 これには、「ビリージーン」のカバーが収録されていて、「ビリージーン」ってこんなにいい曲だったのか、と目から鱗がボタボタ落ちる。マイケル・ジャクソンのCDを探してみたが、もうとっくの昔に売ってしまっていた。

 会社帰りに髪を切りにいく。待っている間、普段ほとんど読まない女性雑誌とかファッション雑誌をパラパラ見る。見事に読むべきところがない。よくこんな読みどころのない雑誌が作れるなあ。妙に感心。

 夜中に宇野浩二の「芥川龍之介」、読んじゃった。思うところがありすぎて、ぜんぜん考えがまとまらない。
 同じく文学に取り憑かれてしまったものとして、宇野浩二は芥川を理解したかったし、助けたかったし、励ましたかったし、もっと素晴らしい小説を書いて欲しかった。でもそれは結果として叶わなかった。その思いより、もっと大きなものにのみこまれてしまったのかなあ、という気がする。
 
 なんていろいろ考えながら、パラパラめくっていたフェルナンド・ペソア「不穏の書、断章」にあった言葉。 
『他人を理解することは誰にもできない。詩人が言ったように、われわれは人生という大海に浮かぶ島なのだ。われわれのあいだには海が流れ、われわれを限定し、隔てている。たとえ、ある魂が他の魂を知ろうと試みても、理解できるものは、ひとつだけだーつまり、彼の精神の地面に映った歪んだ影。』

・購入物:なし

・朝食:そうめん
 昼食:サラダサンドイッチ、紅茶
 夕食:豚と白菜の重ね蒸し、小かぶとベーコンのスープ、冷奴、ご飯


2003年07月17日(木) うらやましい

 今日はほとんど外回り。大阪府内をテクテク歩く。
 とても愛想のいい人、笑ったら損だとばかりにむっつりしている人、機嫌悪いってすぐわかる人、何の仕事してるのかよくわからない人、いくつか会社をまわって、いろんな人がいるなあ、と改めて思う。私はどんな人だろう。実はそれが一番わからなかったりする。
 その合間に文楽劇場に寄って、週末のビックイベントのためチケットを買いにいく。今度こそオペラグラスを忘れないようにしなくちゃ。楽しみ、楽しみ。

 夜は、友人Aちゃんと梅田で飲む。前から約束してたのだが、予定が合わなくてなかなか実現しなかった。
 主に「最近仕事で出会ったアホな奴」というテーマで話す。数々の人の名誉を毀損した気もするが、口に出さねばもうやってられません。ちょっとは溜飲が下がったわ。
 それから彼氏にきっぱり「結婚はしない」と言われたというAちゃんの話を聞く。どうでもいいと思ってきたけど、もし将来自分が結婚したくなった時は、この人と別れなくてはならないのかと思うとものすごくさみしくなったきたよ、と言っていた。
 可哀想だた惚れたってことよ、ってやつだなあ、としみじみ思う。

 私達のサエナイ話の間中、隣の席のカップルは、ずっと手をつないでいた。あんなことしていたら飲みにくいし、食べにくいと思うんだけど、そんなことは全然どうでもいいんだろう。
 バカっぽいけどさあ、ちょっとうらやましくない?と、Aちゃん。うーん、はっきり言って、ものすごくうらやましい。

・購入物:文楽チケット(第3部)2枚 

・朝食:とろろかけご飯、冷奴
 昼食:ピロシキ、さつまいもパン、ヨーグルト
 夕食:居酒屋で(ゴーヤーチャンプルー、枝豆、お刺身、タタキ、生麦酒5、6杯)


2003年07月16日(水) ふたたびカエターノ・ヴェローゾ

 いくつか店をまわってみたけど見つからないので仕方なく、カエターノ・ヴェローゾの「粋な男・ライブ」と「フェリーニへのオマージュ」をレンタルして、MDにおとす。
 聴いていると、全身骨なしになって、トロトロになっていくようだ。歌はうまいし、声も甘くて色っぽいし。ああ、動いているカエターノ・ヴェローゾが見たいよう。

 ここ数日はカエターノ・ヴェローゾしか聴いてなかったのだけど、日曜日に買ったアルヴォ・ペルトも聴いてみる。うーん、どこかの葬式に出席しているような気分だ。

 仕事上、いろんなことがうまくいかなくて疲れ、何をする気もしないので今日は外で食べて帰ることにした。
 隣席は20歳後半くらいのサラリーマンで、私が席についた時はすでにいて、本を読みながらねちねちご飯を食べている間も、何をするともなく座っていた。
 すると、ごめ〜ん待った?、と女の子が来た。男は嬉しそうに、ううん全然、なんて言っている。ウソつけ、待ちくたびれてたくせに。言うことが典型的すぎる。
 女の子は、会社のなんとかかんとかさんがどうしたこうしたと一方的に自分のことだけしゃべる。それを男は、うんうん、と聞いている。なんだ、この女は。
 何食べたい?と女が聞いて、男は、何でもいいよ、こたえる。私お寿司がいいなあ、と女が言って、あいいねえ寿司、と男。やっと店を出ていった。 
 なんだかなあ。もしかしたらあの男は、自分は優しい人間だと思っているかもしれないが、それは優しさなんかじゃないぞ、と言ってやりたい。もう二度と会わないだろうけど。

・購入物:谷沢永一「紙つぶて 二箇目」(文芸春秋)古書

・朝食:ちくわの天ぷら、味噌汁、ご飯
 昼食:カマンベールチーズパン、さつまいもパン、野菜ジュース
 夕食:外食(ポークソテー、サラダ、ご飯)


2003年07月15日(火) 「芥川龍之介」

 アイロンで右手をやけどした。あ〜ヒリヒリする。アイロンを持つ手である右手をやけどするって、一体どういうことなんだろう。不器用にもほどがある。

 携帯電話を充電したまま、持って出るのを忘れたのだが、何の不自由もないばかりか、夕方6時頃まで電話がないことに気もつかなかった。
 帰ってみてみたら、着信はおろかメールもきていない。誰も私に用事がないんだなあ。もしかして、私には携帯電話って必要ないんじゃないか?少なくとも新しいのを買うなんて、アホなことはやめとこう。
 
 宇野浩二の「芥川龍之介」、上巻の3分の2くらいまで読んだ。
 男前で、頭が良くて、創造力はあんまりないけど、何かを題材にして小説を書く才能はあまりあるほどあって、おしゃべりで、宇野浩二の恋人に内緒で手紙を出しちゃうような茶目っ気もあったり、でも生涯、持って生まれた気の弱さとプライドの高さからとうとう自由になれなかった芥川。こんなにさびしい人だったのかと思う。
 その著作には少々辛口な部分もあるけれど、芥川への尊敬と思慕にあふれた宇野浩二の文章がとてもいい。

・購入物:なし

・朝食:トースト、オムレツ、りんごジャム、珈琲
 昼食:ポテトサンドウィッチ、牛乳、グレープフルーツ
 夕食:カレイの煮付、モロヘイヤのおひたし、味噌汁、ズッキーニのペペロンチーノ(これ、調子にのって鷹の爪をたくさんいれたら、思いっきり辛かった。おいしかったけど)、麦酒

 

 

 

 


2003年07月14日(月) ひきつづきカエターノ・ヴェローゾ

 なんだかえらく涼しい。ひんやりした風が窓から入ってくる。

 携帯電話の調子がおかしい。充電しても、すぐ電池切れになる。こんなもの、あってもなくてもどっちでもいいけど、仕事に使うから新しい電話を買わねばならないかも。なんて書くと、いかにも仕事をしているようだけど、別にそういうわけではない。だいたい想像つくと思うけど。

 帰ってから「トーク・トゥ・ハー」のサントラの3曲目と19曲目を、多分5回は聴いた。それから、カエターノ・ヴェローゾのCDとMDを家にあるだけ引っぱり出してきて、片っ端から聴く。今も聴いている。
 それから「ユリイカ」のカエターノ特集を読む。本はちょっとでも気になったら、お金がなくても、すぐには読まなくても、とりあえず買っておいたほうがいい。機が熟して、きっと読む時がくるから。
 この「ユリイカ」も買ってからほとんど開いてなかったけど、一本映画を観ただけで読みたくなったし。この本でカエターノ・ヴェローゾがフェルナンド・ペソアのファンだってことを知った。やっぱり、そうじゃないかと思っていたのだ。私にとってもフェルナンド・ペソアは特別な詩人だから、とてもうれしい。

 さっき歯を磨いていたら、黒い物体が視界を横切った。よく見るとゴキブリさんだ。退治してください、とTに頼んだら、イヤだホタルだと思って一緒に暮らす、などと言う。いくじなし。少し努力してみたが、どうもホタルだとは思えないので、明日ホウ酸ダンゴでも買ってこようと思う。誰もあてにしてはいけない。

・購入物:関川夏央「二葉亭四迷の明治四十一年」(文春文庫)

・朝食:バターロール、オムレツ、珈琲
 昼食:おにぎり(カツオ)、巻きずし1/4
 夕食:豚肉とニラとしめじの炒め物、サニーレタスの韓国風サラダ、小松菜と豆腐の味噌汁、ご飯


2003年07月13日(日) カエターノ・ヴェローゾ

 朝6時くらいから、カレーを作って、鶏肉を揚げて、カツカレーを食べた。お腹いっぱいで苦しくなった。外は一日中、ザーザー降りの雨。

 午後から、テアトル梅田に「トーク・トゥ・ハー」を観に行く。カエターノ・ヴェローゾ見たさで。
 そして、やっぱりカエターノ・ヴェローゾが出てくる場面が、もう最高に良かったよ、このシーンのためだけにもう一回観てもいい。
 泣き虫のダリオ・グランディネッティ(この人もすごくかっこいい)が、カエターノ・ヴェローゾの歌を聴いてまた泣いちゃうんだけど、そりゃ泣くわ。というか、あんな近くで歌われたら、私なら気絶してしまうかも。
 映画については、うーん、私はちとしんどい。究極の愛、なんていってもやっぱりこれは狂気だ。展開が見えてしまうし、無声映画の部分も少々ダレた。
 でも、しつこいけどカエターノ・ヴェローゾと、冒頭とラストの演劇の場面はものすごく好き。映画はどのようにも楽しめる。もう一回観に行くぞ、今度は千円で。

 そして、言うまでもなくサントラを買って帰ったのでした。

・購入物:「美しい暮しの手帖」11,12号 古書
     サントラ「トーク・トゥ・ハー」
     アルボ・ペルト「アルボス」   以上CD

・朝食:カツカレー、トマトとズッキーニのスープ、珈琲
 昼食:食べなかった
 夕食:外食(点心セット)


     
 
  

 


2003年07月12日(土) 「苦の世界」

 もう一回「D.I.」観に行こうかな、と思ったら、もう上映期間が終わってた。早いなあ。どうでもいい映画は長々とやるくせに。
 仕方がないので今日は出かけず、部屋の掃除などをする。

 それから読むとか読まないとか、ひとりで悩んでた「苦の世界」を読んでしまった。
 もうね、びっくりした。めちゃめちゃ面白かった。
 「苦の世界」は売れない画家の主人公がヒステリーの妻に悩まされる話が軸になって展開していく。私は勝手に、「死の棘」の大正版みたいな小説なんだわ、と思っていたけど、これはそうじゃないんだよ、そう思うと読み損なう。
 法学部生の鶴丸、ヒステリーの母親に悩まされている本屋の山本、逃げた妻を追いかけている芸者の周旋屋、文学を志す参三、無類の酒好きで天性の嘘つき半田(コイツ大好き!)、などなど主人公を取り囲む友人達が、それぞれとても魅力的なのだ。
 とくに2章での鶴丸の独白は、ツルゲーネフの「はつ恋」ばりの身をきられるような切なさで迫ってくる。その後、浅草の花屋敷で男3人がメリーゴーラウンドに乗る場面のなんという哀しさ。
 登場人物みんな、気が弱くて、甲斐性がなくて、夢はあっても人生全然ままならなくて、トホホなんだけど、全員ことごとく善人で愛すべき人達なのだ。どんな悲惨な状況におかれても、人を思いやることを忘れない。
 たしかにこの世は「苦の世界」だ。でもそれならそれで、せいぜいもがいて、おもしろおかしく生きていってやるんだ、って思う。

 思わず興奮してしまったわ。世の中にはまだまだ素晴らしい小説が、いっぱいあるんだなあ。

・購入物:小沼丹「黒いハンカチ」(創元推理文庫)

・朝、昼食:チキンサンド、珈琲
 夕食:グリーンボールと卵の炒め物、トマトとズッキーニのスープ、冷奴、麦酒、ご飯
 

 
 


2003年07月11日(金) 古書市

 天満橋のOMMビルで開かれている古書市に寄ってみる。
 ずっと「古本音頭」(女の人が歌う古本の唄。古本屋には夢がある〜みたいなやつ)が流れていたけど、あんな唄をつくるのを誰か止める人はおらんかったんだろうか。あれが鳴っているとどうも本選びに集中できない、恥ずかしくて。
 ダメだ、今日は一冊も選べないや、と思って帰ろうとしたら水上勉の「宇野浩二伝」があった。当然買う。裏表紙に、小説と恋ひとすじに生きた文学の鬼、なんて書いてある。

 宇野浩二って、写真を見てたらどう考えてもモテそうにないんだけど、それがモテるんだなあ、これが。作家の肩書きがない、貧乏な時もけっこう女が寄ってきてるし。
 男は顔や金じゃないね。やっぱりいかに女にマメになれるかがポイントなんじゃないかしら。あと聞き上手、ほめ上手であることかな。それにちょっと薄情そうなところがあればいいな、ってこれは私の趣味だった。

 夕食を作りながら野球を見る。巨人の選手って、なんで進学校の金持ち坊ちゃんみたいな人が多いんだろう、清原以外。
 今年はまだ甲子園に行ってない。今シーズンはもう無理かも。
 でも悲しいことに、がら空きの甲子園で野球を見るのが好きだったりするんだなあ。さみしいけど、のどかでなかなかいいよ、がら空きの甲子園って。

・購入物:水上勉「宇野浩二伝 上下」(中公文庫)古書

・朝食:目玉焼き、ウィンナー、味噌汁、ご飯
 昼食:さつまいもパン、野菜ジュース
 夕食:グリーンボールの和風焼きそば、白菜の中華風和え物、麦酒


2003年07月10日(木) 久しぶりに本を買う

 さすがに眠い。特にお昼からはとろけそうだった。思考回路停止状態。

 帰りに寄り道をして、新刊と古本を買う。中でも宇野浩二「芥川龍之介」は上・下巻で1000円もしたけど、買ってよかった。
 
『私は、芥川を思い出すと、いつも、やさしい人であった、深切な人であった、しみじみした人であった、いとしい人であった、さびしい人であった、と、ただ、それだけが、頭に、うかんでくるのである。それで、私には、芥川は、なつかしい気がするのである。時には、なつかしくてたまらない気がするのである。』

 …。ダメだ、こういうのに弱いのよ。さみしいよお。この本はもう、とびきり面白そうだ。こんな本を品切れにするなんて中央公論社は何を考えているのかわからない。

 一緒に買った河盛好蔵の「回想の本棚」には、冒頭から宇野浩二から広津和郎のことがつらつらと書いてある。解説は庄野潤三だし、本に呼ばれたとしか思えない。
 こうしてすっかり、大正から昭和初期の文壇風景にからめとられてしまっている私。でも当分ここから抜けられそうにない。

 小松菜からテントウムシをふたまわりほど大きくした緑色の虫がでてきた。ギャア。ここんとこ毎週、虫入り野菜を食べている気がする。別にいいんだけど、とにかくびっくりするのです。私は料理にスリルは求めていない。
 ぴっかりと緑に光る虫をつかまえて、窓から外へ出して逃がした。

・購入物:宇野浩二「芥川龍之介 上下」(中公文庫)
     河盛好蔵「回想の本棚」(中公文庫)
     色川武大「百」(新潮文庫)     以上古書
     小沢健志「写真で見る関東大震災」(ちくま文庫)
     桂米朝コレクション「美味礼賛」(ちくま文庫)

・朝食:鯖寿司(昨日のおみやげ)、素麺
 昼食:レーズンチーズパン、野菜ジュース、グレープフルーツ
 夕食:ポークソテー小松菜のニンニクソース、大根と人参の味噌汁、モロヘイヤのゴマ和え


2003年07月09日(水) お酒をのみにいく

 飲み会。
 行きたくなかったが、今日は逃げられなかった。まあ、そこそこ楽しかった、お刺身もお寿司もおいしかったし。どれほど飲んだかよくおぼえてないけれど、男女4人のうち、NさんとO君と私の3人で、焼酎のボトル2本をカラにしたので、まあ飲んだ部類にはいるのかしら。よくわからない。
 最後はみな酔ってしまったので、それぞれひとりづつタクシーに押し込んで帰ってもらった。タクシーに乗る時、Nさんが「しれっとした顔して。アンタはホンマにかわいくない女やな」と捨て台詞を残していった。
 私はキコキコと自転車で帰った。飲み会の後にひとりで自転車で帰るのは、けっこう好き。やっとひとりになれたなあ、と思ってほっとする。家に着いたのは午前3時前。疲れた。

 宇野浩二の「苦の世界」を読むつもりだったのだけど、こないだ読んだ短編2編があまりにもグリグリと胸にせまってきてしんどくなって、しばらく置いておくことにした。今日から尾崎一雄の「美しい墓地からの眺め」を読んでいる。お風呂に入った後目がさえてしまったので、何編か読んだ。
 14編収録の短編集で、既読のものも多いけど、中でも表題作の「美しい墓地からの眺め」が好き。題も好きだし、読むとなんだか元気がでてくる。

 結局、寝たのは朝5時頃。そしてこうして出勤してきて仕事をしているなんて(今は日記を書いているけど)、会社員のカガミのようではないか、と誰も言わないので自分で言っておく。

・購入物:なし

・朝食:カレーライス(レトルトカレー)、ルイボスティ
 昼食:ハムサンド、牛乳、グレープフルーツ
 夕食:居酒屋で(お刺身、寿司、天ぷらとかいろいろ、麦酒中ジョッキ4,5杯くらい、焼酎)
 


2003年07月08日(火) はぁ

 阪神にマジックが点灯した。
 あ、書いちゃった。日記にこの文章を書くのは実に18年ぶり。18年間書いてない文章が、まだこの世にあった。あともうひとつあるけど、まだそれは書かない。

 職場で私が電話しているのを、じっと横で見ていたNさんが一言、「アンタ、良い媚も悪い媚も絶対売らないね」と言った。ん、どういうことだ?
 続けて、「今までの人生で、人に頼ったことないでしょ、アンタ。お願いします、なんて口では言ってるけど全然、お願い、って顔してないもんな。例えば、お金ない時親にねだったり、心配事を友達に打ち明けたり、行きづまったとき上司とか先生に相談したり、そういうことしたことないと思う。男にふられて泣きつく、なんて考えられへんやろ。良く言えば強くて、悪く言えば可愛げがないねん。私はアンタのそういうとこ好きだけど、生きにくいやろなあ、と思う」なあんて、言われちまった。
 自分が強いなんて思ってないけど、人間も長く生きてみるもんで、Nさんが言ったことはほとんど当たっていた。第一、媚の売り方からして知らないし。自分の可愛げのなさはわかってるし、生きにくさも十分感じている。でも、もうここまできたらもうしょうがない。これが私のやり方だから。
 でもみんな、何らかの生きにくさを感じて、毎日過ごしてるんじゃないのかなあ。それぞれのやり方通すために、自分の首しめてんじゃないのかなあ。

 今日の晩ご飯は寄せ鍋。季節感、まったくなし。あつかったあ。死ぬかと思った。

・購入物:なし

・朝食:トースト、目玉焼き、珈琲
 昼食:お弁当(かぼちゃの煮つけ、ゆでたまご、おひたし)
 夕食:寄せ鍋(うどん入り)、麦酒


2003年07月07日(月) なんでこうなんの

 昨夜は10時頃に寝て、目を覚ましたのが午前2時。すっかり目がさえてしまったので、宇野浩二の「あの頃の事」を読む。
 この小説というのが、母親と暮らす作家志望の男が主人公で、全く仕事がなく、やっと仕上げた翻訳も金にならず、苦労して手がけた賃仕事も思うようにいかず、どんどん逼塞し追いつめられていく、超貧乏小説だった。
 物音もしない真夜中に、枕元のスタンドひとつの明かりで読んでいると、世界に自分だけが取り残されているような寂しさで、気持ちが布団にめりこんでいきそうになる。
 よせばいいのに続いて、「子を貸し屋」まで読んでしまった。しばし茫然。
 登場人物すべて善人で、それぞれ至極真っ当に生きているのに、ちょっとづつちょっとづつ、不幸になっていく。ほんの少しの望みなのに、なぜこうも叶わないのだろう。身を削るようにして、宇野浩二はこの小説を書いたのではないだろうか。すごい人。
 気がついたら朝の6時。今日は一日が長かった。

 午後から他社のWさんと打ち合わせ。やつれた芥川龍之介。この人、ホントにおとなしい。しゃべらないし、相づちもほとんどうたないから、話を理解してくれてるのかどうか不安になる。でもこの暗さ加減はけっこう好きなんだけど。
 打ち合わせ終了後、芥川は「アナタはいつも元気ですねえ」と言って帰って行った。思いっきりから元気だよ。朝から本読んで泣いてたっつうのにさあ。

 残業して、自転車こいで帰っていたら雨がザーザー降ってきた。傘持ってないって。家では洗濯物が雨にぬれていた。なんでこうなんの。がっくり。

・購入物:なし

・朝食:トースト、珈琲
 昼食:梅うどん
 夕食:温野菜のチキンソースサラダ、小松菜のゴマ和え、カボチャの味噌汁、キュウリ漬物、麦酒、ご飯
 


2003年07月06日(日) 「D.I.」

 梅田でエリア・スレイマン監督「D.I.」を観る。「生きろ、くそったれ!」な映画。想像してたより全体的にスタイリッシュで、なかなかおもしろかった。
 とうとう最後まで、監督兼主役のエリア・スレイマンはしゃべらないどころか表情も変えなかった。泣いている時でさえも。ストイックでかっこよかったよ、『君への愛で、僕は狂っている』のシーン。
 こんがらがってぐちゃぐちゃのパレスチナ問題を背景にするには、もうこれしか手がないのだろう。いつか何かが変わるのだろうか。いつかって、いつだ?何がどんなふうに変わるのだ?

 映画の前に阪急三番街で中古CDとLDセールをやっていて、LDを3枚買う。ほとんどジャケ買いだけど。このセールでは安くて、いいディスクがいっぱいあった。ブニュエルとかベルイマンもたくさんあったし。
 レーザーディスクは処分する、とか言ってたけど結局まだまだ現役ってことで。こうなったら、とことん時代の流れと逆行してやるんだ。

 また明日から仕事。どんより。早く会社行きたい、一刻も早く働きたい、っていう人いるのかな。いるんだろうなあ、多分。前向きパワーにあふれている人ってちょっとうらやましい。友達には絶対なれないけど。

・購入物:フェリーニ「カビリアの夜」
     コクトー「オルフェ」
     シャブロル「いとこ同志」   以上すべてLD
     宇野浩二「苦の世界」(岩波文庫)
     戸板康二「句会であった人」(富士見書房)古書

・朝食:珈琲
 昼食:外食、阪急三番街で(牛鍋うどん入り、ご飯)
 夕食:素麺、冷奴、焼き鳥、キュウリサラダ、麦酒
  


2003年07月05日(土) ものをもらいに

 母から呼び出し。いろんなところからいろんなものを買ったり貰ったりして、持て余しているから取りに来い、とのこと。送ってくれりゃいいのに、面倒くさい。
 行くのをしぶっていると、ビヤガーデンの飲み放題券もあるけど今日アンタが来なかったら他の誰かにやってしまう、などと言う。イタイとこついてくるなあ。行きます行きます、と言って実家へ。

 メロンとか、素麺とか、りんごジュースとか、日本酒とか、焼酎とかさあ、ありがたいけど、みんな重いのよ。やっぱり送ってもらえばよかった。荷造りするのが面倒だ、と母が言うので、自分で荷物を作って自宅へ送り、メロンとビヤガーデンの券だけ持って帰る。

 久しぶりに弟にも会う。かわいい女の子が訪ねてきていた。アイツは見るたび連れている女が違うけど、ありゃ一体どうなってんだろう。彼女?と聞くと、あれは友達、だってさ。「友達」とは実に便利な言葉だな。

 「苦の世界」を買おうと、帰りに2軒の本屋へ寄ったが在庫なし。2軒行ってもないなんて、宇野浩二ブームなのか?

・購入物:リチャード・ブローティガン「西瓜糖の日々」(河出文庫)
     池澤夏樹編「オキナワなんでも辞典」(新潮文庫)

・朝、昼食:クロワッサントースト、珈琲、グレープフルーツ
 夕食:実家にて、麻婆豆腐、豆とレンコンゴボウの煮物、冷奴、麦酒など


2003年07月04日(金) 「人心」

 夕方、フェスティバルホールの前を通りかかったら、ザワザワとたくさんの人がいた。見事に女の人ばかり。ダフ屋が、券ないか券ないか、と寄ってきたので何かと聞くと、フジキナオトのコンサートだと言う。誰だ、それ。
 帰ってTに、フジキナオトってどんな人?と聞いたら、歌ったり芝居したりする人やろ、と言う。そんなことわかってるわ、その辺のおっさんがフェスティバルホールでコンサートするわけないじゃないか。
 コイツでは埒があかんので、芸能通の友人に電話してみる。このドラマに出てた、あのドラマに出てた、と教えてくれたがどれも見ていないのでわからん。結局、「高校教師」の先生役というのでぼんやりとはわかった。でも、わかったところで何がどうというわけではなく、むなしい。
 あれだけたくさんの客が集まるコンサートをするような人を知らないなんて、そりゃ人と話があわないはずだわ。

 気を取り直して、宇野浩二「人心」を読む。ヒステリーの元妻と、子持ちの芸者の間を、ふらふらする作家の話。金はない、帰る家もない、腹は減る、女はヒステリーをおこして叫びまくる、もう八方ふさがりなんだけど、妙に落ち着いて冷静に対処する作家がなんかおかしい。独特の文体リズムで、ぐんぐん読める。
 このヒステリーの女と暮らした顛末が書いてあるのが「苦の世界」らしい。しんどくなる気もするけど、こわいもの見たさで読んでみたいかも。明日買ってこよ。

・購入物:獅子文六「悦ちゃん」(角川文庫)
     野坂昭如「新宿海溝」(文芸春秋)   すべて古書

・朝食:カボチャの煮物、味噌汁、ご飯
 昼食:チーズサンドウィッチ、牛乳
 夕食:ターサイと豚肉の炒め物、小松菜と小かぶの煮物、麦酒、ご飯


2003年07月03日(木) たまにはテレビもみましょう

 今日は実によく働いた。明るく朗らかに仕事したぞ。おまけに河瀬直美の物真似をしてオーソン・ウェルズを笑わせたりもした。誰か誉めてくれ、私を。しかし、オーソン・ウェルズが河瀬直美を知っていた、ということが奇跡に近いとも思う。

 「エルミタージュ幻想」を観てきたTが、パンフレットを買ってきてくれた。なかなか興味深い。本棚から「世界史年表」を引っ張りだして、いそいそとロシア史の勉強を始める。世界史はいつも一夜漬けかカンニングで乗り切っていたけれど、高校時代にこの勤勉さが少しでもあればなあ、とほほ。少なくともカンニングが見つかって、「登校謹慎処分」になるというような憂き目にあわずにすんだだろうて。
 
 ご飯を食べながら久しぶりにテレビをつけたら、なんと佐藤浩市がでているではないか。しかも連続ドラマらしい。しかし、「いい人」な役柄の様子。屈折した性格のクールな佐藤浩市が好きな私としては、これはダメだ。佐藤浩市は冷たければ冷たいほど、暗ければ暗いほど、よい。残念ながらこのドラマでは、笑顔の演技が多すぎる。次回に期待。
 しばらくしてチャンネルを変えてみると、田島貴男が歌っていた。そしてなんとなんと木暮晋也もアップで映った。まさかテレビで見られるとは思ってなかった、うれしい!
 今日は好きな男が2人もでてきたぞ、テレビもたまには見るもんだ。

・購入物:「考える人 夏号」(新潮社)
      安岡章太郎「私のぼく東綺譚」(新潮文庫)

・朝食:トースト、ツナ、オムレツ、ミルクチャイ
 昼食:外食、フランス料理なんかいろいろ
 夕食:カボチャの鶏そぼろ煮、モロヘイヤのおひたし、辛子明太子、ご飯
 


2003年07月02日(水) バーゲンと宇野浩二

 何回か購入したことのあるお店からプレバーゲンのハガキが来ていて、帰りに寄ってみた。店員の口車にのせられて、またTシャツとカーゴパンツを買ってしまった。あー、連日の出費。私は店の「思うツボ」な客だ。

 夕食に、自分で考案したでたらめレシピで、トマトとズッキーニのパスタを作る。最近作ったものの中では、ダントツにおいしかった。ニンニクを多めに炒めるのと、バジルを入れるのがポイントだ。私にも、とうとう料理の神が降りてきたのかしらん。しかし調味料等はすべて目分量なので、再び同じものが作れるかどうかは疑問だが。

 夜は、買ってきた「ブッキッシュ」や、宇野浩二の本を読む。
 まだ途中までしか読んでいないけど、宇野浩二という人もまた、相当たいへんな人であることは間違いない。暗い小説も、ここまでくればもうふっきれて、かえって楽しいくらいのもんだ。こんな貧乏小説ばっかり読んでいるから、私もお金が身に付かないんじゃないだろか。それは自分の心がけ次第かな。

・購入物:「ブッキッシュ4号」(ビレッジプレス)
      Tシャツ、黒のカーゴパンツ

・朝食:カボチャの味噌汁、冷奴、ご飯
 昼食:カマンベールチーズのパン、牛乳
 夕食:トマトとズッキーニのパスタ、鶏なんこつの唐揚げ、ガーリックトースト、麦酒
 


2003年07月01日(火) 「疑惑」

 ふと寄ってみた阪神百貨店にえらくたくさんの客がいて、何かと思ったら今日からバーゲンだった。ふうん、とのぞいてみるだけのつもりが、魔がさしてシャツを一枚買ってしまった。ああ、衝動買い。

 帰ったら、友人より写真つきの結婚報告ハガキが届いていた。結婚相手の美しさにびっくり仰天。シャルロット・ゲンズブールにちょいと脂肪を注入したみたいな感じで、かわいいというか美人というか。
 コメントに「僕の人生はこれからはじまります」と書いてあった。まだはじまってなかったとは知らなんだ。今までいろいろ散々な目にあったであろう彼であるが、これからはきっと楽しいよ。

 散々な目にあうといえば近松秋江の小説だ。「別れたる妻に送る手紙」の続編「疑惑」を読んだ。
 逃げた妻を追っかける男の話。この人はとにかく追っかけるのが好きだ。「日光に行ったらしい」という情報だけを頼りに、日光中の旅館の宿帳を調べあげる。お金がなくても、嫌味を言われても、全然めげない。妻を探し出すこと、これがこの男の全人生なのだ。ようやく居候していた書生と逃げたことをつきとめ、嫉妬と寂しさに怒り狂い、咽び泣く男。何故妻が逃げたのかということは一切考えない。全く反省しない。すごいよ。
 近松秋江は後年、客観的な社会小説を書きたいと思っていた。「米騒動」を題材にした小説を構想していたが、とうとう1行も進まなかったらしいと、広津和郎が書いていた。社会小説なんか書ける人はいっぱいいるだろうけど、こんな痴情小説を書けるのは絶対近松秋江だけ。ましてや「米騒動」の話なんて、誰も読みたくない、完成しなくてよかったと思う。

・購入物:半袖プリントシャツ(バーゲンで)
     宇野浩二「子を貸し屋」(新潮文庫)古書

・朝食:カレーパン、牛乳
 昼食:冷やしうどん、梅おにぎり
 夕食:タコと九条ねぎの白ワイン蒸し、カボチャの味噌汁、シシトウとじゃこの炒め煮、麦酒、ご飯


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