- 2010年08月12日(木) 「貴様が我を語るな!」 あいつの眼には確かに激昂があり、その声には憤怒があった。 だが俺にはわからねえ。 なぜ、あいつはああも怒ったのだろう。 夜半に目を覚まして、俺はいつも考える。 あいつのことなど忘れてやると啖呵を切ったというのに、なんてザマだ。 最初から俺はあいつのことなどわかってやしなかった。 だから、本当に、あいつが俺を裏切ったどうかもわからねえんだ。 話を最初から始めよう、俺は長曾我部元親。 土佐より起こって四国を統一し、今は徳川に従う大名の一人だ。 そしてあいつは毛利元就、日輪の申し子を名乗り、長く中国を治めた。 いまはない。俺がこの手で殺した。 -
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