ケイケイの映画日記
目次過去未来


2005年08月27日(土) 「愛についてのキンゼイ・レポート」


皆様、お久しぶりでございます。今日や〜〜〜っと、2週間ぶりに映画館に行きました。妖怪の次はゾンビ(『ランド・オブ・ザ・デッド』)の予定でしたが、予定は未定、3時15分からのシネフェスタ上映に間に合わず、観たい作品目白押しの残暑、観たい順位はトップの4時20分パラダイススクエアでの上映のこの作品にしました。キンゼイ博士の講義の最中、男女の性器がボカシなしで映されることに話題が集まっていますが、
年齢・性別・人種のわけ隔てなく、18000人のアメリカ人に性についてのアンケートを行い、生涯を性の研究に捧げた、実在のキンゼイ博士のとても真面目なお話を、面白おかしくでなく、興味深く真摯に描いた作品です。
監督・脚本は「ゴッド・アンド・モンスター」のビル・コンドイ。

40〜50年代のアメリカ。厳格なエンジニアの父(ジョン・リスゴー)から、同じエンジニアになることを熱望されていたアルフレッド・キンゼイ(リーアム・ニーソン)は、生物学への夢絶ちがたく、父に背いて生物学を勉強すべくボードン大学に移り、さらにはハーバード大学で博士号を取り、今はインディアナ大学で教鞭を取っています。研究のテーマはタマバチという地味なものですが、似たように見えるタマバチの、各々の個性を重んじる彼の講義に魅せられたのが、生徒の一人クララ(ローラ・リニー)。急速に距離を縮める二人は、のちに結婚します。しかしお互い初めてであったため、初夜に失敗します。前向きなキンゼイは、専門家に相談し、まずは最初の危機を乗り越えるます。やがてキンゼイは、学生たちの多くが性について悩みを持つのを知ります。それがきっかけで、彼はインタビューを通して性についてのレポートをまとめようと決心します。

どうしてもテーマがテーマなので、品格を落とさず観客に博士の熱意を伝えるのは至難の業です。脚本や演出とともに、出演俳優の持つイメージは、演技力と共にとても大切です。その点では、この作品のキャスティングはこれ以上ないものです。キンゼイ博士には、威厳と風格を併せ持ちながら、人に与える印象は柔らかい知性を感じさせるニーソンで、少々常軌を逸した博士の熱意が、決して狂気ではなく、法外な情熱として観客に伝わります。

妻役のリニーは、さすがに40過ぎの彼女では、ほとんどノーメイクで大学院生役を演じるのは厳しい感もありましたが、それもすぐ気にならなくなります。あまりに当時の価値観から逸脱した夫を支える苦労は並大抵ではなかったはずで、彼女の喜び哀しみ、戸惑いが充分伝わってきます。最後までキンゼイの良き理解者であり、深い愛を捧げることが出来たのは、決して彼に振り回されたのではなく、彼女の強い意志がそこにあったからだと思います。一見夫唱婦随に見えますが、私はこの二人から、「夫婦は対等」の意味を教えてもらった気がします。

三人のキンゼイの助手に、ピーター・サースガード、ティモシー・ハットン、クリス・オドネル。三者三様の清潔感のある男性的魅力と知性を感じさせ、私も素直にインタビューに答えてしまいそうで、博士の優秀な助手として合格でした。中でもサースガードが素晴らしい!見逃した「ニュースの天才」の演技が大評判でしたが、取り立ててハンサムでもなく、むしろ好感が持たれにくい容姿ですが、夫婦両方と関係してしまう難しい役柄を、繊細な演技でいやみなく共感の持てる人物に演じています。

博士の研究が世のため人のためと燃えているのはわかりますが、性には人の感情や心も大切で、いささかそれを軽んじているように思わす作りです。実際そのためマスコミの煽りを受けたり、性をただの快感を伴う排泄行為としてしか考えていない輩が、キンゼイの理解者だと名乗りをあげたり、スタッフ間の感情の亀裂を生んだり、博士の強引な研究方法に疑問が沸いてくるのですが、それには監督の狙いがありました。

最後にインタビューを受ける、お婆さんになっても素敵な素敵なリン・レッドグレープの言葉と、助手からのインタビューで、愛について問われるキンゼイの言葉は、観客にキンゼイの研究の意義・真意を汲み取るように出来ています。キンゼイは変人で、人間らしい感情から外れた人に見えますが、彼が性について研究しようと思ったのは、妻と営んでいる豊かな性生活を、世間の人にもおくって欲しいと思ったからのはず。そこには体の相性以上に、信頼関係と深い愛情が必要なのを、この夫婦はしっかり認識していたのですね。

性の嗜好は人それぞれ、色々あっていいのだと、観た後元々薄かった偏見が更に薄まりました。キンゼイが確執があった父親を理解出来たのが、インタビューからだったシーンは、性が人を理解する糸口となり、人生と深く関わるものだとの認識をもっと深くしてくれます。何にしてもパイオニアは大変ですね。いくら研究のためとはいえ、自分がセックスしているところをビデオに撮ったり、スワッピングはいやですが、私もインタビューには答えてもいいかなと思います。ただし、知らない人限定!


2005年08月16日(火) 「妖怪大戦争」


ただいま山中温泉のホテルの夜中。いつも夜遅くまでネットに向かっているので、眠れません・・・。それでホテルのネットでこれを書いている訳。重症患者だ・・・。しかし何ですね、自分のIDとパスワードさえ覚えていれば、どこででも書き込み出来るんですね。便利っちゃ便利ですが、ネットに支配されている気分もちとします。

離婚した母(南果歩)と一緒に、母の郷里・鳥取で、少しボケ始めた祖父とともに暮らし始めた正(神木隆之介)。少々気弱でイマイチ新しい環境に馴染めませんが、繊細で優しい子です。そんな正が、村の神社の祭りで、世界の平和を守る「麒麟送子」に選ばれます。魔人・加藤保憲(豊川悦史)が蘇り、世界を暗黒の世に染めようとするのを懸念する妖怪・猩々(近藤正臣)は、救世主として、正に白羽の矢を立てるのでした。

監督はホラーからやくざ映画、ファンタジーまで何でもござれの三池嵩史。ちょっと出来上がりに懸念も持ったのですが、とんでもなく楽しいです。大昔の大映の同名作品は、日本に殴り込みをかけた西洋の妖怪を、一致団結して蹴散らしましたが、今回の敵・加藤に、妖怪たちは及び腰。正や猩々、川太郎に誰も協力しませんが、妖怪祭りと勘違いし、全国から妖怪たちの大群が集まるさまは圧巻でした。面倒なことはいやだけど、楽しいことなら集まるなんて、妖怪も世相を反映してライトになったもんです。

その妖怪たちですが、役者さんたちはメイクとかぶりもので頑張ってくれています。ちょっと安物くさいのがまた昔懐かしく、CGでないところが、作り手の愛情を感じてしまいます。近藤正臣、竹中直人など、人目でわかる人もいますが、私は誰が何をやるのか調べずに観たので、エンドロールで名前を観てびっくり!変身ぶりに感激してしまいました。

妖怪なのに加藤の手下となる鳥刺し女に栗山千明。一人だけ何故か宇宙人のようなコスチュームとメイクですが、健康的なお色気と相変わらずの存在感たっぷりな様は、大物感を漂わせています。彼女に負けず劣らずだったのが川姫役の高橋真唯。悪のヒロインが千明ちゃんなら、こちらは妖怪ながら善のヒロイン。長くて綺麗な足を思い切りだし、いつもぬらぬら艶光した肌をむき出しにしています。どう考えても、お父さん方へのサービスシーンですが、若くて有望な子たちの健康的なお色気は、お祭り気分の作品に華を添えこそすれ、いやみはなかったです。

気弱な男の子の、ひと夏の成長物語になったストーリーも後味が良いです。ラストは脱力感たっぷりなんですが、一向に気になりません。童心に返ったわくわく楽しい気分が、そう思わせているのだと思います。一見子供向きに作られていますが、その実大人がわいわい楽しく作ったものを、これまた大人が楽しめるように作られた作品。たまには子供をだしにして、大人も楽しまなくっちゃね。


2005年08月12日(金) 「チーム★アメリカ / ワールドポリス」


木曜日観てきました。上映開始から一週間後でレイトになると早とちりし、あきらめかけた作品。本当は上映の梅田リーブルは会員なので、金曜日は1000円なのですが、ちょうど三男がその日からクラブがお盆休みで、鬼のいぬ間の木曜日鑑賞でした。会員なので300円引きですが、ご存知の方も多いと思いますが、私は一本単価850円くらいで観ています。だから1500円払うのはすごく観たいか、大博打気分の時くらいです。この作品の場合は後者。さてこの博打には、勝ったのか負けたのか・・・?

特殊部隊”チーム★アメリカ”は、今日も凶悪なテロを撲滅すべく、世界各地を飛び回っています。リーダーのスポットウッドは、ある国の独裁者が大量破壊兵器をアラブのテロリストに売りさばこうとしている情報をつかみ、ブロードウェイの俳優ゲイリーを、その演技力を買いチームにスカウトします。最初は及び腰だったゲイリーですが、本当の自由を勝ち取るという名の元、”チーム★アメリカ”に参加することを決めました。

私は未見ですが、世相を毒舌でばっさり切る(らしい)アニメ、「サウスパーク」の作者、レイ・パーカーとマット・ストーンのコンビによる、懐かしの「サンダーバード」風の人形劇です。人形たちが実に表情豊かで、その辺の大根役者なんか目じゃない演技力を披露してくれます。精巧なのは人形だけでなく、セットや爆撃シーンも作り物としての見応えがあり、堪能させてくれます。この辺は大満足でした。

題名からも判る通り、アメリカが世界の警察として平和を守る大義名分の下、彼らは仕事をしています。数人のテロリストを捕らえるため、世界各国の文化遺産を破壊しようが、静かな庶民の生活をかき乱そうが「あなたたちは僕たちが守る!」の能天気な厚顔無恥ぶりで、他国の迷惑もわからないアメリカをチャカしています。

この辺はなかなかブラックで良いですが、彼らの行動を非難する俳優たちが実名で出てくるのですが、ショーン・ペンやティム・ロビンス、アレック・ボールドウィンなど名うてのリベラル派まで、同じように思想のためには「目には目、歯には歯を」的な行動を取り、彼らもチャカしています。これってどういう意味?同じ穴のムジナ感より、ただの野次馬が外で煽っているだけの気がして、段々笑えなくなってきます。マイケル・ムーア(この作品にも人形でご出演)も強烈な笑いでブッシュ政権を皮肉っていますが、少なくとも彼の政治的スタンスはこちらにも充分伝わり、信念も感じますが、パーカー&ストーンは、おちょくりっ放しなだけで底が浅く、彼らの意見というものが感じられません。

それと描写が下品すぎ。人形劇の18禁て何なのさ?と思っていましたが、人形を使ってのファックシーンがこれがどーも・・・。あんな格好こんな格好、ちょっとしたポルノ並みでドギツ過ぎ。ゲロシーンも香港や韓国なんか目じゃないやり過ぎ感がいっぱい、男性が男性に忠誠を誓うためフェラを要求するなど、私の感覚ではブラックユーモアを軽く通り越して、嫌悪感が残りました。

北朝鮮の金正日首領さまも実名で登場しますが、彼に歌わす歌詞の内容が、人から理解されない孤立と孤独を歌うもので、登場人物の中で一番作り手がシンパシーを感じているように思えました。自分たちもハリウッドの末端で理解されずに生きているのさ、これでいいのさってことかな?チーム内で三角関係、四角関係も発生し、恋ありアクションあり友情ありで、充分ストーリーはハリウッド娯楽作の王道でした。これも皮肉?

感心したのは実名で登場したハリウッドの有名俳優たちです。歌の歌詞でバカにされまくったマイケル・ベイやベン・アフレックスなども、これほどコケにされながら、誰も訴えていないことです。ミロシュ・ホアマンの「ラリー・フリント」は、言論や表現の自由を守る、発信者側の怖いまでの信念を感じさせましたが、性的表現でおちょくられたのは神父さんだったはずで、こちらは表現する側ではないので、名誉毀損で訴えていました。ハリウッドの俳優さんや監督さんは、自分の仕事をよく認識していて、なかなか骨太のようで、男も女も上げたな感があります。当然北朝鮮では上映禁止。これも作り手は計算ずみだったんでしょうか?ならかなりしたたかです、この二人。


2005年08月09日(火) 子宮筋腫なんか怖くない(3)

昨日検診日でした。先日の検査結果は、心電図、レントゲン、肺活量、止血貧血と全て基準をクリア。血液検査は、B型C型肝炎、エイズ(!)梅毒(!!!)全てシロ。その後内診をしてもらったら、何と筋腫が6cm×7cmだったのが、5cm×5cmに小さくなっていると言うではないか!

「良くなってますよ。炎症も完全にとれています。治まったので筋腫も元の大きさに戻ったんです。」との先生のお言葉。続いて「これなら膣式で出来ますねぇ。」えっ?腹腔鏡式もなし??それより5×5って、要観察でいけるやん。手術のキャンセルが頭をかすめたのを見透かすように先生が、「でも筋腫はなくなりませんよ。それに何度も言うけど、筋腫が炎症を起こして白血球が2万超えるなんて、まずないんです。」へぇへぇ、わかってま・・・。

しかし同じ子宮全摘出でも、悪性かも知れないので開腹手術→悪性の可能性は低くなってきたので腹腔鏡式も視野にいれよう→筋腫が小さくなったので、(それもホルモン剤投与一切無し)腹腔鏡なしの膣式へと、怒涛の好展開です。手術方法によって、体の負担が全然違うのです。開腹手術が術後10日から2週間程度の入院なのに対し、膣式は5日から7日。一ヶ月間は安静が望ましい開腹手術に比べ、安静も2週間くらい。職種にもよりますが、私のような午前中だけの病院の受付なら、経過さえ良ければ、術後3週間で職場復帰も可能です。何よりお腹に傷跡がないので、経験者の方によると、「私は子宮がなくなった」という喪失感が希薄だそうです。

病院の帰りに買い物に寄ったスーパーで仲の良い友人にばったり。「体の調子どない?」と聞かれたので、経過良好と伝えると喜んでくれ、小さくなったのに手術とは、なんとなく割り切れないと話すと、「うちのお母ちゃん、やっぱり筋腫の炎症から盲腸が腹膜炎になるみたいに破裂してんで。それで他の臓器にも癒着して、結局子宮も卵巣も取ってん、体もすごくえらい(しんどい)みたいやったし、ホルモン注射も打ちに行ってたよ。ケイケイさん、手術した方がええよ。」と言われました。そうやねんなぁ、今なら健康な卵巣は残せるという最大のメリットがあるのです。(女性ホルモンは子宮からではなく卵巣から出る。)色々な筋腫サイトを読んでみても、躊躇して入る間に段々大きくなってきて開腹になったり、リュープリンなど更年期の症状が出る注射で筋腫を小さくして腹腔鏡にしたりと、苦労も盛りだくさん。やっぱり手術頑張ろう。

この後は、24日にもう一度MRIを撮って、前回高信号反応で悪性が疑わしかった影像が、普通に映っていれば膣式でOKだと思います。高信号反応は、悪性の他に炎症や出血も考えられるそうです。確かに筋腫発覚の6月初めから一ヶ月間は、記憶にないしんどさでした。内臓の炎症はバカに出来ませんね。取りあえずは今度のMRIの結果が良いことを、今は祈っています。


2005年08月06日(土) 「ヴェラ・ドレイク」

「クロ高」を観に行った時、横のスクリーンで上映していたのがこの作品です。早い時間から整理券を発行しており、こんな地味な作品がとびっくりしていましたが、なんと平日も同じ状況のようで、上映時間に滑り込んだのはいいけど、一番前のど真ん中しか、席は空いていませんでした。
監督のマイク・リーの作品は「秘密と嘘」「キャリア・ガールズ」しか観ていません。正直いうと、良い作品だとは両方思いましたが、世間の賞賛の声からはちょっと間引いた感想を持ちました。しかし力量と良心を兼ね備える監督とは認識しており、この作品で初めて大きな手ごたえを感じました。

1950年の戦後間もないイギリス。ヴェラ・ドレイク(イメルダ・スタウントン)は、弟の自動車修理工場で働く夫、昼はテーラー、夜は夜学に通う息子、工場に勤める娘を持つ平凡な主婦。病弱な母親の世話もしています。家政婦の仕事を持ち自分も豊かではないのに、恵まれない隣人にも家族同様のような愛を注ぐ愛深い人です。そんなヴェラですが、家族にも言えない秘密がありました。事情があって子供を中絶することが出来ない女性たちに、国が禁止している堕胎の手助けをしていたのです。

前半貧しいながら、一生懸命家庭に隣人に愛を注ぐヴェラの姿に心が和みます。狭く貧しいアパートをきちんと整え、家族を暖かい言葉で包みながらの夕食風景はとても楽しそうで、ヴェラの家庭が健全で愛情いっぱいなのがわかります。いつ何時でも、家族に来客にお茶を振舞うヴェラ。そのティーポットは手作りのティーコゼーに包まれ、まるでヴェラの愛情がお茶とともに注がれるようです。

夫スタンは教養も包容力もある素敵な人ですが、経済的には恵まれた生活を家族に送らせているとは思えません。しかし彼の男としての不遇には、男盛りに戦争があったということと無縁ではないと、監督はさりげなく示します。しかし善良な男性にありがちの卑屈さを彼から感じないのも、ヴェラの支えがあってです。「戦争さえなければ、あなたは弟の下で働く人ではないわ。」ではなく、「家族を守り子供たちを育てた。あなたの人生は立派よ。」と優しく語ります。私は今のあなたで満足している、今のあなたが立派なのよということです。ヴェラ夫婦が一つのベッドでお休みのキスをした後、じゃれあって足を暖めあう姿と、経済的に豊かな弟夫婦が義務感のようなセックスをする風景を対照的に描きながら、夫婦に一番大切なのは何か?監督は観客に考える時を与えてくれます。

そんな素晴らしい人であるヴェラが、本当に人助けと思って行う堕胎の手助け。私でも危険な方法だとわかります。母体に危険が及んだこともたくさんあったはずなのに、お互い名も知らせないので彼女は知らなかったのでしょう。それ以前に危険と言う認識もなかったはずです。夕方5時に堕胎の手助けをして、家に帰れば鼻歌を歌いながら夕食の支度をするヴェラ。本当に恐ろしい。無知は罪と言う言葉がありますが、彼女の最大の罪は善意の中で見えなかった無知だった、ということだったのでしょうか。

色々な事情で子供を生むことが出来ない底辺の女性がヴェラを頼ります。一方裕福な家庭の女性は、法外な値段ながら安全に病院で堕胎します。しかし女性としての哀しみに差があるわけでなし、子供を産めない代償は、肉体的にも精神的にも女性だけが負います。堕胎の是非を問う作品ではないと観方もありますが、私は裕福な女性をも描いたことで、全ての女性は母体を守る権利があるのだと感じました。これはもちろん中絶を肯定した意味ではありません。

警察に逮捕された後のヴェラに対する夫スタンの、毅然とした夫らしい強い包容力が素晴らしい。扇情的に描くことなく、夫婦の絆の強さを表現してあまりあります。観た直後は、弟フランクの妻の美しいジョイスや、ヴェラが仕事に通う家庭のやはり着飾った美しい婦人たちの心無い俗人ぶりと、清貧の人々との対比があまりにくっきりなので、ちょっと通俗的に思いました。しかい時間が経つと、本当に人生に必要な物はなんなのか、あれも削ぎこれも削ぎ、あなたの人生にかけがえのない物は何なのか?やはり観客に監督が問いかけている気がするのです。その答えが娘エセルの恋人レジーの、「こんな素晴らしいクリスマスを迎えたのは初めてだ。」の、言葉に集約されているような気がします。

イメルダ・スタウントン初め、演技者全てが素晴らしい!リーの演出は独特で、役者に自分の役柄の造形のみ伝え、長いディスカッションとリサーチを求め、筋は伝えないそうです。そして演じるその日に筋を伝え、即興のリハーサルから撮影に移るそうです。本当に役柄と俳優が同化しているように感じました。みな実力派の俳優さんでしょうが、役者の実力を存分に発揮させるのも、監督の力量なのだと感じました。情に流されず共感も理解もできる作品です。心に知的な作品でした。


2005年08月03日(水) 「アイランド」

←は、今週のプレイメイト。(そーじゃなくて・・・)この作品のヒロイン、スカーレット・ヨハンセンです。マイケル・ベイ作のSF娯楽アクションですが、私の目はこのスカーレットちゃんに釘付け。主役のユアン・マクレガーもそこそこ魅力があったし、他のいぶし銀っぽいキャストも華やかで、はら?あれ?というツッコミ満載ながら、なかなか楽しめはしました。

近未来のある都市。数々の汚染から完全に管理し保護された人々は、地上最後の楽園と呼ばれる「アイランド」に抽選で行くことが夢です。しかしある日、そこの住人のリンカーン(ユアン・マクレガー)は、あることからこの都市に疑念を持ち、真相を突き止めます。彼らはクライアントの臓器が病気になった時の保険のため作られた、クローンだったのです。「アイランド」行きは、彼らにとっては死を意味します。リンカーンは「アイランド」行きの決まった恋人ジョーダン(スカーレット・ヨハンセン)を連れて、脱出を試みます。

正直いうと、前半眠たかったです。ドラマなんかすっ飛ばし、CGや爆破満載のアクションが始まるのだと思っていました。丁寧に管理された彼らの生活が描かれ、クローンたちの悲哀も描かれるのですが、イマイチ状況を説明しているだけで、あぁそうなんですかで終わってしまいます。これに1時間近くは、ちょっと長いかも。リンカーンとジョーダン追跡の追いつ追われつのアクションが始まると、さすがに手馴れた演出で観ていてあきることはありません。何でそうなるの?のツッコミは満載なのですが、マイケル・ベイが監督なんですから、そういうのはヤボというもの。こういう部分は素直に楽しめばいいのだと思います。

でもこの作品で私が一番魅了されたのは、スカーレットちゃん。まだ20歳なんですから、「ちゃん」で充分だと思うのですが、この色香はいったいなんなんだという感じ。ブロンドの美形とボリュームのある肢体、常に半開きのタラコ唇からは、愛らしい隙がいっぱい。上でプレイメイトと書きましたが、ピンナップガールとは一線をひく格と品も感じられます。同じタラコ唇美女のアンジェリエーナ・ジョリーは、男に弄ばれるのではなく、女が男を弄ぶような強気なセクシーさを感じますが、こちらスカーレットちゃん、若い分だけセクシーさも可憐。オヤジキラーらしいですか、それを肥やしにしてるんでしょうね。きっと付き合った男たちからいっぱい吸収したんだろうなぁ。声がハスキーなのも容姿にミスマッチでグー。男を翻弄するような魔性の女を演じる彼女を、是非観たいもんです。

クローンの人権や、彼らを作った科学者の神の領域に踏み込む行為を問うと言う部分は、セリフであっさり説明するだけ。正直ラストはこれでええんかいです。臓器を取られ泣きながら逃げ惑うクローンや、仮腹で出産したクローンが子供を抱かせてもらえないシーンなど、わざとらしくて陳腐。だたのお涙頂戴的でした。もうちょっと人間とクローンとの共存(ありえるのか?)に踏み込んで描いていたら、満足度はグーンと上がったと思います。
でもこれがベイの作風なんでしょう。あまり成長しないというか、こういう重いテーマをお気楽に描く自分が好きなんだと思います。この作品を支持する人が多いと言うのは、映画の楽しみ方の重要な一つだからなのでしょうね。

科学者役のショーン・ビーンと追跡者役のジャイモン・フンスーンは、自分のポジションをはっきり掴んだ感じがします。両方画面に出るだけ、それなりに映画の格を上げる力がある人たちだと思います。スティーブ・ブシェミはもちろんいいですが、もっと演じがいのある役をやって欲しいなとも思います。そして主演のユアン・マクレガー。悪くもないけど良くもありません。そこそこ無難な感じだけ。「エピ1」でオビワンにキャスティングされた時、イギリス出身の出世頭になるかしらと思ったのですが、なんだか中途半端なブレイクの仕方で、少しずつジュード・ローやヒュー・グラントに水をあけられて行く感じです。出来は大したことなかったけど私は好きだった「恋は邪魔者」のユアンに、今回メガネをかけたシーンの彼がだぶりました。大作ではなく、コツコツクリーンヒットを狙う作品の方が、彼には合っているのかも。私は良い俳優さんだと思っています。


2005年08月02日(火) 「魁!!クロマティ高校 THE★MOVIE」

おっもしろーい!!アニメ化もされているナンセンスギャグコミックが原作です。この前のオフ会の時「何でも観るなぁ、次何を観るか先が読めない。」と褒められた(?)ワタクシ。正直いうと、どんな映画が好き?と聞かれるのが一番困るのです。ついでの言うと「映画好きの100」の質問もダメ。悩みまくって灰になっても書き終える自信がありません。一応「面白ければなんでも。」と答えるのですが、自分でも何が好きなのかわからない私、この作品も、こんな映画まで観るんかい系の通称「クロ高」、マニアックな原作ファンだけが観るはずなので、きっと空いているだろうと思ったのがまずかった。モーニングで小屋が小さい(テアトルの小さい方)とは言え、立ち見がいっぱいの超満員でした。三男と観た私は、通路に息子と寄り添いジベタリアンで観ました。でもこれはこれで良かったかも。だって劇場一体となって笑いまくったもん。

都立クロマティ高校は、引き算さえ出来れば入れるワルの巣窟のような高校。その学校を変えようと、真面目で実直、でもちょっと(だいぶ)変な神山(須賀貴匡)が入学してきました。なかなか思うように事が運ばない神山でしたが、いい奴だけど掛け算も出来ないとんでもないバカの林田と、金髪のくせに常識があるため存在感の薄い前田と、友達も出来ました。ロボットのメカ沢、謎の人フレディ、ゴリラの豪ヒロミなど、神山たちがぶったまげる学友と過ごしているある日、宇宙猿人ゴリとラーが、地球を侵略しに来たのでした。

ストーリーを軽くつまんで書いただけでも、「バカ」と前面に大きく書かれているのが、わかるでしょ?でもこれが抱腹絶倒なのだ。私はコミックもアニメも観ていますが、漫画が実写になるとどうしても笑えないエピソードの数々も、なんなくこなしてクリア。ストーリーらしいストーリーなんてない原作を上手くつないでありました。元を知っているため、次はこのセリフが来るぞ来るぞ、と待ち構えて大笑い出来るなんて、幸せじゃございませんか。

主演の須賀貴匡が神山にそっくりでもぉ〜。出てきた瞬間「神山にそっくり!」と二人で顔を見合わせ、小声で叫んでしまいました。他の配役もドンピシャで、特に失敗すると思っていたフレディ役の渡辺裕之と、竹之内豊役の高山善廣なども、存分に笑わせてくれます。コミックとアニメの実写と言うと、「今日から俺は」と言う作品が私も息子たちも大好きで、実写版も観ましたが、なんだぁ、これは!と、出来上がったイメージをことごとく打ち砕く、監督、あんた原作読んでへんやろと怒り心頭の出来でしたが、「クロ高」は作り手が原作のファンのようで、上々の出来でした。

原作ファンの皆様、「この学校には、魔物が住んでいる・・・」「この人たちよりバカだったなんて・・・」「メカ沢の奴、しっかりあの組の頭になってやがる・・・」などなど、あの名セリフ(?)が感動(???)とともにスクリーンに蘇る、すんばらしい作品。なお、原作やアニメを観ていない方でも充分に面白いです。オタクの次男もレイトで観てきましたが、やはり超満員、場内爆笑の渦だったらしいです。絶対面白いんやから。信じて下さい!


ケイケイ |MAILHomePage