JERRY BEANS!!

2002年04月20日(土) サクラノミ

桜の実は、さくらんぼかな。多分。

昔、昔、私がまだ小学生の頃、父はよく夜の校庭に仲間の野球を
見せに連れて行ってくれた。…というか、彼は自分が好きだから行くし、
私の事も好きだから連れて行ってくれたんだろうと思うけれど。

夜の野球ってなかなか良い。冬が明けて、春の生暖かい風が、夜に冷えて
湿る匂いとか、少しだけ肌寒い空気の層や、照明に照らされて惑う虫の
群れとか。そういう私の好きなものにたくさん出会えるからだ。

夜のお出かけは、少しだけ秘密の匂いがして、それがまた私を少し大人にする
気がする。…夜露に濡れる草の匂いが好き。…照明に白く霞む月が好き。
お父さんの楽しそうな背中が好き。でも私は、一人で遊ぶのも好き。

少しだけ遠い喧騒の中で、私は校庭に沿うように生える桜の木に登る。
私にも届く低い枝に、小さな実をつけたその木の実。少しだけ、紅い。
青い青い葉っぱの中、小さな小さなサクラの実。届く所にあるのが嬉しくて
いくつも取って、その中で一番好きなのを、掌に握り締めた。

でも、そのあとそれがどうなったのか私は知らない。ただ、ここまでを
昨日の夜に嗅いだ匂いで思い出して、なんだかふと、思い出に振り返っただけだ。

小さな木の実。今は、その木の下に行く事もない。


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