☆パワーの源☆
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| 2004年08月22日(日) |
菜の花の咲く頃、明るき里で。 |
はー。 ついにきてしまった、新選組の『友の死』。山南さんの切腹する日。
夕方からそわそわしてしまって、「ドラマなんだ、気軽に見るべ」と黒ゴマプリンを用意して8時を迎えたのに、 無心でプリンを食べていたら、8時を迎える前に食べ終わってしまった・・・。←おバカ。
こうなったら正面から向き合って見るしかない。 こんなにドキドキするのは 中村先生とサヨナラしたあの日以来かもしれないな。
明里が「菜の花」と言って差し出した水仙。 「これは、水仙です。菜の花はもっと黄色くて、花も小さいし葉の形も違う。なにもかも違う。」 ふふ、と笑ってしまった。 “なにもかも違う”と言った山南さんと、言われてしまった明里がかわいらしくて。 三谷さん、ありがとね。ちょっと張り詰めていた気がぬけた気がするよ。
明里に「ええよ、パクッと口で」と言われて あむっと団子を食べる山南もかわいい。 団子の食べ方を真面目に説明する明里。それを神妙に聞く山南。 なんて幼くて 愛しい時間なんだろう。 でもそこに ゆるりゆるりと馬を歩かせた総司がやってきてしまう。
「沖田くん、ここだ。」
総司の目に微笑をたたえた山南の姿が映る。 ・・・あぁぁ。
まるで子供のように山南を責める総司。「怒られてしまった」と言った山南さんは少し嬉しそうに思えた。 もう 山南さんの心は決まっていたんだね。もしかしたら屯所を出た夜から。 「急いで草津へ」と思いながら「誰か見つけてくれ」と願う。 そんな二律背反な想いの不安を 明里の無邪気さが助けていたのかもしれない。
「そのうち、丹波に遊びに行きます。」 「・・・ほんまやな?」 「ほんまや。」
果たせない約束と 見えない未来が 哀しい。
近藤と向き合う山南。
・・・慎吾、本気で悔やんでるね。潤んだ目。喉に伝った涙をコクンと飲む動き。 台詞がドラマを越えている気がした。山南の言葉が近藤の耳を伝わって慎吾の心を揺らしているのが見えた。 山南さんがどんなことをしても切腹してしまうことがわかっていても 障子を開け、目を閉じ 山南に背を向ける。なんとかして生きて欲しいと。
それを静かに閉める山南。
この動作は何度か繰り返されるのだけど、ほとんどが山南自身が閉じていた。 永倉や左之助、河合達後輩や八木家の人々に乞われても 土方の目は動かない。 土方を理解している源さんまでも、逃げるためのにぎり飯を渡そうとするのに。
だけど、見張り役の島田が 永倉や左之助に騙されて来たとき 「・・・思い出した、呼んだのは俺だ。」と島田に時間稼ぎに石田散薬を渡す。 「これを飲むと・・・背が伸びる。」 土方よ、なぜ武田を見て思いつく(笑)。 そしてそれに過剰反応する武田よ、おもろすぎ。
もぉ〜 なんで三谷さんは素直に泣かせてくれないんだよ。 落ち込んでいくと ふわりとやさしい風を送ってくる。 そしてそれは甘い香りを残して、沈んだ心を助けてくれる。
明里の無邪気な頼みに「わがままを言うな!」と一喝する。 「これ以上 私を困らせるな。」 明里はここで確信したのではないだろうか。大津での夜、妙に優しかった山南の理由を。 抱き合う二人を残して部屋をでて苦しむ近藤。 何のために死ぬるのか。誰もが悲しむ結果だというのに。
このドラマの中で常に近藤は悩み、苦しんできた。 そして時には土方の、 そして山南の意見を聞いて自分の中で整理してきた。 その片腕が 切り落とされてしまう。 固く結んだ口元が 戻れない己の不幸を必至で受け止めようとしているように見えた。
トントントン。
格子の向こうからスッと菜の花が差し出される。 「菜の花やろ?」 息をはずませる明里。 「・・・菜の花だ。」 明里が春に咲く花を山南に見せる。山南がもう見ることはない春の花を。
「まってるからナ。」
精一杯の笑顔で山南を見送る明里。山南が浅黄色の裃、死装束を着ていることを知りながら。
「うちが泣いたら、あのひと悲しむだけやろ?」
夜道に歩く その後姿は美しかった。 明里、いい女だよ アンタは。。。 私だったら きっと山南を責めてしまう。 約束したのに、なんで一緒におってくれへんの。 なんで一人で丹波帰れ言うの。 うそつき、うそつき。 そう言って山南を苦しませてしまうだろう。
山南はひどい男かもしれない。できもしない約束で 女を待たせてしまうなんて。
でも、最後の最後に寄りかかってくれた男は、愛しくかわいいものなんじゃないだろうか。 そしてそれは 女としてとても嬉しいものなのじゃないだろうか。 去り行く人を見送る。 それも一つの愛情だと思う。
土方が何も言わず障子を開け、山南を見つめる。 ゆるぎない山南の目をみて言葉もなく背を向けた土方に、 「君は正しかった。」 土方に対するこれ以上の枷はない。 これから新選組は止まることを忘れたように転がり続けてしまうのだけれど でもそれは 止まれなかったのではなくて、止まることが許されないことなのだと思っていたのではないだろうか。
沖田の介錯で 山南が腹を切る。 普通は腹に刀を刺した瞬間に首を落とすのだけれど、山南は正式に腹を割り、沖田に合図を出す。
・・・堺さん、すごいよ。 ほんとに死んじゃうんじゃないかと思った・・・ 額に浮き出た血管。震える頬、見開かれた目、クッと結んだ口元。
それを見守る近藤らの目を見ても、“それ”が本物だったことは明らかだ。
ここで一番意外だったのは、斎藤の目。
人を斬ることに何の躊躇もない斎藤。 武士として生き、そして死ぬを理解していた斎藤が 一番動揺していたように見えた。
はぁーっと息をつく。今までずっと息を詰めていたことに初めて気がついた。 縁側で黙ったままの近藤と土方。 伊東の慰めを突き放し、二人で泣き崩れる。
土方の不細工な泣き方と その肩を抱える近藤は 新選組として一人の参謀を失くした局長と副長ではなく ただ友の死を、そしてその意味を己に振り返って受け止めるしかない、ただの男でしかなかった。
あえて、書きます。
史実なんてくそくらえだ。 私は三谷の脚本の、このキャストが作り上げた新選組を全身で感じている。 悩み、苦しみ、泣き、笑う。あたりまえの感情が作り上げた新選組が、私はとても好きです。
堺雅人さん、ありがとうございました。 あなたの山南さんは あなたにしかできません。 それを見ることができて、とてもしあわせです。
山南敬助さん、お疲れ様でした。 菜の花の咲く頃、明るき里で 明里と花摘みをする姿を夢みて。
さようなら。
いかがでしたか? お気に召したら・・・
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