一平さんの隠し味
尼崎の「グリル一平」のマスターが、カウンター越しに語ります。


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2004年04月06日(火) 第二部  その20

里子ちゃんの家を出たのが、もう暗くなってて帰りの夜道で思った事は・・・

20年近く昔に追い出された、あの我が家の前を通るか、通るのをヤメようか・・・随分、迷いましたが、思い切って、昔の我が家を見て帰ろうと思ったんです。

県道から脇道にそれた所に駄菓子屋があって、その前を通ると右カーブになってて、そこから300メータ行ったところに昔の我が家があります。

もう、とっくに暗くなった家の前の道路沿いに車をとめて、車の中から灯りの点いた家の中を覗いたら、私達が住んでたときは工場だったところが、洗濯干し場になっていました・・・小学生ぐらいの子どもが3人ほどいて家の中を走り廻ってて・・・私が中学の時、工作で作った郵便受けの木の箱が、まだ活躍してるみたいでした、

祖母がいつも朝早くから座ってた大きめの椅子が私を見てるみたいで・・・椅子は玄関の横に座ったまま、あの日、母が私達の手を引きながら、この玄関を出てゆく時、この椅子は何を考えてたのか・・・新しい家族がこの玄関を入る時、この椅子は横で何を思って座ってたのか・・・

家の中からご主人らしき人が出てきて不思議そうにこっちを見てました、私が車を少しずつ前に出しながら頭を下げたら・・・じーっと見つめられ、怒ったように家の中に入っていきました。

しばらく運転しながら何故か涙が止まらず、また、あの椅子を置き去りにして来たことに、謝りながら・・・また涙でした。


        またこの次
          


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