| 2006年11月15日(水) |
愛国的民主主義ってことかな? |
不自由と非民主を信条とする自由民主党が、得意技の与党単独採決で、 今夜衆院特別委で新教育基本法案を可決し、明日は衆院で可決の予定という。 困ったら単独採決で先に進めばいい、というのは、多数派の暴力である。 彼らが単独採決で可決した法案の冒頭(前文)にはこう記されている。
「我々日本国民は、たゆまぬ努力によって築いてきた 民主的で文化的な国家を更に発展させるとともに、 世界の平和と人類の福祉の向上に貢献することを願うものである」
彼らがたゆまぬ努力によって民主的な国家を築いてきたのかも疑問だが、 それを「更に発展させる」にしてはあまりにも貧弱な態度である。 冒頭の宣言を踏みにじりつつ、法案を成立させようとしているかのようだ。 それとも、彼らの「たゆまぬ努力によって築いてきた民主的」というのは、 過半数だったら怖くない、過半数の言いなりになれ、という制度に 過ぎないのだろうか。
晋ちゃんたちは、憲法も教育基本法も「押しつけられた」ものだから、 「国民の手で」作られたものにしなければならないと繰り返し訴えた。 しかし、この強行採決によって、自民党と公明党の「押しつけ」であるという 構図が明瞭になった。 今後、ひょっとして政権交代があった場合に、 新教育基本法は自民党によって押しつけられたものだから、 新たに民主的な手続きで制定し直す必要があると、再度改められても 文句は言えまい。 そんな風に、時の多数派の政党の思惑で安易に変えられるものであっては ならないだろう。 しかし、彼らは、そういうものであっていいんだよ、と、 きょうの単独採決によって、身をもって宣言したのだ。 我々には、今、こういう法律に変えておく必要がある、 これ以上遅らせるわけには行かない、だからもう勝手に決める、 悔しかったら多数派になれ、そうしたら好きなようにできるぞ、 今は我々が多数派だから我々のしたいようにするさ、、、というわけである。
こういう私の意見に対して、いや、100時間も審議したんだし、 審議をボイコットしたのは野党であって、 採決が単独になったのは与党のせいでなく野党の意志だ、 という反論はあり得る。 また、その多数派与党も、国民に選ばれた代表だから、 その代表たちによって採決されたのだから、何ら批判されるべきものでない。
100時間の審議というが、どれほど審議し尽くされたのだろう。 野党も、直接この問題に取り組むよりも、 いじめ問題だの、未履修問題だの、TMのやらせ問題だの、 本筋と離れたところで時間を浪費したに違いない。 私は、新聞等で、この問題に関してはかなりチェックしてきたつもりだが、 残念ながら私の疑問に応えるような報告には出会えなかった。
実は私は、この新しい法案の、第二条にある5項目目の 「伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛する」 という文言がわりと気に入っているのである。 生徒たちにも、日本の文化と国土を愛して欲しいと思っている。 教育基本法の精神で学習指導要領が作られるはずだから、 今後の教育は、日本の風土・地理・民俗・芸能・文学はじめ様々な文化が 今まで以上に具体的に盛り込まれることになる。 日本史が必修科目になるだろうし、 現在の日本を取り巻く国際関係の歴史も必修科目になるだろう。 だから、現代を理解するための世界史も必修になるはずである。 日本の古典芸能に触れさせる機会も増え、 歌舞伎や能・狂言、落語、祭、、、等々の映像を見せることも必須となる。 日本の地理や、さまざまな風土も教え、 この美しい国土を決して破壊しない方策を教えよう。 古典を受験科目から外す大学もほとんどなくなるはずである。 条文を素直に受け止める限りではいいことずくめと言っていいのである。
しかし、私が彼らに確認しておきたい幾つかの疑問について、 野党議員たちもしっかり質問して確認してくれた形跡がない。 それは、 「伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛する」 というのは、
1 過去の日本の歴史を無条件に賛美することではない。 2 伝統的な天皇制度を復活し、天皇を愛するようになることではない。 3 過去の帝国主義的侵略戦争の罪を覆い隠し、賛美することではない。 4 「お国のために戦う」ことを教えることではない。 5 日の丸に敬礼し、君が代を大声で歌えと強要することではない。 6 どんな政府であっても批判することなく従順であることではない。
うーーん、、、まだ他にもあったような気がするが、 こういうことをきっちりと確認してからでないと採決はできないはずだ。 他の部分に「個人の尊厳」とか「豊かな人間性と創造性」という言葉が 残されているので、心配するような閉塞的状況はないはずだが。。。 しかし、実際に教育に携わる者としては、見逃せない問題だ。
さらに、「正義」とか「公共の精神」という語の意味についても、 明確にしてもらわなければいけない。 それらが、普遍的真理や個人の尊厳を損なうものでなく、 国民のわずかな一部の権力者の思惑に左右されるものでないことを。。。
だから、100時間費やしても、まともな論議はされてないのである。 それでも大急ぎで卑怯な法案成立に走るのは、 彼らが本当に真剣に考えているのが、実は教育ではなく、 武力装備の当たり前な国家作りに過ぎないからである。 まぁ、今後よほどのスキャンダルで自民党を打撃しない限り、 今会期中の教育基本法改悪は成就してしまうだろうけれど、 文言自体からはそれほど大きな問題が感じられない基本法をもとに、 どんな指導要領が作られるか楽しみだ、、、(`ε´)(`ε´)(`ε´)
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