西日が差したら枇杷の実を食べよう
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2004年09月04日(土) 2DKの箱船のまぶしさ。『誰も知らない』

『誰も知らない』をみる。
ヤギラくんのすばらしさについては、すでに色々な方が
書かれていると思うので省略。
映画全体は。
好きです。あいらぶYOUです。

是枝監督の映画は、『ワンダフルライフ』と『ディスタンス』の二本を
みているのだけれど、これが一番、傑作だと思う。
同じようなドキュメンタリーっぽい手法でも、
前二本より、ずっとわかりやすいし、身近。
あ、身近っていうのは、もしかして、
わたしがあの年頃の子供たちと年中暮らしているせいかな。

悲惨といえば、悲惨なハナシなのだけど、
東京に浮かんだ箱船のような2DKのアパートが、
不思議と子供だけのパラダイスのように思えたり。
とはいえ、あくまでも、
ぽかんと浮かんだあの「夢の島」のような「箱船」は、
メルヘンでもなんでもなく日常の延長のようにリアル。
わたしは、映画を見ながら実際にじぶんのまわりいる
コドモたちの顔が三人くらい浮かんだ。
その中の一人のコの家は、
アパートの玄関をあけると、鼻がまがりそうな匂いがするし、
YOUが演じたケイコさんほど極端ではないにしても、
ああいうネグレクト(育児放棄)っぽいお母さんは実際にいる。

そういうのは、もう圧倒的な現実で、
じっさいにその中にいる子供にとっては、
変えようのない、あたりまえの日常。
わたしたちは、あたりまえの日常の中に、
かけがえのないヒカリをみつけて生きている。
たくましく。
とそんなことを感じさせてくれる映画。

ふとした拍子に、
実際に周囲にいるケイコさんみたいなお母さんの話題が出るとき、
わたしやわたしの親しい友人は、
「やれやれ」という感じで顔を見合わせるけれど、
決して彼女のことを、陰口を叩いたり糾弾したりはしない。
なぜなら、少なくともわたしは、正直、心の奥で、
何もかも捨てて逃げてしまえるお母さんが
ほんの少しだけ、羨ましかったりする部分もあるから。
もちろん、思うだけで、
決して行動に移さない(移せない)のが「普通のお母さん」なんだけど。


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