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2006年02月27日(月) おもろいお話 『あなたへ』

朝日新聞「生活欄」(2006.02.27)より


『あなたへ』(もっと楽しもう、アメリカ人のぼくはつぶやく)

日本人はまじめだね。行動は丁寧だけど、遊びがちょっと少ないかもしれない。でも、大豆商品の食べ過ぎのせいか、僕も最近日本人の感覚に近づいているらしい。今は逆にアメリカに帰るとそのストライクゾーンの広さにとてもビックリする。

 先日驚いたのは米国内戦の機内アナウンス。
離陸前に副機長のアナウンスが普通に始まったが、途中で変な方向へ。「ポン!シートベルトは緩まないようしっかり締めて下さい。下っ腹のお肉に食い込むくらいで、ちょうどいいのです」と。
 乗客がちょっとざわめきだした。アナウンスは続く。「荷物は前の座席の下、または頭上の棚にしまって下さい。なお、上に入れるものは20キロまたは4歳までとなっています」。この時点で、彼の冗談に気づいた乗客が上機嫌で笑う声が聞こえる。
 さらに続く。「まもなく離陸します。携帯電話を持っている方は必ず電源をお切り下さい。機長のペースメーカーが心配です」。ここで、この飛行機はライブ会場と化した。
 飛び立った後も「機長がシートベルトサインを消しました。どうぞご自由になさって下さい。本日は空席もあるので、近くの窓側の席が空いていたら、どうぞ移動して下さい。ライバル航空会社から満席に見られるよう、ご協力お願いします」。
 そして、「ご存知の通り、弊社は今、倒産中ですので、こうした戦略をとっています。赤字対策として、誰かクレジットカードを貸していただけますか?」と、フリートークに発展していった。着陸したら、僕も弟子入りを申し込もうかなと思うぐらい面白かった。


 でも笑いながら、「仕事でそんなにふざけちゃだめだろ」と心の中の日本人がつぶやきだした。やはり『出る杭は打たれる』精神になっているのだ。外国人で芸人である僕が12年でこうなっているのだったら、日本で育ったみんなはその何千倍もまじめだろう。
 もちろんそのお陰でサービスも丁寧だし、頼り甲斐もあり安心できるわけ。でもちょっともったいないかもしれない。仕事でも遊びでも、人生は楽しいものであるはず。周りをそこまで気にせず、もっと気楽に、自由に、自分ならではの生き方で生きられるともっと充実するのでは? 心の中のアメリカ人はそうつぶやく。

パトリック・ハーランさん(コメディアン。70年米国生まれ。大学卒業後来日、吉田眞とお笑いコンビ「パックンマックン」を結成)


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