たりたの日記
DiaryINDEX|past|will
22日、草千里から中岳火山口へ向かう。 噴火口の白い煙、 人を寄せ付けない、厳しい火山の顔。

< 旅日記より>
朝あれほど降っていた雨がすっかり上がった。
私は草千里から火口西口駅までバスに乗り、ロープウェイで中岳の火口まで登っていった。 ほとんど韓国語しか聴こえてこないロープウェイに詰め込まれ、押し出された場所も観光客で賑わう、「観光地」だった。 しかし、火口の荒々しさは、どれほど多くの観光客がそこを覗き込もうとも、揺るぐことはない。 この厳しさの前に息を飲む。
三年前、わたしは単独、反対側の仙酔峡から火山口まで行った。 あの時はロープウェイにはわたしの他、一組の親子しかいなかった。 火山口には人気もなく、ただただ恐ろしかった。 あの恐ろしく荒涼とした火山の姿をもう一度見たいと思っていた。 この風景の前に立つことを幾度となく心に描いてきたのだ。
あの日、人っ子一人いない火口に立ち、まるで「ここを立ち去れ」と言っているような突風の中、吹き付ける火山灰のつぶを顔に身体に受けながら、きりきりとする、完璧な孤独に半ば陶酔していた。
あの時、荒れ狂う風から剥ぎ取られる事を願っていたのだと思う。 人間として生きてきて身に付けてしまった、あらゆる柵、役割の枷、自分を偽る良識、言葉にならないような様々な重さを。
何のために?
剥がされて、剥がされて、何にも属さない、魂だけの存在になる必要があった。 憑かれるように、一人さ迷った、幾つもの山や荒野は、 すべて、そこへと繋がるような気がしてくる。
|