たりたの日記
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2007年02月12日(月) 徳並沢ノ頭に登り勝沼ぶどう郷へ

昨年12月の末に別府の鶴見山に登ったきり、ずっと山行のチャンスに恵まれなかった。
遊山倶楽部の山行きのお誘いは月に二度は来るのだが、たいていは日曜日なので、わたしはなかなか参加が難しい。
ところが今回は2月12日、祝日の月曜日というので小躍りして喜んだ。本来ならば結婚記念日のイベントをするところだけれど、心やさしい同居人mGはわたしの気持ちを察して山行きを承知してくれた。

しかし問題はここ数日前に見舞われた風邪。
ま、熱も下がっているし、前日はダンスの練習も何とかこなせたのだから大丈夫でしょう。それに、どうやらハイキングくらいの簡単な山のようだしと山行決行。

さて山の準備。いつもは小さめのザックにできるだけコンパクトにまとめるところ、ハイキングくらいの簡単な山のようだしと大根の酢の物、かぼちゃと小豆の従姉煮、炒り黒大豆を混ぜて炊いた玄米やらを詰め込む。
頂上では例の宴会が続くのだろうから、身体が冷えてくるかもしれない。ダウンジャケットを入れておこう。
リーダーのDさんには帰りは勝沼ぶどうの丘に立ち寄り、ワインテイスティングをし、温泉にも入りましょうよとメールしておいたので、時間次第でそれも適うかも知れない。そうすれば洗面具に着替えも必要だ。
そうそう、雪があるかもしれないからアイゼンも持って来いと書いてあったな。
なんたって遊山倶楽部の事だもの、宴会に続く宴会で帰り道がすっかり暗くなることだって考えられる、ヘッドライトも入れておかなくっちゃぁ。
あっ、忘れていた、この会の必需品の酒。わたしは山ではあまり飲まないようにしているけれど九州の焼酎くらいは持参せねばと、麦焼酎をペットボトルに詰める。
とこんな具合で、おおよそ歩く事より宴会重視のパッキングで、36ℓのザックはぱんぱんになってしまった。

ひとり山行の時は、まず丹念に地図を見て、何度もシュミレーションをし、酒も持っていかなければ、昼食も少量の行動食の他はお握り1、2個という緊張漲る山仕度だが、そこが遊山倶楽部での山行ともなればお祭り気分。
山道はリーダーにくっついて行けば良いとばかり、事前にコースを調べたり地図で確かめたりすることもないまま、とにかく朝6時5分の伊奈中央発の電車に乗り込む。

大宮で乗り換え。途中武蔵浦和あたりで、ビルの向こうから昇る朝日がとても美しく小さなスケッチブックに絵と詩(のようなもの)を書きつけた。この太陽が照らしてくれる今日一日はいったいどんな日になるのだろう。

新宿で中央線に乗り換え、立川で快速に乗り換え仲間と合流。ここでまず一安心。
しかしあやうく各駅停車の高尾行きにそのまま乗っていくところだった。甲斐大和駅にひとり取り残されるか、さもなければみんなを待たせるところだった。アブナイ、アブナイ・・・。
ところで今日のメンバーは男性6人に女性2人の計8名。

さてさてお知らせに寄ると今日の山行は<甲斐大和駅から勝沼ぶどう郷の散策をします。目的地の山の名前、1116mのピークは、徳並沢ノ頭>ということだった。
この散策という言葉をわたしはかってに想像し、ゆるやかな丘陵を登って降りるハイキングのようなコースを勝手に想像していた。確かに最初はのんびりとした果樹園の中をゆっくりと山の方へと歩いていくのだが、歩いていくうちに自分の想像に反して結構きつい山だという事が分かってきた。
う〜ん、病み上がりの身体で最後まで歩き通せるだろうか。
しかも、他に登山者のいない、標識も無いようなこんな山では一人で後戻りなんかすれば、わたしなどは間違いなく迷って山の中に閉じ込められてしまうと不安な気持ちでいると・・・

「こういう山はひとりで登るべきじゃないですよね〜」

「後戻りしたくても、帰るに帰れないですよ〜」

「他に登山者に会うこともないですしね〜」

「じゃあ道に迷ったらどうなるんです〜?」

「さぁ、死ぬしかないないですかねぇ〜」

どきり!
この人のいなさと道の分かりにくさを思えば、とても冗談には聞えない。これはもう、みんなに遅れを取らないように、必死でついて行く他はない。


葉の落ちた広葉樹の枝をかき分け、かき分け、びしびしと枝の跳ね返りを顔に受けながら、道とも言えないようなルートを進んでゆく。頂上近くは結構急な登りで、岩に手をかけながら、よいしょ、よいしょとよじ登る。ストックがじゃまだが、立ち止まってザックにしまおうにもここでそういう動作をするには足元が心もとない。

ようやく山の頂上に着いた時にはほっとする。
山頂はずいぶん陽射しが強いので、少し下りた場所に円陣を組み、まずはビールで乾杯!
シートの上に並べられた食べ物や飲み物はいつもの遊山倶楽部ならではの大ごちそう。

「これおいしそう〜」
「こっちもどうぞ〜」
「おいしいねぇ〜」

先生のお手製のブリのカマの塩焼きと梅干しがいくつものっかった玄米飯。Kさんのたっぷりのおでんとホヤ貝の珍味。Dさんのグリーンピースご飯に菜の花ののお浸し・・・。
わたしの持参した大根やかぼちゃも喜んで食べてもらえる。

しかし、山は登りよりも下り。下りがどれほどの程度なのか調べてからでなくてはうかうかお酒など飲む訳にはいかない。
「下りは登りのように険しくはないんでしょう。ハイキングのような感じですか?」
「そうですよ。帰りは楽ですよ」
その言葉を決して信用しない訳ではないけれど、なんとなく帰り道のことが気にかかる。
お酒は少しにしておこう。

いつもは延々と続くはずの宴。思いがけなく早い時間に「撤収!」の合図。まだ昼になったばかりの時間だ。
おやおや、みなさん、勝沼でのワインテイスティングの事を考えて、できるだけ早く下山するつもりだな。それはよかった。温泉にも入れることだろうといそいそと腰を上げる。

さてさて、下り。
ゆるやかな坂をのんびり降りるという想像とはまたもや違い、なかなか急な下りに登り返し。3時間ほど降りたり登ったりが続く様子。
「ここ、どうやって降りたらいいの〜」というような場所が数箇所あった。
急な下りでしかも着地する場所は深い落ち葉に覆われている地面だから、うっかりすると足を滑らせてしまう。
(気を抜いてはいけない、よおく足場を確保して・・・)
日頃夢うつつにぼおっと歩くわたしだが、こういう状況ではわが身にしかと言い聞かせつつ歩かねばならない。それでも一度、ずるっと滑って尻餅をついた。

さて、最後は魔の階段。
どういう訳で、この人もあまり登らないようなマイナーな山にこんな階段が長々と続いているのだろう。確かに階段がなければ、あまりに急な坂、降りるに降りられないのかもしれない。
6月に高柄山の急な下りで膝を痛めてからは膝にかかる負担に関してはかなり神経質になっているし、またどうしたら膝に負担をかけずに済むかという事も学習している。
スマートではないが、階段は横向きになり半歩つづ両足で着地するようにして降りるといい。こうすれば、急な階段でも膝に体重が掛かる事をかなり防ぐ事ができる。おかげで膝ががくがくになる事もなく無事下山できた。
やれやれ・・・
いったい階段は何段あったのだろう。見上げると圧倒されるような急な階段だった。これまで歩いた階段の中で一番長くて急な階段だった事は確かだ。

お手軽なハイキングどころか、上級コースとも言えるようなりっぱな山だった。徳並沢ノ頭、1116m。こういった人のあまり踏み込まないおもしろい山は実はいくつもあるのだろう。


山から降りたのは3時近くだったろうか。
勝沼ぶどう郷までは車道を1時間ほど歩くことになるというので、タクシー2台に分乗し、ワインと温泉が待っている勝沼ぶどうの丘へ。
みなとわいわいいいながらのワインテイスティングは楽しく、職員の専門家の方から正しいワインの試飲の仕方を教えていただき、いろいろと参考になった。その方のお勧めのワイン「甲州」をmGのお土産に。

そこの敷地の中にある温泉「天空の湯」は名前の通り見晴らしが良く、甲府盆地や南アルプスを眺めることができる。
明るいうちにと露天風呂に出てみれば、朝、電車の中から昇る姿を見たその太陽が、まさに今、山の向こうに沈もうとしていた。






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