たりたの日記
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| 2006年05月20日(土) |
修道院で造られるビール―ベルギービールとの出合い― |
さて、今日はベルギービールとの出合いについて。
先日池袋駅から徒歩5分のところにあるギボンというベルギービールのバーを紹介していただいた。 ベルギービールは初めてだった。そもそもビールはあまり好きではなく、身体にも合わないと思っていたが、一口飲むや、その味というか、エネルギーは今まで飲んだビールとはまるで違っていて、おいしいと感じた。
ポークビーンズなどのお料理もおいしく、店の雰囲気もとても気持ちに合い、またそこに一人でやってきては、ビールを一杯飲んで、さっと帰ってゆく常連客たちの様子はアメリカのショットバーを思い出す。
 ベルギービールに少なからず興味を覚えたわたしは、数日後、行きつけの酒屋の輸入ビールコーナーにいくつか並んでいたベルギービールの中からシメイ・レッドというビールを買って帰った。
バーでいただいたビールの銘柄は覚えていなかったし、ベルギービールについては何の知識もないから、ラベルのデザインだけで選んだのだったが、飲んでみると、何とも豊かな味だった。
ラベルには日本語で丁寧な説明が施してあり、驚いたことにはこのビールが修道院で造られているということだった。 8世紀に亘り、ベネディクト修道会、シトー派トラピスト修道院に伝承された醸造法を守り、スクールモン修道院の僧侶が自ら醸造し、管理しているというのだ。 以前、南ドイツのベネディクト派の修道院へグレゴリオチャントを聞きに行ったことがあるが、自給自足の生活をしながら祈りと奉仕に一生を捧げた修道士達の歌声は音楽を超えたものがあった。あの祈りの場所でこのビールが作られているのかと感慨深いものがあった。
がぜんベルギービールに興味を持って調べてみると、いろいろ興味深いことに出会う。
 ベルギービールには<トラピストビール>というカテゴリーがあって、これはトラピスト修道院で造られるビールのこと。 トラピストビールを作っている修道院は世界に6ヶ所だけで、そのすべてベルギー国内にある。
また<アビィ・ビール>というカテゴリーのビールもあり、これは修道院から製法製造のライセスを受けて一般の商業醸造会社がつくるビールで、 僧侶たちによって与えられたレシピと伝統を守っているということだ。
またおもしろいのは、それぞれの銘柄のビールに独自のビールグラスが存在するということ。 例えばシメイのグラスはミサの中で用いられる聖杯の形をしているし、一昨日飲んだ、ヒューガルデンの「禁断の果実」というビールにも美しいグラスがある。 ビールは缶のまま、あるいはメーカーのロゴの入った安いグラスで飲むものという意識が覆されてしまった。
わたしが焼酎に興味を持ったのは、大きな工場で機械的に製造されるのではなく、その土地で取れる作物を用いて、その土地の小さな酒蔵が昔ながらの製法で、 焼酎を造っているからだった。それだからこそ、そこに個性があるし、その土地のエネルギーが伝わってくるのだ。 そういう意味では、焼酎に寄せる興味と同質のものをこれらベルギービールに感じた。いえそれ以上に、造られる場所が修道院というのは、わたしにとっては何ともうれしいことだった。
しかし、いったいなぜ、戒律の厳しい修道院のような場所で古くからビールが造られていたかということだが、キリスト教の儀式には聖餐式に用いるためのワインが必要なのだが、ブドウが採れない北部ヨーロッパでは、ワインの代りにビールを醸造され、修道院においてもワインの代りにビールが供されていたのだ。ホップがビールに用いられるようになる前は、ビールはハーブなどを原料にして、天然酵母を用いて造られていたので、伝統的な酒造方法を守る修道院にベルギービール独特の特徴あるビールが生き残ったというわけだ。
現在、修道院ではその収益を慈善事業に用いるべく生産されているので、このビールの生産そのものが修道士達の奉仕の賜物という事になり、それを飲むわたし達もまたその修道士達の祈りや願いと共に、その収益事業にいくらかでも参加していることになるわけだ。 なんとすばらしいビールだろう! というわけで、少し値段は高いけれども、そういう豊かさの凝縮されたトラピストビール達を味わいたい。
 さて、6つのトラピストビールは下記の通り。
アヘル修道院 ー アヘル オルヴァル修道院ー オルヴァル スクールモン修道院ー シメイ サン・レミ修道院ー ロシュフォール 聖心ノートルダム修道院ーウェストマール シント・シクステュス修道院 ー ウェストフレテレン (写真はシメイビールを造っているスクールモン修道院)
シメイビールのオフシャルホームページは日本語でも読むことができて、さらにこの修道院やビールについて深く知ることができます。
また、ベルギービールについてとても詳しくておもしろいサイトが見つかりました。6つの修道院の写真やそれぞれのビールの特徴もここで分かります。 ↓ ベルギービールの魅力
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