たりたの日記
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2005年12月22日(木) さいわいびとがやってくる

アンサンブル・エクレシアの「ノエル」、フランスの古いキャロルが流れています。クリスマス近くのこの時期にはこのCDや同じ演奏者の「古いイギリスのキャロル」、「聖母マリアの子守唄」(これはイタリアの古いキャロル)を繰り返し聴いています。

よく街に流れているキャロルとはちょっと赴きの異なるこのひそやかなキャロルは暗い部屋のキャンドルの光と良く似合います。はるかに遠い昔の音楽ではあっても、それは今の時を生きているわたしの中に、この身体をいただく前から染み込んでいたようなそんな切ないほどの懐かしさを覚えるのです。

昨日、銀座のギャラリー惣、はるさんこと榎並和春氏の個展会場でもこの曲が流れていました。CDとして売られているのですから、当然他の場所でも聴かれ得るものなのに、自分の心の中で鳴っている音がどうしてここでも鳴っているのだろうなどと思ってしまうのでした。

ギャラリーの絵の間をアンデスの笛の音も流れていました。初めて聴く楽器の音や節であるにもかかわらず、どこか懐かしく、すでに知っているという感覚が起こるのでした。そういう意味でははるさんの絵もそうです。すでに知っているというような懐かしさを覚えます。音は一枚一枚の絵と時を越えて響き合っているようでした。

絵の印象は渋い金色、黄土色、深い黄色・・・しいんと静かなもの「静謐」がはるさんの絵のひとつの特徴だとわたしは感じているのですが、その静まった中に、喜びの光のようなもの、ふつふつと命に溢れるものも感じるのでした。

ギャラリーの中央のテーブルでおいしいコーヒーとお菓子をいただきながらはるさんとKさんと3人で、絵のテーマや画材のこと、「あそびべ」の言葉の由来や音楽のことなどおしゃべりができて楽しいひとときを過ごしました。

ここ1,2年の大作がまとめて展示されている今回の個展でしたが、奥まった部屋、ギャラリーのオーナーのオフィスの壁に小品が何点か掛けてあることが後になって分かりました。
奥の部屋を覗いて見ると、絵の中に1枚、天使の絵がありました。いつだったか、はるさんがこれまでのDMを送ってくださったことがあって、その中に「さいわいびと」というタイトルの白い天使の絵がありました。その絵が買いたいと思ったのですが、うかがってみると、それはすでに買われていて手元にないということでした。幸い、さいわいびとはシリーズでこれからも描かれるということだったので、そのうち、何番目かの「さいわいびと」に会えるだろうと思っていました。

はじめその絵を見た時は、「あ、天使!」と思ったものの、その絵はまだわたしから遠かったのです。他の絵と同様、素敵な絵だけれど、ここに属するもの、誰かのものという感じでした。
ところが帰る前にもう一度見ておこうとその絵を遠くから見た時、ふっとその天使が動きました。いいえ、ビジュアルに動いたというわけではありません。それがすっとわたしの内側に入ってきて留まったといった感じでしょうか。その瞬間、この天使はわたしのもの、わたしの部屋にあるはずの絵、という「必然」が起こりました。
その時、ちょうど今聞いているフランスの古いキャロルの一節がわたしを促すように響き、その時と重なりました。


わたしは物を買う時はたいていひどく迷い、そのことがしんどくて買い物自体が嫌いという人間なのですが、この絵を買うかどうか、あるいはどちらの絵にするかというような迷いが少しも起きないことは不思議でした。
買い物モードではなく、この歌を習おう、この踊りを踊ろう、この本を読もう、この勉強会に参加しよう、この人に会おう、というように、考えるより先に行動するという何かを始める時のモードに近いものがありました。


というわけで、28日にはここへ「さいわいびと」がやってきます。
そのことがとても楽しみです。


たりたくみ |MAILHomePage

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