たりたの日記
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2005年11月23日(水) サロメ日和

風邪はすんなりは立ち去ってくれない模様で、今日はおでんをつつきながら一日風邪と付き合うことになった。

午前中はベッドにもぐって読書。次回のゼミのテキスト、仲間のNさんの作品を再読。うまいなぁ、よく書けているなぁと感心しながら読む。しかし、自分の生活を題材にして小説を書くということには相当なエネルギーが必要だろう。そこに自分の過去も今も顕にするのだから、どこかで強い自己肯定とふっきれたものが必要になるだろう。その強さが作品の底に流れていて、安定したものを感じる。後4、5回は読むつもり。読むほどにクリアになっていくものがいつもあるから。

その後に、昨日から読んでいるエミリ・ディキンスン評伝(トーマス・H・ジョンスン)をディキンスン詩集の原詩を開きながら読む。翻訳の文章では当然ながら、英詩の韻律の説明が実際には音として聞こえてこない。ディキンスン全詩集を手に入れていておいてよかった。時間はかかるが、ディキンスンとはじっくりとかかわっていくつもり。短い詩が多く、シンプルな言葉で綴られているが決して易しい詩ではない。彼女の神への思いや信仰上での葛藤、そういうものを把握する必要があるように思う。

寝ながら本を読むのもなかなか疲れるので、午後はビデオを見ることにした。前から時間がたっぷり取れた時に見ようと思って、もう1年近くもその機会がないままだったオスカー・ワイルドの「サロメ」。

去年の日記に「サロメ」を読んだことを書いたが、その時見たいと思った劇を1年以上も経って見たことになる。今日はそれを見たい気持ちとタイミングがうまく一致した「サロメ日和」だったのだろう。

ひとつはリヒャルト・シュトラウスの歌劇「サロメ」全曲。カール・ベーム指揮、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団演奏。テレサ・ストラータスのサロメは純真でかつ官能的、愛らしくまた残忍なサロメを良く表現している。

もうひとつは数年前に銀座セゾン劇場で上演されたスティーブ・バーコフ演出の劇「サロメ」。こちらはバーコフ自身が演じるヘロデ王が最も印象的だった。オペラとは対照的で、舞台装置も衣装もまた登場人物も極めてシンプル。
小道具も全くなく、スローモーションとパントマイムの手法を駆使している演技は新鮮だった。音楽はピアノのみ、しかも曲はラグタイム。2000年前のユダヤとは全く関係のない音楽が意表を突く。しかし、脚本はオスカー・ワイルドの原作のまま。むしろ、ワイルドの言葉をいかに伝えるかというのがこの劇の目玉なのだろう。


たりたくみ |MAILHomePage

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