狭 い 行 動 範 囲

TOP

★短編小説17 - 2006年03月30日(木)





[再スタートのホイッスル]


昨日の夜、懐かしい奴から電話が掛かって来た。
そいつとは1年ぶりの会話で、
相手の第一声を聞いたとき、俺は少しだけ怖かった。
「元気そうじゃねぇーか。」
だけど言葉は案外、すんなりと出て、
『オメェーもな。』
電波の悪い流川の声は、少しざらついていた。

高校を卒業して、流川はアメリカに飛び立った。
俺は日本に残って大学へ進学し。
大学を卒業してから実業団のチームに入ってプレイをしている。
流川と別れたのは、1年前の話しになる。
理由は至って下らない。
流川が向こうで女を作ったのが、ニュースとなって俺の耳に流れ着いた。
それが原因で“お別れ”したのだ。

『来………に、帰る。』
よく聞き取れない声が、受話器の向こう側から聞こえる。
外から電話を掛けているのか、雑音と持ち前の声の小ささで、うまく伝わらない。
「何?」
聞き返さなくても、なんとなく分かる。
『来週、日本に帰る。』
今度は割と大きく発した声が、きちんと俺の耳まで届いた。
その言葉は、やっぱり想像していた通りだった。
「……帰ってくるんか。」
返す言葉は特に無かった。
『ああ。』
それからしばらく沈黙が続いて。

そのあと静かに、電話は切れた。



...

    ←過去
未来→
TOP


↑と思ったらココをクリック
My追加