詩のような 世界
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ねこ という名の少女がいた 皆に名前を呼ばれるうちに 彼女は本当にねこになった しっぽはさすがになくても 一目でねことわかるレベルだ
友だちは彼女を見て嘲笑したが 彼女はただ解放されたような笑みを 浮かべるのだった
何を訊ねられても にゃあ 何を感じても にゃあ
彼女は言葉をなくしていた しかし不自由とは思い難かった 鳴けば餌は現れるし 答えたくない問いには にゃあ でやり過ごせる利点がある
暖かい午後は陽の当たる階段でひるね かすかに聞こえる学校のチャイムとも 今となっては無関係だ
彼女はヒトにのどをなでてもらうことに 全身全霊をかければよかった それで幸せだった いずれ幸せだということすら 忘れてしまうだろうけれど
ある日を境に彼女は タマ と呼ばれるようになった
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