| 2010年11月09日(火) |
米澤穂信「インシテミル」 |
また風邪をひいてしまった・・・(^^; ついこの間、ようやく治ったと思ったのに。 毎日、疲れがたまっている上に、ややもするとストレスが加わるのだから、風邪のウィルスをもらえば、ひとたまりもないってことでしょうかヽ(´・`)ノ ちょっとでも悪化させようものなら、二日間は寝込まないと治らない。 当然、仕事も休み。あ〜あ、やることたくさんたまっているのに(-"-;)
でも、こんな時の唯一の楽しみが、本を読めること。 困ったことに、最近は寝込んだ時くらいしか、ゆっくり本を読む時間が持てないので。 鼻がつまり、咳がでて、熱でぼーっとしながらも、眠りから覚めた隙を見て、本を読む。
この間の風邪の時に読んだのが、米澤穂信さんの「インシテミル」でした。 この不可思議なタイトルを知ったのは、本よりも先に、テレビで流れていた映画のCMでした。 主演が藤原竜也くんと言い、映画のサブタイトルに「七日間のデスゲーム」とあるところと言い、嫌が上にも数年前の「デスノート」を思い出し、いったいどんな話なのだろうと思っていたら、原作があることを知りました。 この後、ちょっとネタばれです(^^; 知りたくない方は、読まないで下さいねm(__)m
ある人文科学的実験のモニターとして、11万2千円と言う、常識を超える時給を出すと言う広告に惹かれ、集まった12人の男女。 彼らが連れてこられたのは、人里離れた山の中に建つ奇妙な建物「暗鬼館」。 その地下に七日間閉じ込められることになる。 洋館を思わせる造りの暗鬼館。ラウンジやキッチンを中心にして、円形に並んだ部屋は、それぞれのプライベートルームの他に、金庫室、監獄、そして霊安室などがある。 鍵のかからないプライベートルームには、おもちゃ箱と称するものがあり、その中には、それぞれの部屋ごとに違う、凶器となり得るものが入っていた。 いったい何のために? この実験の意味するところは? 疑心暗鬼な12人。やがて、最初の犠牲者が出て・・・
なんとも不気味なお話です。 でも、ミステリー好きな私としては、このいわゆる「クローズドサークル」ものは、つい興味がわいてしまうところ(^^; 船でしか行けない孤島、雪に閉じ込められた山荘などなど、そこから逃げ出せない状況の中での連続殺人、と言うテーマは、これまたミステリー作家さんは一度は挑戦してみたいらしい(笑)
代表格は、なんと言ってもかの有名なアガサ・クリスティの「そして誰もいなくなった」でしょう。 あれは怖かった(^^; 読んでいて、ぞくぞくしました。 結末は、正直「これってアンフェアかも」みたいな感じはありましたが。 なにしろ、そこへ辿りつくまでの物語の見事なこと。 わりと最近読んだのでは、近藤史恵さんの「凍える島」なども雰囲気があって面白かったです。
このクローズドサークルものは、まず舞台がひとつの鍵になってくるのでしょう。 何人かの人間を一箇所に集める、しかも逃げられないよう閉じ込める。 その場所自体が、どれほどの雰囲気を持つかによって、怖さも不気味さも異なってきます。 「インシテミル」の舞台も、怖いですねえ。 なんたって、地下ですよ。窓ないし、外見えないし、私などそれだけでパニックになりそうです(笑) しかも、最初から一人ひとりに凶器が与えられている。 身を守るためか、攻撃するためか、いったい何をさせようとしているのか、とみな不信感でいっぱいになる。
どきどきはらはらで、興味深く読み進めることができました。 ただ・・・最後は、どうにも私には納得がいかない! あ、すみません、この後ますますネタばれですm(__)m
犯人は最後にわかります。トリックも明かされます。 でも、この舞台を準備し、この実験を行った者の正体はわからずじまいなのです。 それこそが、最大の謎だと、私は思うのですが。 今まで読んだクローズドサークルものは、最後にその状況を企てた本人が、真の犯人として明かされる。 そこに、犯罪の理由や意図が存在するのですね。 でも、この「インシテミル」では、あくまでも実験のまま。もっとも、だからこそ映画の副題が「デスゲーム」、これはゲームみたいなものなのだと言うことかしらん(^^; これが現代風? 確かに、殺伐とした事件の起こる今だからこそ、かもしれませんが。 やはり私的には、最後にあっと驚く仕掛け人の正体がわかって、「ああ、そうだったのか」と納得したい!
ちなみに「インシテミル」は「淫する」からの言葉らしい。 淫する・・・度が過ぎる。 なるほど、実験としてもゲームとしても、これは度が過ぎますね。 とは言え、読んでいて、思ったより不快感はなかったです。 怖さもさほど・・・(^^; 怖さ、不気味さとも、「そして誰もいなくなった」には敵わない。 さすがミステリの女王アガサ・クリスティ!なのです。
この「インシテミル」、映画の方の評判はいまいちみたいで、私も見にいくひまはなさそうですが(^^; 原作の中の役を、誰がどう演じているかは、ちょっと見てみたい気がします。
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