| 2009年11月11日(水) |
映画「風が強く吹いている」 |
いつも思うのです、マラソンや駅伝を見るたび。 どうして、ただ走っているだけなのに、見てしまうんだろう・・・ 他のスポーツと違い、ひたすら走る人しか映らない。 映像的には、ものすごく変化があると言うほどでもない。 道と走る人だけ。なのに、そこにはドラマが生まれる。
新聞の広告に、この映画のことが載っていた時、「見たい!」と思いました。 毎年、お正月の定番として楽しみに見る箱根駅伝が舞台と言うこともありました。 ちょうど同じ頃に、主演の二人の俳優さんのインタビューをテレビで見ました。この映画のため、かなり本格的な走りの練習を積んだとか。 クライマックスとなる箱根駅伝のシーンも、相当大がかりな撮影だったそうで、もちろん本当に箱根のコースを走っているとのこと。 ますます見たい! 運よく、レディースデーのお休みがありました。これは行かなきゃ(笑)
通称「アオタケ」と呼ばれる、まかない付きの安い寮に、一人の青年が連れてこられます。 連れてきたのは、自らもここに住み、寮生たちの世話をしている寛政大学4年のハイジ。 連れてこられたのは、新入生のカケル。 天才的なその走りを見て、ハイジが強引に連れてきたのです。
カケルの歓迎会を称して、寮のみんなを集めたハイジは、そこで今まで隠していた夢を披露します。 それは、カケルを入れてようやく10人になったこの寮のメンバーで、箱根駅伝に挑戦すると言うもの。 実は「アオタケ」は寛政大学陸上部の寮で、ここに住むには陸上部に入部して、毎朝5キロ走ると言う条件があったのです。
とは言え、実際にランナーとしての経験があるのは、ハイジとカケルの二人だけ。 他の個性溢れるメンバーは、ヘビースモーカーの留年生やら、クイズオタクやら、漫画オタクやら・・・ この突拍子もない計画に、カケルは「絶対無理!」と大反対。 けれどハイジは、自分が目をつけて勧誘したメンバーたちの運動の経験や、潜在能力を信じている。 そして、みんなも日ごろ世話になっているハイジへの好意もあり、とりあえず練習を始めることを承諾したのでした。
箱根駅伝に出るためには、厳しい予選を通過しなければならない。 天才ランナーのカケル、致命的なケガをして、一時はランナーの夢をあきらめかけたハイジ。そして、寄せ集めのメンバーたち。 道は、決してたやすくはありません。それぞれの奮闘努力が始まります。 彼らの夢への挑戦を、わくわくしたり、ひやひやしたり、笑ったり泣いたりしながら、共に眺めた気分になれる映画でした。
10人のメンバーは、個性豊かですが、みんなどことなく可愛げかあり、好感が持てて、応援したくなります。 話の展開は、まあ、うまく行きすぎかな(^^; スポーツものとしては、ある意味定番と言った展開なのかもしれませんが、そこを素直に行っちゃったよ、って感じ(笑) でも、変に奇をてらったところがないのがよかった。 見る方も、素直に楽しんで、応援して、爽やかな後味が残る、みたいな。 私自身が、ちょっと疲れて気分も沈みがちだったこともあり、この爽やかさにはとても救われました。
なぜ、走るのだろう。走ることの意味って何なのだろう。 これは、映画の中でのカケルの疑問でもあったかもしれません。 メンバーの一人の走りながらの心のつぶやきが、印象に残っています。 駅伝の途中、波に乗って、いつもにないスピードで走ることを経験したその彼は、心の中でカケルに話しかけます。
「これが、いつもお前が見ている風景なのか。なんて孤独で・・・なんて美しいのだろう」
ああ、きっとそれなのかな、と思いました。 走っている者にしか見えない風景があるのかもしれない。 それは、苦しさを乗り越えて走る者への、かけがえのないご褒美なのかな。 そんなことを、走った経験のない私は想像し、その感覚をうらやましく思ったのでした。
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