『水の迷宮』、このタイトルを見た瞬間、興味を惹かれました。 なんとも美しい神秘を彷彿させるタイトル・・・ さらに、広告に載っていた表紙写真に書かれていたコピーが「胸を打つ感動と美しい謎」 ううむ、いったいどんな話しだろう、読みたい! と、さっそく手に入れたわけですが(笑)
『水の迷宮』、著者は石持浅海さん、ミステリーです。 裏表紙の説明を読むと、なるほど水族館を舞台にしたミステリーらしい。 だから『水の迷宮』なのか、などと納得しながら・・・ でも、最後に書かれていた文章が気になる。 「すべての謎が解き明かされたとき、胸を打つ感動があなたを襲う」 はて、胸を打つ感動??? 普通、ミステリーは謎が解き明かされた時と言うのは犯人がわかる時、ですよね。 もちろん、そこで犯人のやむにやまれぬ事情があったり、悲しい過去があったりで、しんみりとした感動に浸ると言うこともあることはあるのだけど。 「胸を打つ感動」と言うと、ちょっと違うのではないかしらん? と思いながら、気がつけばがんがん読み進めていました(笑)
舞台は首都圏の人気スポットである水族館。 展示生物を狙った不可解な事件と、それを暗示するメール、満員の水族館を奔走する職員たち・・・そしてついに殺人が起きてしまいます。 謎を追うのは、水族館に勤める職員の青年と彼の親友。 えーと、これ以上はネタばれになりますね(^^; で、最後の謎が解けた時・・・はい、涙が出ました。そこで想像する映像の美しさに感動します。 それは、一人の男が追いつづけた壮大な夢。 それが事件の発端であり、また事件の解決もその夢によってでした。
実際には、このような解決はまずありえないだろう、と思います。 それは重々わかっていながら、この解決に励まされ、ほっとします。 誰もが、この水族館を心から大切に思い、守ろうとする。 その思いが、物語を引っ張って行きます。 読み終えて心に残るのは、美しい夢・・・様々な苦悩を飲みこんであまりあるもの、それが夢だったのです。 どこかうらやましいような気さえしました。
でも、そんな私の心にぐさっと来ることも、この本の最初には書かれていたのですけど。 夢を実現するには、周到な準備とそれに続く努力が必要。なにもせずに夢を語る人間のなんと多いことか、と・・・(^^; ううむ、痛い。なにも努力せずに夢がないと嘆くのは、あまりにも怠慢と言うとでしょうか。 いや、その前に、それほどの夢がはたして持てるのか、と・・・ 感動しつつも、夢と言う言葉の美しさと、同じだけの重さを感じたりしたのでした。 いい本に出会えたと思います。
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