雑念エンタアテインメント
モクジ 雑念
人の体温って、こんなにも暖かかったっけ?
其れを感じたのって、いつだっけ。 なんだか、とても遠い昔のように思う。 実際、遠い昔なんだけどさ・・・。
頭がスッキリした代わりに、身体が思うように動かない。 温もりというのは、こんなにも人の動きを支配するのかしら。 人の体温も然り。 あー、此処から出たくない。 この香り・・・この香り、なんだろう。
カレー?
いやいや、冗談ですよ。 シャツの香り? や、違うなぁ・・・洗濯物の香りとは、また違う。 香水? ううん、香水の香りなんかじゃない。
ああ。 この人の香りだ。 体臭・・・って言ったら、臭そうに思うけど、そんなんじゃなくて。 なんか、懐かしい匂い。
日差しに包まれた此処は、暖かくて優しくて、何もかも忘れてしまいそうになる。 体温の上昇と共に、だんだんとまた瞼が重くなってきた。
「紅子さん・・・何か点滅してますよ、ホラ、アレ。」
眠りの淵に落ちる瞬間、掠れた浦原さんの声がした。 アレ、と指す方を見ると、其処には電話があって、留守電のライトがチカチカしていた。 唯の留守電です、と言って、瞼を閉じると同時に思い出した。
ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ
勢い良く起きあがった反動で、肘鉄を食らわしてしまった。 「イ゛ッ!」 顔面を抑えた状態で、暫し苦悶の浦原さん。 嗚呼、ゴメンナサイ! だけど、今、謝ってる時間はないです!
どうしよう! どうしよう! どうしよう!
アタシの慌てっぷりに気付いたのか、先程の肘鉄で右頬を赤くした浦原さんは “店なら、今日は定休日ですよ?”と言い、クセのある髪に指を通して起きあがった。 「店じゃないです!店なんかどうでもいーんです!」 アタシは、慌てているにもかかわらず、1メートル以内でしか動いていなかった。 うーん・・・之は、実に慌てている証拠だ。 「店なんか、って・・・酷いっス。(苦笑)」 嗚呼、ゴメンナサイ! 其れに関しても謝ってる暇は、無いの!
どうしよう! どうしよう! どうしよう!
今、何時ですか! 今! 今、何時!?
「アハッ!5時っスよ、夕方の。(笑)寝過ぎましたね、これは。」 サイドテーブルの時計を見て、浦原さんは呆れたように笑った。 5時? 5時って・・・何時? 「アレ・・・大丈夫ですか? また、気分悪くなりました?」 ベッドサイドで仁王立ちになり、両手を頭にやったアタシを覗き込んできた。 「違います・・・・集合時間、遅れちゃった・・・。」 「約束ですか?遅刻は、ダメっスよ。 5分前集合ですよ、浦原家は。そう教えられましたからね、幼い頃。」 “そんなだから大人になった今でも身に付いちゃってますよ(笑)” と続ける彼を余所に、アタシはその場にへたりこんだ。 「紅子さん、カレー・・・食います?」 アタシの前にあぐらをかき、笑顔でそう言った。 「食います・・・。」
温もりは、まだ片隅に残っていた。
+一言雑念+ カレー!!!! カレー、食べたくなりますね、読んでると。 ←自分で言うな 紅子さんと一緒で、“人の体温って?”って感じです、アタシ。 長い間、独りで寝てきたからなー。(笑) って、笑えねえっよ! つД`)・゚・。・゚゚・*:.。 ああ・・・この涙も虹に変わるのね。 っつーか、紅子さんは相当な慌て者ですね・・・や、たぶん。
←拍手とコメント宜しく哀愁!
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