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モクジ 雑念

12+緊張と緩和+TE

連れてこられた店は、ゆったりとした落ち着いた空間だった。


ドアを開けて入ると、2人の従業員が立っていた。
1人は男性で、タクロウよりも背が高い。
黒のスーツが、よく似合っている。
その隣には、女の子が1人。
女性、というよりも、女の子という言葉の方がしっくりくる風貌だった。
表情が何処かぎこちなく、口唇を真一文字に噛み締めている。
強ばっているのか、彼女は緊張しているようだ。
頭を下げる2人の前を“こんにちは”と言って通り過ぎると、彼女は頭を上げた。

「バレたかな?」

隣を歩くタクロウに小さく耳打ちした。

「何が?」

「オレ、ってこと。」

「・・・オマエさ、自信過剰すぎない?(笑)」

「そぉ?(笑)」

そーかなー。


部屋に通されオーダーを済ませると、2人は扉の向こうへ消え、
部屋にはタクロウと2人だけになった。

「緊張してたな、彼女。(笑)」

タクロウは、笑いながらグラスを口に付ける。

「うん、凄い噛んでた。
 やっぱバレてんだよ。(笑)」

「バレるとマズイの?」

「え、べつに。(笑)」

他愛もない会話。
煙草をくわえるとタクロウが“どうぞ”と言って、ジッポに火を付ける。
他愛もない仕草。
テーブルに肘を付いて、部屋を見渡した。
一輪挿しの花瓶には、色鮮やかな花が部屋を彩っていた。
其れは、部屋のいたる場所に飾られているけど、不思議と嫌味はなかった。

「で?
 こないだの企画、どうだったの。」

ジッポの蓋の金属音を鳴らして、タクロウは言った。
静かな部屋に、キンッキンッとその音は反響する。

「んー、面白かったよ。
 新鮮だよね、こういう企画は。
 最初はね、2人とも緊張してたんだけど、話すうちに和んでくれてね。
 オレの巧みな話術で。(笑)」

「噛み噛み話術で。(笑)」

ヒドイな。
其れは、ラジオやテレビだけだってば。
日常会話は、問題ないの。

会話を続けようとしたトコへ、さっきの彼女が料理を運んできた。
言いかけた言葉を飲んで、彼女と料理を見た。
彼女の口元が何か呟いてるようにも見えたけど、其れよりも料理が美味そうだったので
“まだ緊張してんのかな?”と一瞬、頭を過ぎり、オレの目は、すぐに料理へと移った。

“ごゆっくりどうぞ”と言って背を向けた彼女を目で追い、話を続ける。

「でさ、1人来なかったのね。
 どう思う?
 他の外れた人が、可哀想だよね。」

ナプキンを広げながら、頭の中は、どれから先に食おうか悩んでいた。

「あのシンプルなハガキの子?」

タクロウは、もう一度グラスに口を付けた。

「選ぶハガキ、間違えたなー。」

そう言って、なんとなく振り返ると背を向けたはずの彼女と目が合った。
一回り、彼女の目が大きくなったような気がしたけど、其れを確認することもなく
彼女は軽く会釈をして、そそくさと行ってしまった。


それに答えようとしたけど、彼女には届かなかったみたいだ。




一言雑念
タクロウが、ジッポの火を付けるわけないよな。(笑)
こんなタクロウいやや!と思いつつも、ありえる!と、ほくそ笑むアタシ。(笑)
前の話しと辻褄、合ってますかね?(笑)
下書き通りに書いてるんだけど、其の場で付け加えたりしてしまうので
合ってないかも知れませんが、其の時は教えて下さい。(笑)


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宇野 87 |メイル