雑念エンタアテインメント
モクジ 雑念
連れてこられた店は、ゆったりとした落ち着いた空間だった。
ドアを開けて入ると、2人の従業員が立っていた。 1人は男性で、タクロウよりも背が高い。 黒のスーツが、よく似合っている。 その隣には、女の子が1人。 女性、というよりも、女の子という言葉の方がしっくりくる風貌だった。 表情が何処かぎこちなく、口唇を真一文字に噛み締めている。 強ばっているのか、彼女は緊張しているようだ。 頭を下げる2人の前を“こんにちは”と言って通り過ぎると、彼女は頭を上げた。
「バレたかな?」
隣を歩くタクロウに小さく耳打ちした。
「何が?」
「オレ、ってこと。」
「・・・オマエさ、自信過剰すぎない?(笑)」
「そぉ?(笑)」
そーかなー。
部屋に通されオーダーを済ませると、2人は扉の向こうへ消え、 部屋にはタクロウと2人だけになった。
「緊張してたな、彼女。(笑)」
タクロウは、笑いながらグラスを口に付ける。
「うん、凄い噛んでた。 やっぱバレてんだよ。(笑)」
「バレるとマズイの?」
「え、べつに。(笑)」
他愛もない会話。 煙草をくわえるとタクロウが“どうぞ”と言って、ジッポに火を付ける。 他愛もない仕草。 テーブルに肘を付いて、部屋を見渡した。 一輪挿しの花瓶には、色鮮やかな花が部屋を彩っていた。 其れは、部屋のいたる場所に飾られているけど、不思議と嫌味はなかった。
「で? こないだの企画、どうだったの。」
ジッポの蓋の金属音を鳴らして、タクロウは言った。 静かな部屋に、キンッキンッとその音は反響する。
「んー、面白かったよ。 新鮮だよね、こういう企画は。 最初はね、2人とも緊張してたんだけど、話すうちに和んでくれてね。 オレの巧みな話術で。(笑)」
「噛み噛み話術で。(笑)」
ヒドイな。 其れは、ラジオやテレビだけだってば。 日常会話は、問題ないの。
会話を続けようとしたトコへ、さっきの彼女が料理を運んできた。 言いかけた言葉を飲んで、彼女と料理を見た。 彼女の口元が何か呟いてるようにも見えたけど、其れよりも料理が美味そうだったので “まだ緊張してんのかな?”と一瞬、頭を過ぎり、オレの目は、すぐに料理へと移った。
“ごゆっくりどうぞ”と言って背を向けた彼女を目で追い、話を続ける。
「でさ、1人来なかったのね。 どう思う? 他の外れた人が、可哀想だよね。」
ナプキンを広げながら、頭の中は、どれから先に食おうか悩んでいた。
「あのシンプルなハガキの子?」
タクロウは、もう一度グラスに口を付けた。
「選ぶハガキ、間違えたなー。」
そう言って、なんとなく振り返ると背を向けたはずの彼女と目が合った。 一回り、彼女の目が大きくなったような気がしたけど、其れを確認することもなく 彼女は軽く会釈をして、そそくさと行ってしまった。
それに答えようとしたけど、彼女には届かなかったみたいだ。
+一言雑念+ タクロウが、ジッポの火を付けるわけないよな。(笑) こんなタクロウいやや!と思いつつも、ありえる!と、ほくそ笑むアタシ。(笑) 前の話しと辻褄、合ってますかね?(笑) 下書き通りに書いてるんだけど、其の場で付け加えたりしてしまうので 合ってないかも知れませんが、其の時は教えて下さい。(笑)
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