雑念エンタアテインメント
モクジ 雑念
彼女が立っていた。
ン?と眉毛を上げて、何?と表す。 彼女は、横をチラチラ見ながら顔をしかめた。 どうやら、横には誰か居るみたいだ。 でも、此方からは長い影しか見えない。
「・・・なにか?」
彼女に気付いたタクロウが、声を掛けた。
「あの・・・今・・・・宜しいでしょうか。」
一言喋るたびに、彼女は深く息を吸った。 顎を少し引いて、目線は床を見つめたままだった。
一通り食事も終わったし、今はワインを飲んでるだけだから、別に構わない。
「どうぞ。」
そう言うと、彼女は小さく頭を下げてからテーブルの前まで歩み寄った。 すると、ドアの向こうを、背の高い彼が此方を伺いながら通り過ぎた。 オレと目が合うと、彼は笑顔を向けて小さくお辞儀をした。 其の時、彼は彼女をチラッと見て通り過ぎたんだ。
「お食事中に・・・・すいません。 あのぉ・・・お伺いしたいことがありまして・・・。」
物腰低く、彼女は言った。
バレたのかな、と思い、テーブルの下でタクロウの足に合図を送ると、 タクロウは下を向いてクックックと喉の奥で笑った。 (まあ、バレたっていーんだけどさ/笑)
「・・・さっき、お話ししてらしたのを・・・・聞くつもりはなかったんですけど。 無かったんですけど・・・聞こえちゃって・・・。」
サインかな?
握手かな?
ま、料理も美味しかったし、今飲んでるワインも旨いし。 今ならなんだって聞くよ。(笑)
「ハガキのことなんです。」
とぎれとぎれ喋っていた彼女は、全てを吐き出すようにそう言った。
ハガキ?
サインじゃなくて?
握手でもなくて?
ハガキ?
「あのハガキ書いたのアタシなんです。 “当てて下さい”って書いただけのハガキ出したの、アタシなんです。 ・・・先程は、名前も言わず申し訳ありませんでした。 私、江戸川紅子と申します。」
嗚呼、あのハガキか。
「・・・まさか、当たるなんて思ってもなくて、当選した時は凄く嬉しかったです。 ウキウキして緊張して眠れなくて・・・ホント、すいませんでした。」
喋り続ける彼女が、あのハガキの子か。
「緊張して眠れなかったのに、前の日に飲み過ぎて夕方まで寝―――」
彼女は、ハッとして、顔を真っ赤にした。 言うつもりのないことまで口を出たんだろう。
なんだか、酒が不味くなってきた。 タクロウは、飲み干したグラスになみなみと注ぎ入れる。 オレのグラスには、まだワインが少し残っていて、其処には、しかめ面のオレが居た。
「出て行って貰えますか?」
いつになく冷たい声。 グラスに映る自分が厭で、ワインを飲み干した。
+一言雑念+ や、題名は、な〜んも関係ないです。(笑) ワインで題名を考えてたら、確か民生の曲にこんなんがあったなー、ってのを思い出して。 アレは、“イワンのバカ”だったかな? で、今夜のような題名に。
TERUの言うこと聞いてあげたいですゥ
←拍手とコメント宜しく哀愁!
|