CGI 雑念エンタアテインメント
雑念エンタアテインメント
モクジ 雑念

19+手招き

アタシが何を謝って貰うのか。
タクロウの言ってる意味が、よく分からない。

たぶん、こうかな。

彼女が、どうしようもない理由で企画に参加しなかったのは、彼女が悪い。
だからといって、テルの言い方は、冷たすぎるんじゃないの?
謝んなさいよ、テッコさん。

ま、そんなとこでしょう。

そんなとこだろうとは思うけど・・・早く、この場所から去りたい。
前を通る人が、さっきからチラチラ見てるし。



いつもブラウン管を通して見てる人が、目の前に2人も。

1人は思ったとおりの人で、もう1人は、いつも見せるような笑顔はなく。
さっきから拗ねっぱなし。
後者は、予想外の表情をアタシに向けてくる。
その表情の所為で、綺麗な形をした口唇が、少し尖って形を崩していた。
でも、其れは其れで絵になっていて、卑怯だなあ、と思わせる。

拗ねた顔のテルと、その顔を見て更に好感度を上げた自分に、なんだか笑みが零れた。
この人には、ファン心理を擽られる。



「テッコ。」



ハッキリと聞き取れる口調で、タクロウが一喝する。
タクロウに後頭部を向けていたテルは、正面を向いてタクロウを一瞥した。
身長差はあれど、其の目は、真っ直ぐにタクロウに向けられていて。
眉間には深い皺が寄っていて、もちろん、口唇は尖ったまま。

「あの・・・ほんとに其処までして貰わなくてもいーんで。
 明日も早いので、そろそろ失礼します。
 今夜は、どうもありがとうございました。
 ・・・宜しかったら、また、お店にいらして下さい。
 スタッフも喜ぶと思います。
 ホントに・・・本当に今日は、失礼しました。」

フッと一息吐いてから、2人に背中を向けた。

肩が重い。
短時間のうちに色々ありすぎて、なんだか疲れてしまった。
疲れと共に頭も限界に近づいてるようで、無意識のうちに溜息にも似た息を吐いていた。


























「ごめん」


























歩き出していた足を踏み留めた。

ごめん

確かに、そう聞こえた。
誠意の感じられない声。
唯。
どんな顔で、そう言ったのか。
其処に興味があって、振り向いてみた。
やっぱり、擽られてる。



尖った口唇は変わらず。
けど、あの眼は真っ直ぐに此方を向いていて、暫く其処を動けなかった。
緊張と高揚が身体を駆けめぐり、目がそらせなかった。



「エライッ!大人になったなーっ、テッコは!」

茶化すようにタクロウが言って、テルを肘でつつく。

「うるさいな。
 オレは、謝る気なんて無かったのっ。
 タクロウが煩いから謝ってやったんだよ。」


あー・・・ハイハイ、さようでございますか。(呆笑)
この人、之が素なのかな、ホントに。


「テッコ・・・また殴られたいの?」

「今度やったら、もう歌わない。」

「なーに言ってんの!(笑)
 我慢出来ないくせにー。(苦笑)」

「・・・。(拗)」

拗ねるテルを満面の笑みで見つめるタクロウ。
その顔は、とても満足そうで。
そっぽ向いたテルの顔にも、何処か笑みが含まれていた。

と、其処へ、1台の車がやってきた。
迎えの車らしく、運転手は渋滞で遅れたことを2人に告げていた。

「じゃあ・・・私は、失礼します。」

帰るチャンスを逃していたアタシは、そう告げて一礼をした。
謝らないと言っていたテルは、謝ってくれたし。
これ以上、此処にいる理由もないし。
そろそろ帰ろう。














「送るよ。」














背を向けたアタシに、掛かる声。
振り向くと、テルは手招きをしていた。







+一言雑念+
最近、行間を空けるのがマイブームです。(笑)
調子に乗って空けすぎな気もしますが・・・ヽ(;´Д`)ノ
ま、其処は読み手の皆さんの腕に掛かってますから!
作者の表したかった感情を、この行間で読み取って下さい!
其処には、見えなかったテッコ達の表情が隠れてます!
(簡単に言えば、どう表現して良いか分からなかったんだ・・・/失格者)


 ←拍手とコメント宜しく哀愁!
宇野 87 |メイル