CGI 雑念エンタアテインメント
雑念エンタアテインメント
モクジ 雑念

20+安心してよ+TE

車に彼女を乗せたのは、オレ。
一緒に後部席で、彼女と話してるのもオレ。
なんだろう。
さっきまで、こんなじゃなかったんだけど。
酒が回ってきたかな。


「あのぉ・・・大丈夫なんでしょうか・・・・こういうのって。」

話しの合間に、心配そうな声で彼女が聞いてきた。

「そこらへんは、心配しなくて大丈夫、大丈夫。
 いざとなったらタクロウが、どうにかしてくれるから。(笑)」

オレが言うと、タクロウは振り向いた。

「あのねえ、オレは、オマエのケツばっかり拭ってられないのっ。」

迷惑そうな顔。(笑)

「なーに言ってんの。
 そういう役割、けっこう好きなくせに。(笑)」

“うっさい”と言って、また前を向いたタクロウ。
2人のやりとりで少し安心したのか、彼女は笑みを零した。


さっきまで眉間に皺を寄せていた2人。
彼女もオレも皺が、寄りっぱなしだった。
今、皺が寄ってるのは、お抱え運転手だけ。(笑)

彼女を乗せる、と言った時、開口一番に「ダメ」と言われた。
が、其処は、駄々っ子のオレ。
お抱え運転手は、渋々承知してくれた。


車は、彼女の家へ向かう。
幾つかの信号を超えて、何度か赤で止まり。
そのたびに彼女は、窓の外を眺めた。

黒いシートで覆われた窓からは、街が不透明に見える。
ビルに、人に、空に。
薄い幕が掛かったように。


「彼処、長いの?」

外を眺める彼女に問いかけた。

「え?店ですか?」

彼女は、突然、話しかけられたことに少し驚いたようだった。

(だってさ、タクロウは前で喋ってるから、つまんないんだもん)

「んー・・・長いって言っても、まだ3年目です。
 あの中じゃ、まだまだ下っ端ですよ。」

「ふーん・・・彼処に、あんな店があるなんて知らなかったよ。」

「そうなんです。皆さん、そうみたいで。(笑)
 だから、芸能人の方、よく来られますよ。
 彼女と来たり・・・怪しい感じです。(笑)」

「もってこいの店なんだ。(笑)
 今度、オレも行こうかな。」

「其の時は、個室を用意させて頂きます。(笑)
 今度は、失礼なこと言いませんから。(苦笑)」


大丈夫、もう気にしてないから―――


彼女が“此処で止めて下さい”と言って、結局、オレの言葉は遮られてしまった。




車が止まり、彼女は降りて、深々とお辞儀をした。
車が走ると同時に、彼女に手を振った。




「ねえ、タクロウ。」

「ん?」

「彼女の名前、なんだっけ?」

「さすがテッコさん、お目が早い。(笑)」

「違うよ。(笑) 次、行く時も同じ人の方が、いーなーと思ってさ。」

「ふぅん。(含笑)」

意味深な返事は無視して、隣の空いたシートに脚を伸ばした。

道が空いてるのか、街は形を変えて窓を流れた。





大丈夫。
下心なんて、全くないから安心してよ。


 ←拍手とコメント宜しく哀愁!
宇野 87 |メイル