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モクジ 雑念

24+初めて

こないだとは、違う人だった。
一体、何人居るんだろう。
きっと、両手じゃ数え切れないんだろうな。
気分によって相手を変えて。
今日はあの子、明日はこの子、明後日は―――
凄いな。
どんどん、アタシの中でこの人は、遠ざかっていく。

ワインを運びながら、そんなロクでもないことを考えていた。


再び個室に入ると、其処にはさっきと同じように、笑みを浮かべ、
2人にしか届かない声を交わす男女が居た。
ウェイトレスのアタシが入ってきてもお構いなし。
普通は、少しくらい会話って止まるもんじゃない?

ほら、カラオケで1曲目を唄ってる途中に店員さんが、
ドリンクを運んでくると、ちょっと唄いにくかったり、マイク置いちゃったりするじゃん。
そういったことが、この2人にはない。
まるで、アタシは空気みたい。
もしかしたら、空気以下かもしれないけど。

「お待たせ致しました。」

そう言って、ボトルを手に取りコルクを開けた。
ビンとの摩擦で小さくキュキュという音がして、最後にポンッと音を立てた。
注ぎ口からは、芳醇な香りが室内に放たれた。
漸く、其処で2人は此方に目を向けて、会話をやめた。

良かった、空気以下ではないみたい。

独特の音をたてて、ワインはグラスに注がれる。
2人は、注がれるワインをじっと見つめていた。
緊張したアタシの咽に唾を流し込むのが困難なほど、この室内は静けさに包まれている。
こういう時くらい、さっきみたいに喋っててくれればいーのに。
そう思うと、つい眉間に皺が寄ってしまう。

彼女は、グラスに口を付けると「美味しい」と言ってからアタシを見て、
「凄く美味しいワインですね」と血色の良い口唇でそう言った。

その声は、こないだの女性とは程遠いほど、耳に優しかった。

「ありがとうございます。」と返して、少しだけワインの説明をした。
フランスのどこどこで作られたワインで、このくらいの期間寝かせておいて・・・
そう話してる間中、アタシの脳内では、彼女の口紅とワインの色が似てる、と
どうでもいいことが螺旋を描いていた。

その間、テルは、グラスに注がれたワインをずーっと見つめていた。
もしかしたらアタシと同じことを――口紅の色と似てる――考えてるのかもしれない。
そう思うと、また頭の中にしょーもない螺旋が増えた。

「ご注文は、どういたしましょう。」

メニューを1つずつ広げ、2人に差し出した。
すると彼女は、「ごめん、テルくん決めてくれる? お化粧室行ってくるね。」
と言って、小さなバッグを抱えて出て行った。

「本日のオススメは――――」

若鶏のソテ バスク風 ピラフ添えです、と言う前に、テルは突然、
持っていたメニューをテーブルに投げ、椅子に大きく凭れてフーッと息を吐いた。

「なんでも良いよ。江戸川さんが好きな物、持ってきてよ。」

胸元の名札を見て、テルは、初めてアタシの名前を口にした。



+一言雑念+
有言実行フォォーッ!(笑)
なんか、ダラダラと長くてゴメンナサイ。(笑)
書いたら、こんな長くなっちゃった。
いつも、もう少し短いよね。
まあ、長くても短くても中身の濃度は変わりませんが。(笑)
テッコさん、空気抜けちゃいましたね。


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宇野 87 |メイル