雑念エンタアテインメント
モクジ 雑念
「あっ、あの!」
浦原さんの後ろを通った彼女に、一通りのことを話した。 すると彼女は、落胆する様子もなく、笑顔で答えた。
「また帰られちゃったか。」
「また、ですか?」
「そうなの。誘ってくれるのに、いつも途中まで。(笑)」
途中まで、ってことは“そういう関係じゃない”ってこと?
「テルくん、お金払って帰ったでしょ?」
「そうみたいです。きちんと清算されて帰られました。」
「やっぱりね。それもいつもなの。 時々は、私にも奢らせて欲しいわ。」
化粧室から戻った彼女は、綺麗な色の唇で、そう笑った。
「じゃあ・・・私も帰ろうかな。 テルくん居ないんじゃ、つまんないし。 ごめんなさいね、本当に。 今度は、きちんと頂いて帰りますから。」
個室へ戻った彼女は、鞄を持って出てきた。
そして、ボーっと其れを見ていたアタシに手を振って店を出た。
−お金、あの人から返してもらった方が早かったかな−
そう気付いたのは、家に帰って、湯船に浸かってる時だった。
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