CGI 雑念エンタアテインメント
雑念エンタアテインメント
モクジ 雑念

邪気

照くんは、無邪気だよね。


そう言うと此処のリーダーは、「此奴の本性を知らなすぎる」と言って、あたしを見た。
本性って?と照くんに聞くと。
「夜にしか見れないんだな〜、之が。」と怪しい笑みを浮かべて言った。
ああ、もう、そういうことか。

あたしが思うに。
方式まで成り立ってしまうほど、照くんと其れはイコールで繋がっている。
呆れるくらい、この方式は、正しい・・・ようです。
残念ながら、あたしは、その方式にプラスとして加わったことがないんだけど。

ん?

残念ながら、ってどういうことだよ自分。
や、そんなこと聞かれても分かんないよ。
えー、だって、自分のことなら自分が1番知ってるでしょ?
あ、其れもそうだね。
あたしのことは、あたしが1番知ってるわ。

そんな自問自答を繰り返している間、リーダーと照くんは、むふふと
厭らしい目線の交信をしていた。
アンタ達、気持ち悪いよ。
特にリーダー。

「ねえ」

照くんは、コーヒーカップを口に付けようとしたとこで手を止め、此方を見た。
先程の交信の名残か、いまだに口の端が笑ってる。
案外、照くんも気持ち悪いのね。

「照くんの夜って、どんなの?」

知りたいの?そんなにオレの夜が知りたいの?とでも言いたげな目を輝かせた。
照くん、気持ち悪いってば。
思春期の男子じゃないんだから、あなた。
カップをコトンと置いて、隣に座っていた彼は、あたしに正面を向けた。
なのであたしも、正面を向けずには居られなかった。

向かい合わせになって、何をするのかと思えば。

突然、立ち上がって、着ていたジャケットをテーブルに置いた。
其の下に羽織っていた黒のジップアップパーカーも脱ぎ、テーブルに。
どしたの?と眉間に皺を寄せるあたしの声は無視。
更に照くんは、Tシャツを少しまくり上げ、ベルトに手を掛けた。




ちょっとまってよ

りーだーのみてるまえで、なにをするんですか

え?

ナニをするきじゃないでしょうね、照くん

ナニをみせるきじゃないでしょうね、照くん


何がなんだか分からずも、なんとなく、この場の状況を飲み込んでいるあたし。
何故、こういう時に限って冷静なんだろう。
や、まて。
冷静っていうか、状況は飲み込んでるけど対応出来ない、って感じ?
つまりは、何がなんだか分からない、んだけど。

あたふたしてる其処へ、第二の刺客が。
この状況を楽しげに見ていたリーダーも、照くんと同じ行動を取り始めた。




ちょっとまってよ

照くんのはいいけど、りーだーのはちょっとかんべんしてよ

ってか、そこ、きょうみないってば

ちょちょっと、りーだー

それいじょうは、めのどくだってば

あああああああ


照くんのだけならまだしも、リーダーのも見せられちゃ困る。
っていうか、地獄絵図でしょ、そうなると。

本能的に危険を察知したあたしは、上瞼と下瞼が張り付くくらい目を閉じた。
ああ、もう駄目。
この人たち、何を考えてるの。
あ、そうだ、ナニしか考えてないのか。
しかし、リーダーまでも毒保持者だったなんて・・・迂闊だった。

「ジャ〜ンッ!」

や、そんな効果音付けてまで見せるようなもんでも無いでしょ。
・・・・否、寧ろ、効果音が必要なくらいの代物なの?
恐いもの見たさで薄目をあけると、目の前には照くんのお腹が。

「凄くない? オレが、作ったの。」

嗚呼、よかった。
目の前は地獄絵図じゃなくて、銀色に輝くベルトのバックルがあるだけだった。
や、其れよりも先に、綺麗に割れた腹筋に目がいったんだけどさ。

「夜にしかできない・・・・って、之のこと?」
「そそ。 家に帰ってからしか出来ないんだもん。」
「テッコが夜なべして作ったのもらった。」

顔を横に向けると、リーダーのバックルも銀色に輝いていた。
輝いてるのは分かるけど、その形が何なのかは、さっぱり分からない。
照くんのも同様。

「之は、何の形なの? 何をデザインしたの?」
「自分でも分かんない。(笑)最初は、スカルのつもりだったんだけどなあ。」
「え、オレ、リンゴだと思ってた。」
「わー・・・リーダーの美的センス、疑うよね。」
「あ、リンゴでも良いよ。」
「え」
「じゃあ、オレの、リンゴ」

気の良いリーダーを尻目に、照くんはあたしの耳元で「疑うよね」と小さく笑って言った。
あたしは、其れに答えるように、うははと笑いを返した。

「それにしても、おまえ、何すると思ったの?最初。」
そうリーダーに聞かれて、ああ、そうだったと思い出した。
「だって突然、目の前で服は脱ぐし、ベルトに手は掛けるしさー。
 地獄が始まるのかと思ったんだってば、ほんと。」
あははは、と大爆笑。
「テッコと一緒にしないでくれー。」と言って、脱いだジャケットを着始めた。


照くんには、「見たかったら、今夜、おいでよ。凄いの見せてあげるよ。」と誘惑された。
其の目は、誘惑の色、少し濡れた漆黒の黒だった。
照くんと過ごす夜も、こんな漆黒で濡れた夜なのかもしれない。
なんて思ったアタシは、なんて破廉恥なのか。

「たぶん、次の日、動けないよ。」

おいおい。
誰が言ったのよ、照くんって無邪気だよね、なんて。




あ、あたしか。


 ←拍手とコメント宜しく哀愁!
宇野 87 |メイル